この小説は、私にとって理想の物語のひとつになりました。
物語を読み進めながら、正直に言って、何度も驚きました。
天ヶ瀬唯は、私が「そうありたい」と希求してやまない真摯さを、美しいほどの真摯さを、ずっとずっと追い求めているひとでした。
これほどにも、「これが私の求めていたものなんだ」と思えるものに出会ったことは、ありませんでした。
その、私にとっての限りなく理想に近い在り様にどうしようもなく惹かれて、「このひとの言葉をもっと聴いていたい」、「このひとが考えていることをもっと知りたい」と、そう思いながら読み続けていました。
天ヶ瀬唯というキャラクターに対して私が抱く想いは、「こんなひとでありたい」と同時に、「どうかこんなひとがいてほしかった」というものです。
ここまでそう強く思わされる、魅力的な――あるいは彼女の想う「死」のことを思えば、蠱惑的とも言える――キャラクターの在り様は、そう単純に作り上げられるものではないと思います。
死というものについて、死んだことのない人間が、死から向けられた視線を想い、それに寄り添おうという、真摯さ、そうまさに、作中で言及される通り、真摯に、死を想うことによって、肉付けされてきたものではないかと思います。
私は、天ヶ瀬唯に出逢うことができてよかったと、本当によかったと、心の底から思います。
どうか、皆さんにも、天ヶ瀬唯が死を想い、人の可能性を想う姿を、見てほしいと思います。
読んでみてください。