第6話
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「え……」
思わず僕は絶句していた。
「それ……本当ですか……?」
耳より情報というから耳を貸したのに、今では耳を疑う事態となっている。それほど衝撃的だった。無理もない。
人ひとりの命に関わる問題なのだから。
大川さんは何も言わずにいる。
「でも……この話が真実だったとして、どうして耳より情報なんですか?……僕にも葉多さんにも、直接は関係ない、ですよね?」
「そうだったらいいんだけど、ね……」
####
木曜日、つまり灰屋君に揺さぶられた翌日。いつもなら輝の隣に狙って座る授業をサボった。他の授業はいつも通り出て、ピンポイントで3限のみ。熱が出て休んだのを除けばたぶん大学に入ってから初めての自主休講というやつだ。
灰屋君の言葉に、自分でも驚くほど動揺している。輝と面と向かって何を話していいか分からない。
一方でこんな状態も不本意だ。
こんな様子では、灰屋君に図星だったように映ってしまうのには気付いているけれど。
確かに小学校時代、私は輝の事が好きだった、かもしれない。でもだからって6年も想い続けていた記憶はないし、少なくとも私にはそんな自覚はない。
私は、定期入れから肌身離さず持っている写真を取り出す。そこには、私と、もう一人。中学からの私の大親友が写っていた。
「ねえ、ミツキはこんなときどうしたの?」
****
「どうしたんだよ、そんなムスッとして」
篤人がむくれているのを見兼ねた俺は問いかける。
「ん?別にムスッとしてるつもりはないんだけど」
そういう篤人の声は明らかに不機嫌そうだ。
「んー、不機嫌ってか、つまんないなーって。この俺がアプローチミスったなー、と思って」
つまらない?アプローチ?
「……何のこと言ってる?」
「いや、何のこと言ってるも何も、今日ほど葉多ちゃんが輝に絡んで来なかったことある?」
「うん、割と」
条件反射的にそう返答してしまうが、篤人も俺がそう答えるであろうことを見越してか、まったく意に介さない様子で続ける。
「いいや、俺の知る限り、ていうか輝がちゃんと学校来てる木曜に関しては無いね。三限だって休んだの初めてだし。」
「アイツ結構気まぐれだしな」
俺は本気で言っているつもりだが、篤人はまったく納得していない。このままではいつもの押し問答になる。とはいえ、
「それはそうと、なんでまた篤人が萌実にアプローチを?」などと、気になったことを口にする。やっぱり篤人は萌実の事を……。でなければここまで気に掛ける理由もないはずだ。
「昨日も言ったけど俺は別に葉多ちゃんの事狙ってないからね~。俺が気に掛けてるのはむしろ輝、お前のことな」
思考を読まれた。というか、それ以上に。
「どういう意味だよ。てか、気色悪い」
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