第20話
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「ん?」
光希の病室に来て彼此10分ほど経った頃、ベッド脇のテーブルの上に定期入れが置いてあることに気付く。
「友達の忘れ物かな……でもなんか見覚えが……」
その定期入れに手を伸ばし、中の定期を出そうとした。
その時、ガタッと、先程の数倍の音を立てて、扉が開かれた。その音に、流石にビクッと身を震えさせ、そちらを見ると。
「萌実……?え、なんで……」
そしてふと、手元の定期入れを見る。見覚えがあるのもそのはず、その中に入った定期を慌てて取り出すと、そこには「ハタメグミ」との記名がある。
そこで全てが繋がる。
「え、まさか、お前が……光希の?」
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「それはこっちのセリフだよ。輝こそ、光希の、彼氏……なの?」
光希が、輝の彼女。輝が、光希の彼氏。どちらも別の理由でショックな事実だった。
でもまず確かめたいのは、輝が、光希の彼氏だという事実。眠らせる原因を作った人物だという事実。
「私……光希の当時の彼氏が原因で光希が眠った、って、聞いてるんだけど……」
「……」輝は何も答えない。
「黙らないでよ!」
この沈黙を私は肯定にしか取れなかった。次の瞬間、私は輝が手に持っている定期入れをひったくると、それを持って走り出していた。
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萌実が走り出すのを見送るが、それを追うことは俺にはできなかった。
俺が光希の彼氏だったという事実を知らなかっただけで、間接的に俺が光希を眠らせたということを、萌実は知っていた。
――倉地の仕業か?奴ならやりかねない。光希の”友達”が萌実なら、彼氏が、とぼやかして、萌実に伝えていた可能性は大いにある。
しかしそこまで考えて、倉地を恨むのはお門違いだと考え直す。結局悪いのは、俺だ。言い訳のしようもない。
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