第14話

「それでね、あの天の川の上側のが、アルタイル……彦星で、下側のが、ベガ、織姫。それで、天の川の中で特に光って見えるあれが、デネブ。この3つを合わせて、夏の大三角」

 光希は説明を続ける。少しずつ声のトーンが高くなっている気がした。

「へー……なんか授業で聞いたくらいで、あんまり覚えてな……」

「もったいない!とっても面白いんだよ!例えばアルタイルはわし座の一等星なんだけど、この鷲はゼウスの使いだとかゼウスが変身した鷲だっていう話があってね……」

 これがあのクールで大人びた光希と同一人物なのか怪しく思えるくらい、光希は熱く語りだす。しばらく星座とその神話について語った後、ハッと気づき、シュンと落ち込んだような様子を見せた。

「ごめんなさい……興味ないよね、こんなの……っていうか、急にこんなに一人で語り出して、引くよね……」

 光希はあからさまに落ち込んで見せた。

「う、うん……確かにちょっと話にはついていけなかったけど……陽炎さん、星座、っていうか、星、好きなの?」

 我ながら、当時の私はあまりに素直すぎた気はしている。一層落ち込んだ様子を見せ、また同時に再び恥ずかしそうな顔をして、

「えっと、もともと星を見るのが好きで、色々調べてる内に神話とか、そういうのが好きになって……」

 仲の良い友達ができるとついそれらについて熱く語ってしまい、ドン引きされて疎遠に。その上に極度の人見知りが祟って、友達らしい友達を作れずにいたらしい。

「んー、よく分かんないけど……」その時の私は、素直すぎるがゆえに、思ったことを口にしていた。素直すぎるのも悪いことばかりではない。

「それだけ何か好きになれるって、凄いと思うな……私も好きなタレントとか、アイドルとかいるけど、陽炎さんほど熱中はしてないし……それに」

 私は一呼吸置く。その空白に光希はこちらに顔を向けた。

「星のこと話してる陽炎さん、すっごく可愛かった!」

「へ……」

 その言葉の理解にしばらく時間が必要だったのか、しばらくぼーっとした後、言葉を理解したように顔を真っ赤にし、

「え、あー……えーと」だいぶ言葉を濁した後、

「あ、ありがとう……そんなこと、初めて言われた……」


 それからというもの、私と光希は学校の内外を問わずよく遊ぶようになり、いつからかお互いを下の名前で呼ぶようになった。

 光希の人見知りは治らなかったけれど、そんな中彼女が自分に対して心を開いてくれていることに、優越感……というと少し違うが、何か特別感のようなものを感じていた。

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