第8話他人の悪あがきを嗤うな
先日、拙作「真約メフィストフェレス」にとあるユーザーの方から批評をいただいた。
というか、私の方から「ぜひ読んでみて下さい」と依頼したのである。その結果、なかなか辛辣なお言葉を頂戴した。それ自体はとても嬉しい事だった。素人の分際で他人様から作品の批評をいただけるなんて光栄な事である。例え自分から依頼したとしても、ありがたい話なのである。かなり的確な批評だったので、私としは自分の作品の客観的に見た弱点が解った気がして本当に嬉しかった。また頑張ろうと思えた。
昔から「何にでも良いねと言ってくれる人よりも、アレコレ難癖をつけてくれる人の言葉に耳を傾けなさい」と母によく言われていた。正にそれである。この批評は私の宝物として、皆様からのお褒めのレビューと一緒に生涯忘れずにいようと心に誓っていた。いつかこの人をギャフンと言わせようと思っていた。
その矢先である。
そのユーザーの方が突如姿を消した。私の作品へのレビューを最後にTwitterからもカクヨムからもいなくなってしまった。直接的な関係があるかどうか不明であるが、なんだか寝覚めの悪い思いをしている。
その方は最後の近況ノートに「皆さんゴメンなさい。さようなら」「こんなところでPVに一喜一憂してても意味がない」「利己的なマーケティングの為に読んでいた」等の長い長い言葉を残して去っていった。
私は、この近況ノートを読んで複雑な気持ちになった。
というか、正直少しムカついた。
アナタは私の作品を一生懸命読んでくれたのではないのか。
「自分の趣味には合わなかったけど応援してますよ。頑張ってください」と言ってくれたのは嘘なのか。応援してくれないのか。
利己的なマーケティングどころか、作品の一つも残っていないじゃないか。
PVや★に一喜一憂するのがそんなにいけないことなのか。
私は思う。もしも小説を書きながら生きていきたいと本当に思っているなら、プロになる事を諦めるのが一番簡単な方法だ。まず別の働き口を見つけて、毎日仕事に精を出すべきだ。そして仕事が終わって家に帰ってきたら、思う存分寝る間も惜しんで小説を書けばいい。それだって小説家だ。
金をもらって小説を書くのだけが小説家か?賞をもらうことだけが小説家か?違うだろ。小説を書き続けていれば小説家なんだよ。生活の一部になってれば立派な小説家だよ。
利己的なマーケティング?結構じゃないか。欺瞞や偽善?オールオッケー何が悪い。そんな事もできないで何が人間だ。人間は皆自分勝手なんだ。そんな事でいちいち弱音なんて吐いてたら生きていけない。
面白い作品が書けなくったって、コンテストの選考に落ちまくったって、ランキングの上位になった事がなくったって、悪あがきして書き続けろよ。投稿し続けろよ。一喜一憂し続けろよ。良いじゃないか。自分が楽しく書けてれば。それでオマケに人から褒めてもらえれば最高じゃないか。それで何かのきっかけに金がもらえたら恐悦至極じゃないか。それで良いじゃないか。とにかく発信し続ければ良いじゃないか。
自分が文学会の宇多田ヒカルだとでも思ったか?それ皆そう思ってるから。それ皆勘違いしてるから。私もそう思ってた。文学会に彗星のごとく現れた期待の大型新人だと思ってた。でもどうやら違うんですよ。現実はね。宇多田ヒカルどころかデビューすらできねえ。でもそれでも小説やエッセイ書くの好きなんだよね。
これが50年前だったら、きっと私の作品は土蔵で眠ったまま人目に触れることなく虫に食われて生涯を終えただろう。今はカクヨムやなろうがある。Twitterがある。おかげで私は毎日幸せだ。例え輝く星になれなくても、★がもらえれば一日幸せなんだよ。
「趣味に合わなかった」と書いたアナタをいつか「メチャおもしれえ!」と言わせる作品を書きたかった。それができないのが残念で仕方ない。本当に残念だ。
できればまたここに帰って来て欲しい。そしていつかアナタの作品を読んでみたい。
それまで私は、精々ここで悪あがきしてみる事にするよ。
だからさ。他人の悪あがきを笑わないでくれ。
かしこ
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