第5章 未来
第13話
彼女――
私の中学は私や輝が通っていた小学校と、隣の小学校が合わさるような人数構成で、光希は隣の小学校出身。私は小学校の頃から仲が良かった子と同じクラスになったことも幸いして、割とすぐに隣の小学校出身の友達もできたが、いわく、『小学校の頃からよく分かんない』子だったらしい。
そんな彼女のイメージが180度変わったのは、1年生の夏休みに行われる2泊3日の宿泊学習だった。1日目の夜、同じ班になった私と光希は、一緒に天体観測をすることになった。しかし、私を含めた同級生たちは綺麗とこそ思うものの星について知識も無ければ興味も薄く、ロクに星を見ることもせずに同じ班の子達と無駄話を始めていた。そんな中、光希だけが、一人空を眺めていた……しかも、芝生に寝転んで。仲の良い子と班が離れて、同じ班の他のメンバーにうまくなじめなかった私は、思い切って光希に声をかけた。
「陽炎……さん?どうして寝転がってるの?眠いならテントに戻った方が……」
彼女は驚いた様子で、ガバッと起き上がると、ごめんなさいとなぜか謝り、続けた。
「眠い訳じゃなくて……この方が、綺麗なんだよ」
そういう彼女の表情は、いつもの大人びたクールなものとは違い、少し明るく、少し恥ずかしがっているようにも見えた。私はその横で、彼女がしていたように寝転がり、夜空を見上げる。
「えと……葉多さん?」
突然の私の行動にまた驚いたように、光希は私に何か尋ねたが、私は彼女の今まで見ていた景色に圧倒されていた。
「うわーーー!」
寝転がって見上げると、空を横断する天の川が、私のそれまでの知識を圧倒的に超えた美しさでそこにあった。それを見た私は、半身起こし、彼女の手を掴んで半ば引きずり倒すような形でまた寝転がる。
「ねえ、なんでこんなに綺麗なの!それに、どうして誰も気づかないんだろう……」
すると、光希は特に考えるような時間も要さず、すぐに返す。
「今の時期、天の川はほとんど真上に見えるんだよ。しかも、街灯りが無くて、くっきり見えるから、すごく綺麗に見える。でも、ここって少し高いところにあるし、わざわざ見上げなくてもそれなりに星が見えちゃうから、それで満足して、すぐ飽きちゃうんだろう、ね。皆首を痛くしたり私みたいに寝転んだりしてまで星を見ようって気はないんだと思う」
それを言われると確かに私もそうだ。光希が寝転んでいるのを見るまで、寝転んで真上を見上げるなんて発想は少しも無かった。
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