第17話 他人の鍋好きを嗤うな
寒い季節がやってきた。
吐く息が白く、とまではいかないが足元からしんしんと冷たい空気が上がってくるのがわかる。
我が家は今季初めて、「自動堕落人間製造機」ことコタツの導入に踏み切った。暖かい。そして、暖かい。こんな物を発明した日本人はまさに悪魔の科学者である。恐ろしい。
さて、冬といえば食事の内容にもグッと変化がおとずれる。やはり暖かいものが無性に食べたくなる。しかもなるべく手間をかけず。後片付けも簡単に。野菜も肉もいっぺんに食べれて、炭水化物ももれなく摂取できる。土鍋に入ってグツグツ煮えている野菜供を眺める風景。つまり鍋だ。冬はこれに尽きる。
よく「鍋は直ぐ飽きてしまうから嫌いだ」という人がいる。勿体無い。と思う。きっといつも渋々鍋をやる時に適当な具材を適当に水炊きにして食べているのだろう。いやそれでも美味いのが鍋なのだが、肝心なのはつけダレである。これは適当ではいけない。
つけダレこそが鍋の真骨頂である。
我が家では色々と日々研究している。
様々な柑橘を買ってきて、どれが一番ポン酢の材料に向いている吟味した事もある。お酢と醤油と昆布出汁。そして柑橘の絞り汁を加える。思ったより金がかかると言う理由で以降は使ってないが私のイチ押しはグレープフルーツのポン酢である。豚シャブに最高だ。
某料理研究家が作った常夜鍋のタレも良い。ネットにレシピが載っているが、オイスターソースとごま油、醤油とゴマと大根おろしだけで出来るから簡単だ。素晴らしく美味い。飽きもこない。
独り暮らしの男性で疲れてて作るのが面倒だという人もいるが、ここは敢えて断言したい。大して美味くない食べ物を食い続けても活力は出ない。疲れているからこそ、美味くて栄養豊富な食事が必要なのだ。美味い事は特に大事だ。
よくあるパターンで味○ンばかり使っていて飽きるというのがある。いや、別に味○ンがいけないというわけではない。むしろ良い。美味いと思う。十分だと思う。しかしさしもの味○ンもひと工夫加えなければ必ず飽きがくる。
ほんのひと工夫で良い。生姜やにんにくを入れるでも良い。ラー油やゴマ油をひとたらしでも良い。それだけで、そこには異世界が展開されるのだ。
鍋は良い。
木枯らし吹き荒れる寒空の下、両手を擦り合わせたりポケットに突っ込んだりする帰り道。口を開けば「う〜」とか「さぶさぶさぶさぶ」とかそんな事ばかり。家の近くのスーパーでいつもの食材を買い込む。
白菜、ネギ、春菊。最近は葉物なんかは高いからキノコが多めでも良いかもしれない。舞茸、えのきにブナシメジ。今日は冒険して、よく知らないキノコを買ってみてもいい。キノコとポン酢の相性は抜群だ。さっぱりジューシー、香り良し。キノコは野菜の代役を補って有り余るほどの味だ。
肉も大切な食材だ。鶏肉は団子にすると美味い。牛肉はすき焼きがベター。何と言っても凡庸性が高いには豚肉である。スーパーの肉も良いだろう。だが欲を言えば商店街にある町のお肉屋さんで買っておきたい。旨味が違う。多少値が張っても仕方ない。幸せに値段はつけられない。ぷりぷりの豚バラをオリジナルのポン酢で味わう。こんな幸せはない。
鍋が食べごろににえるまで、眺めて待つのも醍醐味のひとつだ。BGMはジャズのラジオか、昭和の歌謡曲なんかがちょうど良い。
酒が呑めれば良し。呑めなければ尚のこと良し。主役は鍋なんだから。
食べごろになるまでもう少し待とう。時間はたっぷりある。なにせ、冬の夜は長いのだから。
私は鍋が大好きである。
かしこ
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