10.再構築
10.
"その世界の光を全て見つけたとき、あなたは目覚める事ができる――"
町の街灯やらなんやらを見た程度で目覚める事はできなかった。
だが、他の奴隷共の話によると、数年に一度だけもう一つの太陽が姿を見せる日があるという。
奴隷共はその日を"解放の日"と呼ぶ。
この世界の光。
"全て"。
それはもしかして、2つの太陽なのではないかと、俺は考えた。
それは、このアホみたいに理不尽な世界で諦めずに生きていける唯一の希望。
日に日に磨り減っていく正気を保つために必要な希望だった。
2つ目の太陽を見ることさえ出来れば、目が覚める――
目覚めれば、望む限り永遠の幸福。
……そう、唯一の希望を信じて――"
*****
一面、白い世界。
雪の世界だった。
" オ マ エ ハ "
雪女。
俺があの日、あの時、失った場所にいた、その女。
白い長髪、白い装束、表情を隠す白いフード――
彼女は、俺の耳元で囁く。
" ―――― "
世界を変えるのには、犠牲が必要だ。
望み通りの世界とは、犠牲と引き換えに手に入れる。
彼女は、左足を殺したその手で俺の頬に触れながら、そんな事を言う。
犠牲と、世界。
" お前の望む世界は、自分が明日死なない世界―― "
そうだ。
俺は、こんな所で終われない。
それならば、望んだ世界の代償は。
" お前の犠牲は、今の心の在拠り所―― "
……拍子抜けだった。
今の、心の拠り所、だって?
そんなものはない。
こんなクソみたいな世界に、心の拠り所なんて!
雪女と言っても、結局は頭が足りないのだろう。
存在しないものを犠牲に考えるなんて。
いや、俺は今までだってそうやってきた。
タダ同然で、望んだ世界を歩んできたんだ。
俺は、迷わない。
「よこせ!! 今の心の拠り所を犠牲に、俺の望む世界を――」
今、世界は作られる。
世界は、望み通りに構築される。
俺が望み、俺が犠牲にした。
……世界が、再構築される――
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