第11話 世話の焼ける元魔術師と元剣士

「あのー」

間に入ってきたのは同じクラスのトト・リーシャだった。

「僕、ロウデン決闘祭を見に行こうと思ってて先程対戦表を貰ったんですけどノエル君は大丈夫としてオルトル君は危ないかもです」

「な、なんで俺だけなんだよ!ノエルだって同じだろ!?」

「え、だってノエル君は高等部の先輩2人を倒してしまったんですよ?」

「え!そうだったのか!?」

「というかお主、知らないで話を聞いていたのか?」

「だって、俺は試験の日休んでたしその後の決闘だってその次の日に聞いて誰が勝ったかまでは聞いてないんだよ!」

オルトルは慌てて言った。すると、アンジュが面白半分で言った。

「その程度でファーレンガルト君に勝つ気だったんですね。思いっきり嘗められていますね。ファーレンガルト君」

俺はその面白半分の言葉に乗った。

「ほう。俺も随分と嘗められたもんだ。いいだろう。俺が全力を持ってお前を捻り潰す。覚悟しないと死ぬぞ?」

アンジュ以外のSクラス生徒は凍りついていた。もちろん、オルトルもだ。オルトルは他の皆に助けを求めるように見たがSクラスの生徒は皆が知らんぷりをしていた。

「まあ、俺は認めた奴にしか本気を出さないから安心しろ。それに、お前だって十分強いじゃないか。心配する要素がとこにある?」

「おお!自分で貶して自分でフォローするとは中々だな」

貴族君は俺に対して関心していた。オルトルは今にも泣きそうな眼差しで見てきた。これは俺の予想だけどあと5秒でこいつは俺に飛びついて来るな。5、4、3、2、1。

「ありがとう!ノエル!」

やっぱり飛びかかって来やがった!

「うざい。寄るな。次俺にくっ付いてきたら殺す」

それは思いっきり冷たい目で見た。

「わ、悪い。あ、そういえばお前ってケイルと付き合ってるのか?」

「は?なんで俺があいつと付き合わなきゃいけないんだ?」

「なんだ。違うのか。いや、お前が来てからケイルの様子が変わったからてっきり付き合ってるのかと思ったが違ったか」

「様子が変わった?」

「そうだ。前はなんかこう、寄るな触るな近寄るなみたいな感じだったんだぜ?」

「ふーん」

俺はあんな奴がそんな雰囲気だったなんて信じられなかった。時計を見るともう5時だった。

「やばっ!レイルさんに叱られる!じゃ、また明日な」

「うん!また明日ね!」


俺は孤児院に帰った。すると、レイルさんが勢いよく扉を開けて怒りの表情で出てきた。

「レイルさん、ただいま帰りました」

「あら、ノエル君。お帰りなさい」

レイルさんはいつも通り挨拶をしてくれた。

「あの、どうかなさったんですか?」

レイルさんの顔はもっと険しくなった。俺はちょっとその理由を聞くのには少し躊躇ったが大体予想は出来ていた。そして、レイルさんにこんな顔をされた男が出てきた。案の定、武器屋のおっちゃんで元冒険者のダニエル・グーデンブルグだった。

「あの時は本当に悪かった。俺はあの日からずっと反省していたんだ」

「ふん!どうだか。私を置いて自分は他の女とパーティを組んだくせに」

うわ!このおっさん最低だな。俺はおっさんを見ていると目が合った。

「おお!あの時の可愛い嬢ちゃんじゃないか!でも、なんでここにいるんだ?」

俺は完璧に知らないふりをした。

「えっと、俺はあんたと会ったの初めてだぞ?」

「何言ってんだ!この前俺の店に来てくれたじゃねぇか!」

「ああ。それは多分俺の妹だ。双子だから色々と似ているんだ」

俺はお前なんか知らないと思いっきり言った。すると、おっさんは申し訳なさそうに謝った。

「わ、悪い。でも、お前の妹さん可愛かったな」

おっと、今のは地雷を踏んだな。

「ふーん。貴方って女とつくものなら何でもいいのね」

レイルさんは冷たい目でおっさんを見た。

「いや、そういう訳じゃなくて」

おっさんは俺を涙目で見た。申し訳ないが、俺にはどうにも出来ない。これは自分で処理するべきだよ、おっさん。

「ちょっとこっちに来なさい!」

「いだだだだ!!」

そう言っておっさんが出て来たのは2時間後だった。

「あー、しんどかった。あ、坊主。俺のとっておきのアイテムをやるよ」

おっさんは俺に靴と板を渡した。

「何これ?」

「これはマジックアイテム。靴の方は飛靴フライシューズで、これがあれば魔力がなくても飛べる代物だ。板の方は滑板スリップボード。これは魔力を少しだけ流して使う。でも、1時間で2chしか減らない代物だ。どっちもそう簡単には手に入らない物だから大事に扱えよ?」

あ、chっていうのは魔力の単位で、下級魔法を使うと20chずつ減っていって上級魔法を使うに連れて魔力は減っていくのだ。

「でも、何でこんな高価な物を俺に?」

「いや、お前みたいな強いやつだったら冒険者になるだろうと思ってな。じゃ、俺は行くぜ。アイテムの事で何か分からないことがあったら俺に言えよ。じゃあな!」

「ありがとう!」

「おう!!」

おっさんは気付くともう遠くに行っていた。



「ノエル君、ちょっとお買い物行ってきてくれるかしら?」

レイルさんは俺の部屋に入り、頼んできた。俺は丁度勉強をしていた。

「あ、勉強していたの。じゃあ、大丈夫よ」

「あ、いえ。大丈夫です。俺、行って来ます」

すると、後ろからケイルが出て来て「私も行く」と行った為2人で行くことになった。

「ねぇ、ノエルは何でそんなに強いの?」

「は?」

「だって、ノエルって魔術は高等部の習ってるし剣術はマスター級まで出来てるんでしょ?」

「まあな。色んな人と手合いをしていたからじゃないか?」

「そっか。じゃあ、私も色んな人と手合いをしたら、強くなるかな?」

「ああ、多分だけどな」

「そっか」

ケイルは満足そうに言った。

俺達は買い物が終わり、孤児院に帰ることにした。しばらくするとら雲行きが悪くなって雨が降ってきた。しかも、ざんざん降りだ。俺達はすぐそばにあった小屋に避難した。

「いきなり降ってくるなんて。もう、服がびっちょびちょ!!って、ノエルの服全然濡れてない!?」

「ああ、俺の服は防水作用があるからな。いつ雨が降ってもいいようにしてあるんだ」

「そっか」

そして、ケイルの方からガサゴソと音が聞こえて俺の前で着替え始めた。

「・・・おい!なんで俺の前で着替えているんだ!」

「え?だって、着替えないと風邪引いちゃうもん」

「俺は男なんだぞ?男の前で着替えるな!」

「え?ノエルは女の子でしょ?男の子な訳ないよ」

こいつは一発懲らしめにゃいかんな。

「ほう、なら俺が男か女か試してみるか?」

「え?」

俺はケイルの顔の横に手をドンッ!と鳴らせた。いわゆる壁ドンだ。俺の身長はケイルより結構高い。この為、必然的に俺が壁ドンをする派になる。

「ノ、ノエル?」

そして、俺はケイルを真剣な目で見つめた。すると、ケイルの顔が真っ赤になっていた。俺の口はケイルの口に近づいた。ケイルは目を閉じていた。足を見ると震えていたのでもういいかなと思いそこで止めた。

「な?俺はこんな体でもこういう時だってある。だから、迂闊に服を脱ぐな」

「分かった」

「じゃ、俺は寄るところが有るから先に帰ってろ」

「う、うん」

ケイルは素直に答えた。

俺がキスを止めた理由がもう一つある。俺の理性が持たなそうだったからだ。昔の俺ならば問答無用でキスしただろうが、今は違う。


俺の用事は学院の生徒会長だった。俺は生徒会室に行ってノックした。音がせず、俺は帰る事にした。すると、後ろからナイフが飛んできた。この時ももちろん気付いていた。だから、俺はノックする前に氷弾アイス・ボールを用意していた。それを発射したが全て斬られてしまった。まあ、これは予想通りだその怪しい野郎は剣術で勝負したいらしい。俺はその誘いを乗る事にした。俺は腰の魔千刀を鞘から抜いて構えた。すると、直様飛びかかって来て俺の一振りで動かなくなった。

「はあ、こんなものか。案外呆気ないな」

すると、後ろから声が聞こえた。その声は生徒会長とウルザインだった。

「これは凄い!何か嫌な感じがして帰って来てみればこんな事になっているなんてね」

「関心している場合ではないです!一体どうしたんですか?ファーレンガルト君」

「ああ、そこのニヤニヤしている会長に用があってな。そしたら、こいつに襲われてこんな事になったんだよ」

「そうですか。でも、なんで・・・」

「そしたら、相手に聞いた方がいいんじゃないか?」

「え?」

俺はさっき斬った野郎の所に行った。

「おい、狸寝入りは止めろ」

すると、斬った野郎は口を開いて喋り始めた。

「かっかっか!さすがだねー!」

「その体はお前のじゃないな?」

「ど、どういうことですか?」

ウルザインはうろたえていた。

「お前、指名手配されているバルバドール・アクアドルだな?」

「え!?」

「重罪犯罪者バルバドール・アクアドル。二つ名、”乗移犯罪者ボーデット・クリミナル”」

会長は淡々と言った。いや、少しだけ目に憎しみが入っていた。

「かっかっか!本当に面白いねぇー!そう、私はバルバドール・アクアドル」

「お前の目的は何だ?」

「私の目的は君を足止めすること。他の奴らは君のお友達のエルフちゃんを捕まえることだねぇー?」

しまった。ケイルが目当てだったのか。

「あのエルフちゃん達は結構貴重でねぇ?貴族様によく売れるんだてぇ?で、今迄あの子だけ見つからなくてねぇ。でも、この国にいるって言うからさぁー?捕まえに来ちゃったってわけー。まあ、あの子じゃなくてもいいんだけどー道具は多い方がいいからさぁー」

俺は正直キレていた。ケイルはエルフだっただけだ。物なんかじゃない。俺は人を人として見ない輩は大嫌いだった。

「2人とも少し下がってくれるか?」

俺の声には殺気がこもっていた。

「おい、ゲス野郎。今ケイルを道具と言ったな?」

「うん。あの子達は全員道具。あ、でも君は違うよ?だって、私は君を誘いに来たんだー。だって、学院には勿体無いしぃー」

「誘う?」

「うん。一緒に暗殺家業をしようよ!楽しいよー?」

俺は鼻で笑った。

「は?俺がそんなのに入る訳ないだろ?俺がするのはお前をぶっ殺すという事だけだ!」

「へー。でも、私は諦めないよ?そんなに言うなら私を殺してみてよ?」

「良いぜ?」

俺は思いっきり走り出した。ゲス野郎は俺に連撃をして来た。俺は交わすので精一杯だった。その瞬間、俺は思いっきり斬られた。

「ファーレンガルト君!!」

俺はこんな力しかないのか?もっと力が欲しい!

「力が欲しいのかい?僕が分けてあげるようか?」

誰だ?

「僕はニージャ。君の人生は良く見せてもらった。とても複雑だね。でも、とても面白い。それで、僕は君をとても気に入った。だから、君に僕の化身をあげるよ。大事に使ってね」

その時、俺の体が光った。

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