第11話 他人の音楽の趣味を嗤うな

私は音楽が好きだ。


本の好みと同じ様に音楽の方もかなり雑食で好きな物はなんでも好きだ。その代わり浅い。


一人のアーティストに対して好きな曲は大体一、二曲。アルバムを買ってもシングルカットの曲ともう一曲聴くか聴かないか。掘り下げて聴くアーティストもいるが、大抵は五、六曲聴いて次にいく。飽きっぽいのだ。それ故、iTunes Storeは非常に私向きな購入手段であり重宝している。気に入ったのだけ買えるのはデカい。


iTunes Storeが出来るまでは大変だった。特に外人はシングルとアルバムを出す順番が日本と逆だったので、一曲の為に2,500円以上のCDを買うなんてざらにあった。しかしだからこそ、ミュージシャンというのは夢のある職業だったのだろう。3,000円くらいのアルバムが飛ぶ様に売れれば、一発屋でも億万長者だった。一曲250円のデジタルシングルでは、たかが知れている。手軽だが、厳しい時代だ。


今のところ生涯を通して聴き続けているアーティストはいないと思う。若い頃、あれだけ傾倒していたギャングスタラッパーの2PACも今ではほとんど聴いていない。


知らない人の方が多いと思うが2PACはとにかく歌詞が良い。アメリカの黒人ラッパー(この表現は好きじゃない)である2PAC。とても繊細で、かつ力強いラップをする。解りやすく言うなら、「センチメンタルなオラオラ系」だ。まさに今の時代にマッチしてる。2PACはギャングスタラッパーになる前は演劇をやっていた。このギャップは凄い。だもんで表現力が凄まじい。是非日本語訳を読みながら曲を聴いて欲しい。


私のオススメは「changes」と「Life gose on」である。特に「changes」は圧巻である。イントロ開始から曲が終わる2秒前まで、恐ろしいくらいのクオリティだ。「カッコいい」とか「泣ける」とかそんなレベルの曲ではない。


純粋に一言。


「美しい」


である。


サビのメロディも後ろの音もサンプリングだがボーカルの歌唱力も鳥肌ものなので、原曲を優に超えている。原曲も名曲には違いないのだが2PACバージョンの方が知名度も売れ行きも遥かに上だろう。


2PACは25歳で凶弾に倒れている。もしも2PACが生きていたらジェイ・Zは売れなかったと言う人もいる。私はそうは思わないが少なくとも、歴史は多かれ少なかれ変わっていただろう。ジェイ・Zはエンターテイナーだし2PACは芸術家なので畑が違うけれど、もしかしたらビヨンセと結婚していたのは2PACかもしれないし、アリシアキーズが歌うサビもニューヨークではなくカルフォルニアだったかも知れない。


真面目な事ばかりだと★も♡もつきにくいのでこの辺で切り上げるが、知らない方は是非一度聴いてもらいたい。


何かに負けそうな夜の帰り道に。


2PACの「changes」


日本語訳を読みながら是非。


かしこ

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