金魚鉢5 月光~少女愛撫
「本当、オーアって煩いオバさんだよね」
ミーオがぼやく。彼女は
ここは、遊郭の屋根裏部屋だ。太い柱と
この部屋はミーオの自室だという。金魚鉢でも上位にいるキンギョの部屋とは
「驚いた? 蒼色キンギョの部屋がこんなボロ部屋で――」
はっと、フクスはミーオに向き直っていた。
ミーオの眼が蒼く光っている。その顔は
風が吹く。窓外のブーゲンビリアが
「私、貧しい生まれだからこういった部屋の方が落ち着くの。ここで、あなたのお兄さんの相手もしたの。兄妹だからかな? あなたみたいに、ビックリしてたよ」
影に埋もれるミーアが動く。気配から、彼女が微笑んでいることが
――兄さんは、あなたと寝たの?
当たり前のことを
兄が自分を売った金で、目の前の亜人の少女と関係を持った。フクスは
その震えを止めたくて、自身の体を抱く。フナの見習い期間を卒業すれば、この体は毎日のように男達に弄ばれることになる。
兄がそんなことをするはずがない。だが、兄はまたミーアに会いに来るだろう。そして、女になっていく自分に蔑みの眼差しを送るに違いないのだ。
そこに、父も加わるかも知れない。
「あっ……」
怯えに、声が
家と違い自分はここで必要とされる存在になるだろう。男たちに
「どうしたの。フクス……」
ミーアが近づいてくる。フクスは思わず後退りしていた。
ミーオの手がフクスに伸ばされる。兄の体をなぞったであろう、貝のように煌く爪を持つ手。その手を、フクスは払いのけていた。
「フクス……」
悲しげな声が狐耳に響く。ミーオが眼を歪めフクスを見つめていた。われに返って、フクスはミーオの手を両手で
「ごめん……」
彼女を見ることができず、フクスは顔を
「フクス……」
フクスにミーオが声をかける。それでもフクスは顔をあげない。
「フクスっ」
ミーオが
「フクス」
甘いミーオの声がした。ミーオの微笑が近づいてくる。ふわりと、彼女の猫耳からジャスミンの香りがした。
唇に柔らかなものがあたる。その触が体中に広がって、フクスは眼を見開いていた。
ミーオの唇が、自分の唇に重ねられている。
「大丈夫、怖くないよ」
唇を離し、あやすようにミーオはフクスに
「私たちは、生きるために体を売ってるの。ここで生きて、生き抜くために戦ってるの。だから、怖くない。あなたは、生きるためにここに来たの……」
言い聞かせるように、ミーオはフクスに語りかけていく。ミーオが優しくフクスを抱きしめてくる。体の震えがとまっていく。
「フクス」
ミーオが微笑み、あやすように言葉をかけてくれる。フクスは微笑んでいた。ミーオの体が温かい。その体温を感じていると、気持ちが落ち着く。
ミーオが笑みを深める。瑠璃色の眼が、
「ミーオっ!」
フクスは叫んでいた。
視界が
また、唇に柔らかな感触が広がった。何度も、啄むようにミーオはフクスに口づける。舌で唇を割り、ミーオの
ミーオの舌が、唇から引き抜かれる。
「ミー……オ」
荒い呼気が唇から
「大丈夫、恐くないよ。あなたの初めては、私だから。大丈夫……」
優しい囁きが、体を、意識を
その快楽に
フクスは
月光の中で、少女たちは
体を
その吐息の心地よさに、フクスは溺れていった。
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