第30話

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「いくらなんでもそれはないです」

 僕は彼女のスマホを引ったくる。

「あら。強請ゆすりネタ、要らないの?」

「アレを町村さんに見せて別れさせたところで、奈月さんと葉多さんの距離が近づくだけですよ。というか、ここまで追いかけて来た時点で、“偶々”じゃないです」

「まあ、確かにね~。でもね、この写真は必要だよ。ノブヤ君にはそこまでは見通せないようだけどね」

 この人は一体何をするつもりなんだ。

「・・・・・・どうしてそこまで奈月さんにこだわるのか、いい加減教えてくれませんか?正直、僕も奈月さんの話を聞く限り、奈月さんに完全に非があるとは言い切れないと――」

「甘い。甘いよノブヤくん」

 大川さんはすっくと立ち上がると、潜んでいた茂みから公園の外へ歩を進める。

「萌実ちゃんや君がどう思ってるかは正直どうでもいい」

 その口調はいつものふざけた大川さんのそれではなかった。

「大事なのは、光希がどう思ってるか、それだけだよ」

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