世界の文化についていろいろ思うこと

子黒蓮

ボージャック・ホースマンを見ている。

ボージャック・ホースマンは、netflixでやっているアメリカのアニメーションだ。

現在シーズン3までが公開されていて、私は昨年公開になったシーズン2から見ており、今年の7月にシーズン3が公開になったばかりである。

ラファエル・ボブ=ワクスバーグというコメディアンを中心にプロジェクトチームが作られており、役者もアニメーターもプロデューサーもみんなで作り上げているというスタイルのアニメという風に私は捉えたが間違っているのかもしれない。

とにかくこのアニメーションが素晴らしい。


まず言える事は間がいい。リズムがいい。このシーン、このカットはこのタイミングがベストというベストのリズムをいつも持っている。それはとてもお洒落なリズムである。

例えばそれは美しいジャズのリズムと似ているかもしれない。テンポよく刻まれたリズムがあるとき半拍ずらされる。その小気味よさがこの作品の強烈に痺れるところだ。その間があり得ないほどうまい。オフビートとでもいうのだろうか。最近はオフビートな笑いという言い方をよく耳にしたり眼にしたりするが、これはそのオフビートが物語全体にちりばめられていて、その空白の一発が急所をうまく突いてくる。だから感動せずにはいられなくなる。


次にものすごく綿密に物語が練られている。それはつまり演出とシナリオという部分でガッチガチに固まったものだ。蟻の這い出る隙間もない位のシナリオの細やかさだと思う。

ネタバレにならないように言うのが難しいが、あるときにどうでもいいようなギャグのシーンが入っていたとして、それがずっと後になってものすごい不幸を引き起こしたりものすごい幸福をもたらしたりする。

だから片時も見逃したりしてはいけないし、ながらで見ているのもだめだ。

真剣に画面と向き合って自分の神経を注がなければ、まったく見えてこない。

しかし、それで疲れてしまうかといえば大半が面白おかしな馬鹿話なので疲れてしまうことはない。


音楽使いも素晴らしい。これは前記した間の話とシナリオ、演出という話とも絡んでくることだが、挿入歌として使われる曲は大概この演出とシナリオに必要不可欠である。

ここでこの曲を鳴らす意味。ここからこの曲が始まってやがてエンディングに変わってゆくその間、テンポ。演出としてあまりに美しすぎる。

オープニングの曲も本当にいい曲だ。一人のアメリカに住む中年の物語が始まるという意味で、例えばペリー・メイスンのテーマなどを想起させられてとてもよかった。エンディングの寂しさもなんとも形容しがたい。


そしてなんといってもそれぞれのキャラクターがよい。

子供の頃の記憶から心に深いトラウマを抱えている主人公ボージャック・ホースマンとその周りにいるそれぞれ何かしらの事情のある脇役たち。全てのキャラクターがちぐはぐに絡みあっているからこそ喜びも悲しみもこの物語の中に生まれさせている。


このアニメを全ての世の中の悪役の人たちにあげたい。

この大人は悪い人だと世の中に後ろ指さされているひとたちにあげたい。

みんな理解してくれると私は信じている。

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世界の文化についていろいろ思うこと 子黒蓮 @negro_len

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