第10話 ビブリア・フェスティバルの約束
ケイルと会ってから2日が過ぎた。俺はフェンリルにケイルといる時は現れないようにと釘を刺した。
「やっぱりお前俺の部屋に入ってきてたのか」
いつも通り、ケイルは俺の部屋で寝ていた。今日はビブリア・フェスティバルの実行委員の集会で俺達は早めに行かなければ行けなかった。なのに、こいつは眠りこけやだって!
「ケイル、今日は集会があるだろ?俺はもう行くぞ」
すると、ケイルは飛び起きて直ぐに着替えに行った。
「ちょつと待ってよ!」
俺はその声を聞かずさっさと歩いて行った。久しぶりの1人で登校だ。やっぱり1人の方が落ち着く。
「おはようございます。ファーレンガルト君」
後ろから声をかけて来たのはウルザインだった。
「ああ、おはよう。昨日の傷は治ったのか?」
「はい、サラ先生が直してくれたので。それにしても、ファーレンガルト君。今日は皆さんあなたの事見ているようですがどうしたんですか?」
「ああ、あれは・・・」
俺は昨日オルトルから聞いた話をした。すると、ウルザインはクスクスと笑っていた。
「そうなんですか。面白いですね」
「笑い事じゃ無いぞ!俺は結構迷惑してるんだからな」
「すいません。あ、聞きたい事があるんですけど昨日の魔術って何ですか?」
「あれか」
ウルザインが言ったのは”
「あれは俺が自分で作った魔術だ。まあ、構造が分かっていれば誰にでも使える魔法だ。だが、そう簡単には教えられないし相当な魔力がないと扱えない代物だ。それに技術を磨かないと上手く出せない」
ウルザインの頭は皆と同じで?が付いていた。そしてウルザインは生徒会の仕事があるみたいで別れた。
「ノエル!!」
怒った口調で走ってきたのはケイルだった。
「なんで置いていくの!?待ってって言ったのに!」
「悪かった」
俺はあっさりと謝って会議室に行った。
「おはよ!ノエル君、ケイル」
「おはようございます、リン先輩」
「おはよう。以下略」
「嫌だなー、先輩なんて似合わない呼び名やめてよ!」
「リン先輩は一応俺の先輩ですから、敬語を使わないといけないでしょう?」
本当は呼びたくないよ。俺だって。
リンは実行委員の会長で女子男子共に人気がある。この学院には密かに美少女ランキングというものがあり、リンは5位だ。ちなみに、ケイルは2位。ヘスティアは3位だ。1位は何故か俺なのだ。そもそも俺は男として扱われているのに何故美少女に入る?あとは、美少年ランキングもある。3位はオルトル、2位はレン。そして、1位はまたまた俺。この結果には意外と納得した。普通ではこういう基準なのだ!
それは兎も角、実行委員が始まった。
「えっと、これから第1回実行委員集会を始めます。今日、皆に伝える事はビブリア・フェスティバルで出す物を決めて今週末に計画書を提出する事です。出し物は節度を守って取り組んで下さい。では、これで集会を終わります」
手早く済まして俺は帰りたい。俺は話を聞きながらそう思っていた。
「ノエル君、ちょっと仕事をお願いしてもいいかな?」
リンは俺に頼み事をして来た。
「何ですか?物によっては了承しかねます。そして、俺は早く部屋に戻りたいので30秒で簡潔に喋ってください」
すると、リンは話し始めた。
「えっと、放課後に生徒会室に行きたいんだけど会長は私が嫌いだから会ってくれるように説得してくれないかな?」
リンはぴったり30秒で話を終えた。
「何で俺?」
「だって、よく話してるし。それに、ノエル君の前ではよく笑うんだよねあの人」
そう言ってリンは寂しそうだ顔をした。俺はため息を付いて「分かりました」と言った。すると、リンは俺の手を掴みブンブンと振り回した。
俺は今日授業がなかったので、一日中図書室にいた。この学院は全て選択制で1週間で変えることができる。俺は剣術を2つ、魔術を4つ入れていて丁度今日は何もない日なのだ。本当だったら孤児院に帰りたいんだが、今日のリンとの約束があって帰れないでいた。本にも飽きたので昼寝をする事にした。すると、ガッシャーンという音がしたので行ってみると女の子が泣きながら謝っていた。その周りにいる男子生徒はニヤニヤとしていた。俺は胸くそ悪かった。
「おい、何したんだ?」
俺は殺気のこもった声で言った。すると、男子生徒たちは俺を見てお辞儀をした。
「こんにちは、ノエルさん!」
なんだ?つか、ノエルさん?こいつら俺と会うの初めてなのになんでさん付け?
まあ、それは兎も角。
「取り敢えず質問に答えろ。何してんだ?」
「あ、はい。俺にぶつかったので懲らしめていたんです」
「それだけか?」
男子生徒は「はい」と不思議そうに答えた。
「はあ、お前らは馬鹿なのか?寄ってたかって女子を囲むのはよろしくないぞ。兎に角、もうこんな事すんな。さあ、こっちに来い」
俺は女子の腕を掴んで引っ張った。そして、図書室の中に入った。
「ここにいれば何もされない。しばらくはここにいればいい」
女子は赤くなった顔で言った。
「あの、あなたはこの前私を助けてくれた方ですよね?」
「え?」
「あの時、私を助けてくれた男性ですよね?」
あ、思い出した。この子は街でナンパされてたのを助けた子だ。
「ああ」
すると、その女子は丁寧にお礼を言ってくれた。
「あの時はどうもありがとうございました。私はアリアナ・ウルエスタントです。Fクラスです。よろしくお願いします」
「ああ。俺はノエル・ファーレンガルトだ。知ってると思うがSクラスだ」
「はい。ファーレンガルト君はとても有名ですから」
といって俯いていた。
「あ、じゃあ私は用事があるので失礼します」
そういって走っていった。
その後、リンと合流をした。
俺は生徒会室の前に着いた。正直俺は気が重かった。あんな生徒会長に会うのは嫌だったからだ。でも、引き受けてしまったものはしょうがない。そう思って俺はドアを開けた。
すると、ティッタは椅子に座っていた。
「君は日々違う女の子を連れてるね。で?私に会いに来たのは何の用件なの?」
ティッタはとても不機嫌だった。俺はリンの事を話した。するとあっさりと「いいよ」と言った。
「でも、その代わり一つ願い事を聞いてくれるかな?」
「何だ?話によるな」
「いや、最近妙な噂を聞いてね」
「妙な噂?」
俺はティッタに質問というか、変に思ったから聞いただが。ティッタが言うにはこの学院で変な人体実験をしているという噂が流れているらしい。それで、ティッタは俺に面倒事を押し付けて自分は昼寝をしていたいんだと。まったく、いい迷惑だな。
「分かった。で?報酬はあるのか?」
「あるよ」
俺は報酬は何か聞いた。
「それは、私だ」
「は?悪いが、俺にはそういう趣味はない。つーか、お前はタイプじゃないしな。お前以外にはないのか?」
するとティッタは「つれないなー」と言って目を逸らした。そして、また俺を見た。
「賞金1万Zでどうかな?」
「分かった」
そして、俺は部屋を出ようとした。リンもだ。だが、一向に出てこない。不審に思った俺は部屋を見た。すると、ニヤニヤと笑っている会長と足が動かなくてあたふたしているリンがいた。
はあ、この人はまたお遊びで魔法を使うんだから。
「ノエル君!足が動かないよ!」
「はあ、遊びは止めろ。いくら、他の人の反応が面白いからって無闇に使うのはお勧めしないぞ」
すると、ティッタは反省しながら魔法を解いた。なぜ俺がこの魔法を発動しているのが分かったかもいうのは後にして。ティッタが使った魔法は”
俺はこの魔術の解除法を知っていたので解いてあげた。といっても、昼食をおごるという条件付きで。
俺は術を解いた。そして、俺達は今度こそ生徒会室を出た。
「ねぇ、何でさっきの魔法が分かったの?」
「ああ、人間は魔法を使う時魔力を込めますよね?その時、俺は何だかピリピリしてくるんです。あの魔法は俺もかかった事があるから、直ぐに分かったんですよ」
リンは呆れた顔で「そんな事簡単には出来ないよ?」と言ってきた。
2度目の魔術の授業が始まった。俺は他の生徒よりも長けている為、中等部ではなく高等部の授業を受けていた。魔術の授業ではリンとレンがいた。流石に中等部の俺がここにいるのが腹立たしいのかこっちを睨みつけている男子生徒もいる。まあ、他の理由もあるだろう。何故なら俺の隣に美少女ランキング5位のリンがいるからだ。あまり話をしない俺を見かねて席を移ってくれた。そして、女子生徒は何故か和んでいた。無口のレンと容姿がいい俺が並ぶといい感じらしい。2人が教えてくれるのはいいんだが、他の生徒の視線が気になって集中できない。しかも、リンは分からない事があると教えてくれるのだ。それは有難いがやっぱり視線が怖い。特に男子生徒。魔術の授業が終わると、次は剣術の授業だった。俺は剣術をマスター級までやっていたので、教師として教える事になった。俺が教えると言った途端、男女問わずに教えて欲しいと言ってきたのである。ケイルとヘスティアは魔術選考だから、剣術の授業にはいない。そっちの方が良いんだけど。
「なあ、ノエルって何でそんなに強いんだ?」
学校が終わって帰ってる途中オルトルは唐突に聞いてきた。
「うーん、俺は小さい頃から剣術をやってきてたからじゃないか?それに、レンにも教わってたからな」
そういうと、皆が一斉に俺を見た。何故か俺は皆の目が怖かった。
「レンってバルキュリア様の事!?」
「まじで!?」
その話になるや否や皆は俺に聞いてきた。俺は聖徳太子じゃないんだから一遍に言われたら分かんねぇし!
「あー!もううるせー!少しは落ち着け。なんでそんなに騒ぐんだよ?」
「だって、レン・バルキュリア様は学院の剣王なのよ!?それに、あんまり人とは喋らないから無言の剣王と呼ばれてるのよ!?」
熱心に解説してくれたのは同じクラスのシュリフォン・バルトラだったかな?親しい人にはシュリと呼ばせているらしい。
「それに、ノエル君ってレイル・グランディア師と知り合いなんでしょ?」
「ああ、レイルさんはそんなに有名なのか?」
そういえば入院式の時めっちゃ見られていたけど。
「有名どころじゃないぞ!!魔導師レイル・グレンディア師と剣士ダニエル・グーデンブルグ様の英雄譚は本にもなってるんだからな!」
本にもなってるという事は随分昔の話という事になるよな?と、いう事はレイルさんって一体いくつなんだ!?・・・ん?ダニエル・グーデンブルグ?どっかで聞いた事あるような無いような。思い出した!あの時の武器屋のおじさんだ!話は聞かなかったが、自慢気だったのはそういう事か。
「ノエル君ってダニエル様にも会ってたりして?」
おいおい、面白半分に言うなよ!本当にあった事があるんだから。
「えーっと、一回だけあった事があるかな?」
すると、皆の顔がからかう顔から驚きの顔へと変化していく。雄叫びをあげる3秒前。3、2、1。
「えぇぇぇぇ!!」
も、予感的中。
「お、おおおお前!ダニエル様に会ってるなんて何者だよ!?」
オルトルは思いっきり肩を揺さぶった。俺は少々頭に来たのでその手を跳ね除け言った。
「いい加減にしろよ!俺がそのダニエルに会ったのは偶然なんだ!それなのにガヤガヤと。こっちの身にもなってみろ!」
俺が皆の前でキレたので皆は驚いていた。
「ノ、ノエル。言いたい事はそれだけか?」
「まだ言っていいのか!?」
「いや、大丈夫です」
「まったく、お前ら次こんな事したら氷の牢獄に閉じ込めるぞ!あーあ、そんな事になったら俺の妹には会えないな。まあ、俺がぜってー合わせないから安心しろ」
すると、オルトルは反省したのかはたまた妹に会いたいのか。どっちは分からないが土下座して謝った。他の奴らも同様だ。
「もういいよ。反省したならいい」
すると、オルトルの顔が見る見るうちに明るくなった。
「じゃあ、アヘルさんにも会えるんだな?」
「なんでそうなる!?」
「だって、この前言ったじゃないか。俺に会わせてくれるって」
俺は頭を抱えた。そういえばそうだった!この前言ったんだった!!
「・・・分かった。じゃあ、妹に電話するから待ってろ」
俺は校舎に戻ってケイルに通信魔法で連絡した。通信魔法は誰にでも出来る魔法で別に精霊がいなくても出来る俺が発明した画期的な魔法だ。それをケイルにも教えておいた。オルレコで。そして、ケイルにある程度の事を話した。
「・・・という事なんだけど。どうしたらいい?」
「うーん、じゃあビブリア・フェスティバルと同じ日にロウデン決闘祭があるから行われるからそこで優勝したら会います。って言ってみれば?そしたら、オルトルも諦めるんじゃない?」
「あいつがそう簡単に諦めるかは置いといて。あいつは強いから決闘祭に出る場合は敵う奴はいないと思う。だから、俺も出る事にする」
そう言った途端、ケイルは「私も出るからよろしくね」と一言据えて言った。まあ、この学院の生徒では物足りないだろうな。
「じゃあ、明日申し込みするから教えてくれ」
「了解」
「じゃあな」
そういって通信魔法を解いた。そして、オルトルのところへ行った。
「どうだった?」
オルトルは緊張した表情だった。
「会うとさ」
「本当か!?」
「ただし、ビブリア・フェスティバルと同日に開催される決闘祭で優勝したらだそうだ」
オルトルはとても真面目に顔をして来た。まあ、予想通り「やる」と答えた。
「あ、ちなみに俺も出るからな」
「そうか。正々堂々戦おうぜ!」
オルトルは上等だと言わんばかりの表情だった。
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