第12話 ケイル・アスタリアの過去

「な、何!?この光は!!」

そして、その光と共に俺の体は治って行った。

「会長、ファーレンガルト君の体が元に戻っていきます!」

「本当!?」

俺が目を開けると2人とも泣いていた。

何で泣いているんだ?

「馬鹿じゃないの?2人はあんたを思って泣いてるんだよ。私は馬鹿とは組みたくないね」

お前は?

「お前、さっきニージャ様から化身をもらっただろ?それが私。ウィルオウィスプだ」

そうだったのか。で、俺に力を貸してもらえるのか?

「まあ、ニージャ様からの命令だからしょうがない。手伝ってあげるよ」

サンキュー!

俺は立ち上がって詠唱を唱えた。

「我と契約を結びし光精霊王の化身よ。我と一つになりて真の力を表したまえ!”無限光幻”《インフィニット・アルゴデス》!」

俺の体は制服から忽ち変化していった。ウィルオウィスプの使う武器は光の矢。つまり、弓矢だ。俺は思いっきり弓を引いてアクアドルに向けた。アクアドルは苦しんでいた。あいつは闇そのものだ。だから、光の俺には敵わないらしい。矢を放った。すると、アクアドルの体を貫通した。そして、どんどん体が溶けていった。

「かっか。やっぱり、君は凄いね。でも、私達のファミリーは諦めないよ。いつかきっとまた現れるからね」

「後のことは地獄で言うんだな」

俺は溶け切った体に近付き刺した。そして、ケイルの所に行こうとした時。

「私も行きます」

ウルザインは真っ直ぐな瞳をした。

「ありがとう。でも、駄目だ。お前がピンチの時俺はお前を守れない」

「でも!」

「大丈夫だから、安心しろ。俺はこの学院1位だ。そう簡単にはくたばったりしない。約束する。絶対に帰って来るから。だから、無事を祈っておいてくれるか?」

ウルザインは泣いていた。俺はその頭を撫でながら言った。

「はい、分かりました。では、帰って来たら私の事はアンジュと呼んで下さい」

「分かった。約束する。じゃ、会長。あとはよろしく頼む」

「あ、ノエル君」

会長は俺を呼び止めた。

「私にも約束しなさい。私の事もティッタと呼ぶって」

「分かったよ。会長」

ティッタは微笑みながら「行ってらっしゃい」と言って手を振った。

そして、俺はおっさんからもらったマジックアイテム”飛靴フライシューズ”を使った。

待ってろ、ケイル。今助けに行くから。


しばらく飛んでいるとケイルをやっと見つけた。ケイルは深い洞窟の中にいたらしくすぐには見つからなかった。

俺は洞窟の中に入ってケイルを探した。そして、ケイルを拐った奴らをボコした後にケイルを見つけた。

「ふぅ、よかった。帰ろう、ケイル」

俺はケイルをお姫様抱っこで抱きかかえて孤児院に帰った。


***ケイル視点***

さっきのノエルカッコよすぎだよ!まるで、本当の男の子みたい。

「ケイル、まだ気付かないの?」

「何が?」

話しかけてきたのは私の契約精霊のサラマンダーだった。

「まあ、そこがケイルの可愛いところね」

「何がよ!?」

すると、サラマンダーは笑いながら「何でもない」と言った。私が拐われたのはその後だった。

ああ、静かだなぁ。静かだと昔のことを思い出す。私達エルフはとてもいい値で売れるらしく私も奴隷になりそうになった。とても暗くて狭い。何より心細かった。皆死んだような目をしていて誰も喋らなかった。でも、ある時私に話しかけてくれる元気な子供がいた。その子はとても照れ屋で責任感がある少年だった。どことなくノエルに似ているかもしれない。あの時の少年は君だったのかと思う位に。でもそんな訳ない。あの少年は死んでしまったのだから。あの少年の死因は餓死。食料不足で餓死なんて良くある話だ。でも、なぜが私には悲しみが絶えなかった。私達は友達でもましてや家族でもないのに。そして、それと同時に怒りも込み上げてきた。こいつら人売りが食料を自分達のためにケチったからこの子は死んでしまったんだと。

私は魔術で人売りを殺して他の奴隷になりそうになった人達を解放した。そして、辿り着いたのは小さな孤児院だった。私はその孤児院の庭で力尽き倒れてしまった。

目が覚めた時には知らない部屋に寝っ転がっていた。そして、扉が開き大人の女性が部屋に入ってきた。

「大丈夫?」

私はその質問を答えなかった。すると、女性は私に色々と質問をして来た。

私は答えず、何も反応をしなかった。


そして、私が来てから2カ月が過ぎた。新しい子供が来たらしく、皆落ち着きがなかった。

しばらくして、男の子が自己紹介をした。

「俺はノエル・ファーレンガルトだ。色々と分からないことがあると思うがよろしく」

彼の瞳は淀みがなかった。初めてだ。こんな人間。その日からかな?私が大好きになったのは。あ、likeじゃなくてloveの方で。


私、起きなきゃいけない気がする。そう思い、私は目を開けた。すると、私の目の前には大好きなノエル本人が立っていた。

「ノ、エル?」

ノエルは私を思いっきり抱きしめた。私はどうしたらいいのか分からなくなっていた。

「馬鹿野郎!心配したんだぞ!」

「あはは。ごめんなさい」

「よし、孤児院に帰るぞ」

「うん」

その時、何かが斬れる音がした。

「っ!!」

ノエルはその場で倒れた。血がドクドクと流れていた。

「ノエル!!」

「あっはっはっは!!ケイルちゃん!これで君は僕の物だ!!」

ノエルを斬った男性はそう言って私の手を掴んだ。

「僕達は結ばれる運命なんだよ!大丈夫。優しくしてあげるから」

男性は私の腕をがっしり掴んで引っ張った。私は思いっきり抵抗をした。

「離して!私はあなたの元には行けません!」

男性はその言葉を聞いて怒りへと表情を変えていった。

「どうして!?僕は神からお告げがあったんだ!ケイルちゃんの側にいる男を殺せば君は僕の物になるって!」

完全に興奮していて話が通じていなかった。そして、その男性は私にナイフを向けてきた。

「一緒に死のう。ケイルちゃん」

「い、いや!ノエル!!」

私がノエルの名前を呼ぶと一瞬の風が起こった。そして、目を開けると私の目の前にいたのはノエルだった。

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