第5話 新たなる鎧武者

 

 その頃、地獄の頭鬼虎は、送り出した五人はすべて倒され、一人は裏切り、激怒し怒り心頭であった。


「おのれー鬼鷹、裏切りおって、八つ裂きにしても飽き足らないぞ。

 しかし、どうして鬼龍を倒せないのだ? このままでは、我々の存続どころか命がないぞ!」

鬼虎はどうしたものかと考えた。

『…………』

 その時、地獄の帝王Zが現れた。

「鬼虎! 何を手こずっているのだ。わしをいつまで待たすのだ! 次も失敗すると地獄の苦しみが待っている事を忘れるな!」

 地獄の帝王Zは、怒り心頭であった。

「帝王Z様、鬼鷹の裏切りで、殺しそこないましたが、次は必ず仕留めますからお許し下され……」

 鬼虎は必死で許しをこうた。

「よし解った。その方を信じよう。だが、これで最後だ。さあ、行け!」


『まったく、言い訳ばかりしおって、このままでは、わしは一生涯地獄の番人で終わるではないか。やはり、盗人風情を向かわせたのは間違いだったか?……まあいい所詮、おまえ達は繋ぎだからな。ふっふっふっふっ』

 帝王Zは悔やみながらも、笑みを浮かべ地獄の館へと消えていった。


 そして、鬼龍を倒さなければ自分達の存続の危機と考え、鬼虎、鬼熊、鬼虎の情婦鬼狐で、最後の戦いを挑むことを決めたのであった。


「鬼熊、鬼狐よ、どうやれば鬼龍を倒せるのだ?……とりあえず鬼龍とゆきの行動を監視し、弱点を探るのだ。鬼狐お前が適役だ。頼むぞ!」

 鬼狐は悟られないように監視をしていたが、目立った行動はなく弱点は見つからなかった。

『やはり、あの手しかないか? ふっふっふっふっふっふっ……』


 鬼龍と鬼鷹は当然、最強の敵が近々現れるのではと、覚悟をしながらも、日々陰よりゆきの守りをしていた。


 そしてついに、最強の敵、鬼虎、鬼熊、鬼狐達三人が鬼龍と鬼鷹の前に現れるのであった。

『キィン・キィン・キィン!………・・・ピカッ! ピカッ! ピカッ! バァーン!………・・・』

 目映い閃光と衝撃音と共に、最強の地獄の使者三人は、憎っくき鬼龍と鬼鷹を倒す為、21世紀に出現した。


「ここが後の世か? さて、どう料理するかだな?」

 しかし、卑怯にもゆきを人質として、有利に戦う作戦をとっていた。

『我ながらいい考えを思いついたぞ。まったく、ふっふっふっふっふっ……』


 その卑怯極まる作戦を行う為、地獄の使者達は、ゆきの元に突然現れ、ゆきは囚われの身になるのであった。

「おまえがゆきか? 意外と栄養満点な奴め。さあ、俺達と来るのだ。大事な人質だからな」

「えっ、誰っ!」

 そして、いきなり当て身をし、気を失わせた。

「うっ!……」

 だが、鬼熊はゆきに目をつけていた。

「お頭、この娘意外と美味そうだ。ふっふっふっふ」

「大事な人質だ。やめておけ」

「じょ、冗談だよ」

「鬼狐、この人質はおまえに任せる。鬼熊に食われないとも限らないからな。はっはっはっはっ」

「解ったわ。任せて」

 助けの声も出せなかったゆきは、縄できつく縛られ、人質となり連れ去られ、鬼龍と鬼鷹にばれないように隠された。

 三人の地獄の使者達は、ゆきを人質に取ったという事で、絶対鬼龍と鬼鷹を倒すと意気込んだ。

 そして、鬼龍との最後の戦いに備え、剣を引き抜き待ち構えた。


「龍助けて!」

 ゆきは気がつき、龍と静かに口に出した。

『……? ゆきが危ないっ!』

 すると、ゆきの危険を察知した鬼龍と鬼鷹は即、最強である敵の前に出現した。

「現れたな鬼龍、鬼鷹!」

 そして、二人とも目映い閃光を放ちながら、鎧兜姿の鎧武者、戦士シャドウマンに即、変身した。

『キイン・キイン・キィン!………・・・ピカッ! ピカッ!』

「ゆきは何処だ?」

 最後の地獄の使者達は、ゆきを隠し玉というか、人質に取っていた為、笑みを浮かべて言いはなった。

「飛んで火にいる夏の虫とはお前達の事だ!」

 そして、不利ともいえる3対2の戦いが始まった。

 鬼鷹は鬼狐と戦い、鬼龍は鬼虎と鬼熊と対戦した。女同士はほぼ互角の戦いをしていたが、鬼虎と鬼熊はさすがに最強な強さで、運が良くて相打ち的な戦いでもあった。

 その為、鬼龍は2対1の戦いで苦戦を虐げられていた。

『カキン! カキン! カキン!』

『さすがに、鬼熊と鬼虎は強いぞ。しかし、負ける訳にはいかない……』


 しかし、鬼狐と戦っていた鬼鷹も予期せぬ妖術で、前に二人、後ろに一人の鬼狐が出現し、鬼鷹も苦戦な戦いとなっていた。

「鬼狐が、こんな妖術が使えるなんて? 小癪な……」

 その時、鬼鷹も苦戦の時のみ現れる、特殊能力の炎が体中に出始めた。

『ボワ~ボワ~ボワ~ッ………・・・』

「えっ、なにっ? 私にこんな力が潜んでいたなんて……」

 それは、鬼鷹も知らなかった力だった。

 その時、三人に増えた鬼狐の剣が鬼鷹を襲った。

「さあ、死ね! やー」

「うわっ、しまった! どれが本物の鬼狐だー」


 しかしその時、目の前に目映い閃光が発すると、その衝撃音と共に、銀色の鎧兜をまとった戦士が、突然出現したのであった。

『キィン・キィン・キィン!………・・・ピカッ! シュバッ!………・・・』

「鬼鷹よ、本物の敵は後ろだ! 前の二人はまやかしだ!」

新たに現れた戦士は叫んだ。

「えっ、誰?」

 鬼鷹は即、振り返り、体中に漲った炎の火を後ろにいた鬼狐に放った。

「やーっ!」

『ボォ~ボォ~ボォー!………・・・』

「うわ―!」

 すると、その力で鬼狐の妖術は消え去った。

「こん畜生! 仕方がない、ひとまず退くか……」

 鬼狐は悔しがり、鬼虎の元に退いた。


 鬼虎、鬼熊と戦っていた鬼龍も依然、苦戦は続いていた。

『カキン! カキン! カキン!』

 その時、その新たな銀色の戦士は、その戦いに割り込んだ。


「えっ、味方か?」

「鬼龍よ、よくここまで戦った。助太刀いたす!」

『カキィン!』

 銀色の戦士は、そう言った瞬間、敵の鬼熊の剣を払い落し、胸板に剣を突き刺した。

『ザクッ!』

 地獄の使者鬼熊は、予想外の敵にいきなり襲われた為、防ぎきれず、その銀色の戦士に敗れその場に倒れた。

「くそっ、誰だおまえは?………・・・」

 鬼熊は悔しそうに倒れ、消滅していった。

『キィン!…・・・ピカッ! シュバッ!』


「あなたは誰なんですか?」

 鬼龍は味方と思われる、銀色の戦士に尋ねた。

「俺だよ……地獄でおまえを助け、影の守り人としてこの世界に送った者だよ。Ⅹと名乗ったはずだが」

 新たに現れた戦士は答えた。

「もしかして、あの時の老人Ⅹか? ひどいじゃないですか、よくも、俺から歳を奪ったな!」

 鬼龍は怒って言い返した。

「すまない、俺がここに来るにはおまえの若さと体力が必要だから、お前の若さを一時的に借りただけなのだよ……心配するな、けりが付けばちゃんと戻すから、安心して使命を全うしろ!」

 新たなる銀色の戦士は、笑みを浮かべ答えた。


 後、残った敵は鬼虎と鬼狐だったが、ついに最後の手段に出てきた。

 ひそかに隠していたゆきを連れ出し、剣をゆきに突き付け、武器を捨てろと、にやにや笑いながら鬼龍達戦士に言った。

「さあ、早く剣を捨てな! ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ!」

 鬼狐も奇怪な笑いで催促した。

「さあ剣を捨て、お頭に跪くのだ」

 三人の戦士達は、その予想外の卑劣な手段で戸惑った。

『まさか、ゆきを人質に取っていたとは誠、汚い奴らだ。だが、ゆき自身がこの窮地を必ず救い脱するはずだ……』

 銀色の戦士は何か予感を感じていた。


『ふっふっふっふっ! 作戦通りだ……』

 鬼虎もにやっと笑い、これで勝てると思った。


「ゆき大丈夫か! 怪我はないか?」

「だ、大丈夫ですが、ただ縄がきつく痛いです」

「そ、そうか、いましばらくの辛抱だ」

 ゆきは鬼龍にそう答えたが、少し震えていた。


「さあ、剣を捨て、わしの前で跪き平伏すのだ。さあ、どうする、どうする? 地獄に連れ帰り命だけは助けてやるぞ。まあ、地獄の帝王Z様の容赦ない拷問と、釜茹で地獄が待っているけどな。はっはっはっはっ!」

 鬼虎も剣を捨て跪けと促した。

「やはり、ゆきは囚われていたか……」

 鬼龍達は躊躇したが、仕方なく武器を捨てる手立てしかなく、盾と剣を下に落とした。

「くそっ! 卑怯な真似を……」

『カチャン、カチャン、ガチャン』

 それを見とどけた鬼虎と鬼狐が覚悟しろよと、戦士達シャドゥマンに剣を振りかざして向かって来た。

「死ね、裏切り者!………・・・」


『キィン・キィン・キィン!………・・・ピカッ!』

しかし突然、後方に目映い閃光が発すると、縛られていたはずのゆきが宙に浮き始め、変身しだしたのであった。

「えっ、なに? 縄が緩くなったわ」

 同時に体はスリムになり、きつく縛られていた縄は緩みほどけた。

 すると、路面はその光で凍結し、空気中の大気も急激に冷やされ、太陽の光でキラキラと輝く細氷となり、まさに、周りはダイヤモンドダストの舞う美しい光景となった。

 それは、鬼鷹同様、ゆきにも備わっていた特殊能力だった。

「えっ! なんだ?……寒い!」

『ツルッ! あっ、しまった!』

 びっくりしてすきを見せた二人の敵に、鬼龍と戦士達はすかさず剣を拾い、油断した敵の鬼狐と鬼虎に対し、鬼鷹は手裏剣を放ち、鬼龍も瞬時に剣を振り下ろした。

『ザクッ! ザクッ!…………』

 結果、最後の地獄の使者鬼虎と鬼狐は、その剣により、よたよたと数歩歩きながら、その場に倒れたのであった。

「こ、こんなはずではー………・・・」

「己、鬼龍! おまえは俺達の仲間じゃなかったのかー………・・・」

 そう言いながら、二人はその場に倒れ消滅していった。

『キィン!…・・・ピカッ! シュバッ! シュバッ!』


 そしてその時、ゆきは白の鎧兜をまとい、戦士シャドゥマン、いや、二人目のレディXとして、変身していたのであった。

「凄いわ! 私もみなさんと同じように変身したようだわ? 少しスリムになって少し若くなった感じが……」

『これならダイエットしなくてもいいかも? ふふふっ。でも、なぜ私が?……』

 ゆきは極端な体の変化で、一瞬そう思った。

 しかし、ゆきも訳が解からないと言いながらも、三人の戦士達は悟った。

『ま、まるで雪の女王、いや姫様だ。救世主とはこういう事だったのか?……』

 ゆきも我々と同じ四人目の影の戦士、レディXで、影の守り人だと知ったという事であった。

「やはり、ゆき自身も窮地に陥れば、最大限の力を発揮することが、これで証明されたということだな。はっはっはっはっ……」

 銀色の戦士の予感は見事、的中したという事だった。

「でも、このキラキラした輝く光景は、なんとも綺麗じゃない」

 鬼鷹もその光景に酔いしれた。

「ゆき、ちょっとスリムになって可愛くなったというか、綺麗になったね。でも、私には勝てないわよ。ねえ、鬼龍?」

「そ、そうかなー?……」

「えっ、なんですって!」

 鬼鷹は期待外れの言葉で、むっとなった。


「鬼龍済まなかったな……借りていた物は今すぐ返すぞ。受け取れっ!」

 銀色の戦士はそう言って、手の中で目映い光の珠を作ると、鬼龍目掛けて放った。

『キィン・キィン・キィン・キィン・キィン!………・・・ピカッ! バァーン!』

「うわーっ! またか!」

 すると、銀色の戦士は次第に老人Ⅹへと戻り、鬼龍は逆に若さを取り戻していった。

「やったー、元に戻ったぞ!」

 鬼龍は若さを取り戻したが、怖そうな顔は元のままだった。

『……以前より少し若くなった感じがするぞ』

 

          *         *         *


 その頃、地獄の帝王Zは怒り、悔しがっていたが、笑みを浮かべながら言った。

《くそっ、Ⅹめ! これで終わったと思うな! いくらでも代わりはいる。これからが本当の戦いが始まるのだからなあ…………》


 地獄からの薄気味悪い、妖気漂う声が、何処からともなく聞こえた。

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