島編!島編!やっぱ島編!

 よぉ……スパ◇ボ「」カクヨム、今日もお疲れ様だな。俺がいない間に、随分攻略が進んだじゃないか。ちゃんとバランスよくユニットとキャラを育ててるか? 気に入ったキャラをガンガン育成して改造、その他には『こいつは強いな、こいつは好きだな』ってのを使っていくといい。それがこの俺、ユート・ライゼス様のスパ◇ボ「」必勝パターンさ。

 で、さ……救助、こないな。

 いや、その……ここ、無人島だよな。

 これがあの有名な島編しまへんか? 統矢トウヤもそういや、ちょっと前に経験したことがあるって言ってたな。はは……対岸の砂浜が見えてる。俺の視力なら海の家『さんだー・ちゃいるど』の看板まで見える。けど……ここは、無人島だ。


「ちょっとちょっとー? どうでもいいけど、戻れるの?」


 エリカか……その、すまん。

 すまん……島編なんだ。

 これはつまり、しばらく無人島で暮らすことになりそうだ。

 そういう流れなんだよ……常識的に考えて。


「なにそれ、ホント? どーするのよぅ! 二人きりなのに水着しか着てないし! せっかくの二人きりなのに、ディナーもベッドもないじゃない」


 あ、ああ……その、なんだ。ゴムボートに乗ろうって言ったのはエリカで、俺は止めたし、しょうがなく漕いだけど。けど、その……俺が悪いの?


「ん? 悪いなんて言ってないけど……ただ、もっとムードがねえ。ムードが」


 わ、わからん……俺はどうしたらいいんだ。多分、こいつはお嬢様育ちだから無人島の怖さをしらないんだ。まず、海に囲まれてても真水まみずがない。人間の身体の90%近くは水分だ。その水分が一割でも失われれば、俺達は死んでしまう。

 次に食料だ。海があるから魚を釣れとか、貝を取れとか言う奴は素人しろうとだな……サバイバルをわかっていない。人間が大自然の中で食事をするためには、ある程度の調理が必要だ。火の確保は勿論、切るための刃物も必要だし、毒物のある生物はある程度俺が見極められるが、海の生物は数が多過ぎる。それを――


「ってか、ユート? ねーねー、ちょっとユートってばさ」


 ぎりぎり肉眼で見える距離に、今まで遊んでいた海岸はある。だが、これは罠だ……離岸流りがんりゅうというのがあって、泳いで戻ろうにも岸から沖へと流れる波にさらわれる可能性が高い。乗ってきたゴムボートは、残念ながら空気が抜けて水没してしまった。それを回収するのが先か? だが、破れていたら補修はどうする? 俺が? けた石をトーチ代わりにして、ビニールを溶かして繋げることは可能だ。だが――


「……えっと、エリカさん? だよね? 彼、どうしたのかな」

「んとね、エディン……なんかユート、悩んでるみたい。おーい、ユートー? たまたま水上スキーで通りかかったエディン・ハライソ君が、一緒に乗せてくれるって」


 考えろ! 考えるんだ、ユート・ライゼス! 俺はともかく、どうやったらエリカを生存させ、無事に帰せる? こいつは温室育ちのド天然、絵に描いたようなお嬢様だ。サバイバルには耐えられない。どうすれば――


「ええと、とりあえずカリバーンを呼ぶ? 姉さんに電話すれば、飛んできてくれるけど。……姉さんがまだ、『さんだー・ちゃいるど』で省吾ショウゴさん達と飲み始めてなければだけど」

「……うわっ、絶望的。じゃあ、水上スキーでいいわ。ユートは……なんか、無人島を満喫したいみたい。このまま置いてこうかな?」

「僕はあとでユートに怒られるのは困るな。君と二人きりの時間はできれば避けたいんだけど」

「なぁに、私が嫌? どうして」

「まさか、ただ……エースパイロットにだってヤキモチや嫉妬はあるんだ。……彼がどうかは、ちょっとわからないけど」


 くっ、どうすればエリカを救える! 俺はこの際二の次だ、どうすれば……あっ、お前! そこのお前! スパ◇ボ「」を攻略するその頭脳で、お前も考えてくれよ! 例えば、そうだな……偶然、水上スキーを楽しんでた観光客が通り過ぎるとか。いや、それはダメだ。希望敵憶測きぼうてきおくそくは遭難者を殺す! どうすれば……悪いな、疲れてるとこ考えさせて。でも、一緒によろしく頼むぜ。な? なぁ?

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