第13話 真の強さって何?
「ねぇ、君は何者?」
なんだ?何か声が聞こえる。
「ねぇねぇ、君は何者?」
誰だよお前。
「え?誰だと思う?」
俺はそういうの一番嫌いなんだよ。早く答えろ。
「いいよ。僕はリヴァイア。まあ、水の精霊王をやってるんだ!君にはちょっと興味があるから僕の化身、ウンディーネをあげるよ。大事に使ってあげてね!」
そう言ってリヴァイアは姿を消した。俺はウィルオウィスプと契約しているからどんな傷でも治る。俺の夢の中には女性が立っていた。
「初めまして、私はウンディーネ。今日から私が勤めさせていただきます」
その女性は頭を下げた。
「ああ。よろしく。早速だけど、力を貸してくれるか?」
「もちろんです。主様」
俺を立った。すると、ケイルがナイフを向けられていて俺はとっさにその男を蹴り飛ばした。ちょっと飛ばすつもりが結構飛んで行ってしまった。
「ノエル!何で傷が治っているの!?」
「説明は後だ。ウンディーネ、準備はいいか?」
「はい」
俺は詠唱を始めた。
「我と契約を結びし水の精霊王の化身よ。汝、我と一つに成りてその力を表したまえ!”無限水月《インフィニット・クレイアム》”!」
「ノエル、その格好は」
俺の体は光り、姿が変わっていた。ケイルはとても驚いていた。そして、俺はクソ野郎にもう一発魔法を放った。見事クソ野郎に命中してクソ野郎は飛んで行った。
俺は元の姿に戻った。
「ノエル!さっきのは何!?どうして傷が治ってるの!?」
言えない。俺が今日2匹の精霊と契約したなんて口が裂けても言えない。
「そ、それは、薬で治したんだ。この前いい薬が入ってな。知り合いからもらったんだ。いやー、あれが無かったら死んでいたな。でも、もうないからまた買いに行かなきゃな」
「そっか。なら良かった」
ケイルはあっさり納得してくれたみたいだった。そして、俺達は孤児院に帰った。そこにはアンジュとティッタがいた。2人は俺達を見てホッとしたようだった。
そして、次の日俺達は参加申し込みをしに冒険者ギルドに向かった。流石にこの国の祭りなのでたくさんの応募者がいた。
「お、ケイル。今年も参加するのか?」
「うん!今年も参加するんだ」
「でも、この前来なかったか?」
「私じゃなくて、この子の受付しにきたんだ」
そういって、俺を前に出した。
「へー。強そうには見えないけど」
「そんな事ないよ!そう見えても、ビブリア学院序列1位なんだから」
おい、こう見えてもって何だよ?
「あ、あの、学院序列1位だったアンジュ・ウルザインを倒しったっていう・・・」
「そう、ノエル・ファーレンガルトだよ!」
すると、ガヤガヤと騒ぎ始めた。
「じゃ、申し込みしよっか」
「ああ」
俺はケイルの言うままに申し込みをした。
「この世界には精霊の力が働いており、炎、水、風、氷、土、光、闇。それぞれには精霊王がいて、その精霊王と直接契約を結べる者は数千人万人に一人と言われています。そして、精霊王と契約をした証として精霊王の化身を渡します。水はウンディーネ、炎はフェニックス、風はジン、土はベヒモス、氷はフェンリル、光はウィルオウィスプ、闇はシェイドとなっています。精霊王の名前は、水はリヴァイア、炎はイフリート、風はシルフ、土はグノーム、氷はニザード、光はナージャ、闇はタナトスとなっています。ノエル君、前に出てあなたの契約精霊を出しなさい」
エルビア先生は俺がうとうとしていると気付いたようで俺に指名が下った。
「はい」
俺は席を立ち黒板の前に立った。そして、フェンリルを出した。もちろん、無詠唱で。すると、皆は「おおー!」と関心したり「まじかよ!」と驚いていた。
実は、あと2体と契約していて全て精霊王の化身なんて言えない。どうせ言っても皆パニックになるだけだ。
「これが俺の契約精霊、フェンリルだ。こいつ、いたずらっ子だから気をつけてほしい」
「酷っ!僕はそんな事しないし!」
「どうだかな」
クラスの皆はフェンリルが喋ったのを見て驚いていた。
そして、授業が終わり俺は席に着いた。フェンリルをしまうのは面倒だったからそのままにした。
「ノエル君、フェンリル様を触ってもいいかな?」
「別にいいぞ。何なら自分の席に持っていっていい」
「ありがとう!」
「え!?ちょっと!」
フェンリルをさっさと連れていった。
なんだか最近俺を見てくる女子が増えたような気がする。まあ、昨日のケイル誘拐事件が原因だろう。いい迷惑だ。俺はただ平穏に過ごしたいだけなのにこれじゃ、ゆっくりと寝ることも出来ない。俺はフェンリルを連れて屋上に移動した。それにしても、昨日の変身は一体なんだったんだ?
「それは私がお話しします」
話しかけてきたのはウンディーネだった。
「あれは
「でも、この技は誰にでもできる訳じゃない。あんたにしか出来ない技なんだよ。まあ、相当強くないと出来ないんだけど」
ウンディーネが話した途端俺の精霊が一斉に出て来た。
「ところで、主は何者なの?精霊王と契約をするなんて只者じゃないよ」
「確かに。普通の人間なら1体出来るか出来ないかですもんね。普通に考えると、主様は人間ではないということですが・・・」
3匹は俺をジッと見て来た。
「いやいや、俺は人間だぞ。それに、人間しかお前らと契約できないんだろ?」
「まあ、確かにそうだね」
そう言ったとき、予鈴の鐘が鳴った。
「取り敢えず、俺は教室に戻るから話はまた後でな」
俺は屋上を出て教室に向かった。
「ノエル!」
声をかけて来たのはケイルだった。
「どうした?」
「今日、ビブリアフェスティバルの実行委員は会議室に集まるようにだって。それでさ、一緒に行かないかな?」
「別にいいぞ。どうせ俺もお前と行こうと思ってたからな」
「本当!?じゃあ、選択科が終わったら一緒に行こうね」
そう言ってケイルは走って行った。
「えっと、今日は模擬戦をしようか。トト、ちょっと出て来てくれるか?」
トトは少し戸惑ったように前に出て来た。
「じゃあ、構えてくれるか?」
「は、はい」
俺は集中した。そして、足に力を込めて走り出し思いっきり刀を振った。もちろん、寸止めだ。
トトは目を瞑っていた。
「トト、俺の動き見えていたか?」
「え?はい、僕に近づいて剣を振るうまでは見えていました」
Sクラスの皆は驚いていた。何故なら、俺の動きは皆見えていなかったからだ。
「あの、何でギリギリラインの僕を学院トップのノエル君が指名したか分からないんですけど」
「それはお前が俺を見えているってだけで十分分かる。トトは俺の動きが見えていたんだよな?それはお前の目がとてもいいってことだ」
「僕は目が悪いですよ?」
「そうじゃなくて、お前はどんなに速くても人の動きが見えるんだ。でも、そのスピードに体がついて行かないから負けてしまう」
「そんな物僕にはないですよ。ノエル君の動きだってちゃんと見ていたから見えただけで」
俺はトトに相打ちをかけた。
「そう、お前は怖かって目を瞑ってしまうから大事なものが見えないんだ。だからその癖を直した方がいい。お前は強くなりたいのか?」
俺が質問をすると、トトは「はい」と言った。
「なら、その癖は本当に直した方がいい。これからは俺ぐらいの人間はゴロゴロいる。でも、お前は素質があるから努力すれば出来る」
そういうと、トトは俯いた。
「でも、僕はノエル君みたいに素質なんかないし」
俺は少々イラッと来た。
「まったく。人間は最初からできる奴なんていねぇんだよ。俺だって最初は剣をもまともに振るえなくていつも負けていたんだ。何故俺が誰よりも進んでいるか分かるか?」
「努力したからですか?」
「そうだ。きちんと基礎から練習したからみんなよりも剣が進んでるし、無詠唱も出来る。お前が弱いのは経験不足とそうやって自分には出来ないって思うから出来ないんだ。自分で自分の未来を消しているんだ。人間の真の力っていうのは、天才じゃなくて努力した奴だ。内心、俺は秀才の方が好きだしな」
授業が終わり、俺達は帰ることにした。
「ノエル君」
「なんだ?」
「お願い事があるのですがいいですか?」
「俺に出来ることならいいぞ」
「僕に剣を教えて下さい!!」
「いいぞ。じゃ、これから放課後第3闘技場に来い。1対1で俺がみっちり鍛えてやる」
トトは嬉しそうに「はい!」と答えた。
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