第9話 銀の騎士=俺?

俺が起きる時間は早い。ケイルやレイルさんには内緒だが俺は朝のトレーニングをしている。だから、今日もやろう!と思ったのだが俺のベットにいるケイルは中々手を離してくれない。だから、俺は今日のトレーニングを休もうと思った。

「おい、ケイル。朝だぞ」

「んー?」

可愛らしい声をあげるケイル俺はそれを許そうと思ったが邪魔だったから起こした。

「いい加減起きろー!」

俺は勢いよく毛布を持ち上げた。

「うわ!」

さすがにケイルも起きた。

「な、何するんだよー!」

「何じゃない!なんでいつもお前は俺のベットに潜り込んでるんだよ!?」

「いいじゃん!女の子同士だし」

まったく、こいつ俺が女と分かったら部屋に入り浸るようになった。

「いいから出てけ!」

「えー!なんで!?」

「俺は皆を起こす仕事があるんだよ!」

俺は部屋から出て、おたまとフライパンを持って日本式の起こし方をした。すると、皆飛び起きて自分の仕事をした。


俺とケイル。そして、ヘスティアで登校する事になった。いつもだったら、ヘスティアは馬車で学院に行くのだが珍しく徒歩で行く事になったのである。ケイルはヘスティアを邪魔者を見る目で見ていた。すると、ヘスティアは面白そうにケイルの視線を見て俺に柔らかい物を当ててきた。

「うわっ!いきなり何するんだよ!?」

「何ってくっ付いてるだけよ?」

そういうとケイルも腕にくっついて来た。

「2人とも離れろ!」

俺は2人を引き剥がそうとしたが全然離れてはくれなく、諦めた。

「何やってるんですか!」

声をかけて来たのは赤面のアンジュ・ウルザインだった。確かこいつは俺が来るまでは学院1位で俺が来てからは学院2位だったっけ?

「別に何もしていませんけど。何かご不満ですか?」

ヘスティアは喧嘩口調で言った。なんだ?この険悪なムードは。

「不満なんてものじゃないです!!なんで、む、胸を押し付けているんですか!?」

ウルザインは顔を赤くして言った。

「良いじゃん!ノエルも喜んで・・・ないみたい」

ケイルは今にも怒りそうな顔を見て青ざめた。当たり前だ。俺は普通に登校したいんだからな。

「・・・いい加減離れろ!」

俺は2人を思いっきり突き飛ばした。ケイルは反省した様子でヘスティアは面白かったという顔をしていた。

「次にこんな真似をしたら生徒会長に訴えますよ!それと、ファーレンガルト君。生徒会室に来て下さい。会長からお話があります」

「分かった」

そう答えると2人は目を輝かせていた。「私も行く」と言わんばかりの表情だった。それに気づいた俺はニッコリと黒みを帯びた笑顔で言った。

「言っておくが、次ついて来たらお前らがどうなるか分かってるよな?」

すると、ケイルは泣きながら何回も頷きヘスティアは「は、はい」と言った。さすがに危険だと思ったんだろう。

「では、行きましょう」

ウルザインは俺の横に立って歩いていた。最初の雰囲気は俺の事が嫌いだと思っていたが違ったのか?

そう考えていると、ウルザインはこちらの方をチラチラと見てきた。恐らく俺が下げている刀が気になるのだろう。

「なんだ?チラチラとこっちを見て」

俺は大体予想は出来ていたが聞いてみた。

「え!?な、何でもないですよ?」

ウルザインはうろたえた感じで答えた。こいつ、嘘が苦手なタイプか。ちょっと面白いかも。

「そうか。ならいいんだが」

「あの」

「ん?」

「その剣は何ですか?」

ウルザインは俺に質問をして来た。

「これか?これは妹がプレゼントしてくれたんだ」

本当は俺が買ったのだが、オルトル達が俺の妹の事を広めているらしく迂闊には俺が買ったとは言えなかった。

「へー。あの、失礼ですがおいくらですか?」

「確か、5zだったかな?」

この前、お金の話はしたよね?その俺が使ったお金はどうして持っていたかというと、王城でへそくりを見つけてしまったので持って来ていた。あ!そこの君!これは断じて盗みじゃないぞ?ある意味俺の物なんだからな!

「なんて安いんですか!?それはもう売ってないんですか?」

ウルザインは物欲しそうだった。

「うーん。俺が行った時には一点ものって言ってたからないかもな」

そういうとウルザインは肩を落とした。やっぱり面白いな。

「そうですか。あ、着きましたね。生徒会室」

ウルザインはそう言ってドアをノックをした。すると、ドアの中から声がした。

「どうぞ」

ウルザインはその声を聞いてドアを開けた。そして、俺は中に入った。

「やあ、君がノエル君だね?初めまして、私はティッタ・オベンツ。この生徒会の会長をやっている」

俺は少しイライラしていた。なぜなら、もうすぐでホームルームが始まってしまうからだ。

「それで、俺を呼んだのは自己紹介をするためか?なら、俺は教室に戻る」

俺が部屋を出ようとした時、後ろからナイフが飛んできた。俺はそれを察知出来ていたから避けた。すると、会長は拍手をして来た。

「すごいね!君はやっぱり噂通りの人だったね」

「は?」

俺は少し切れ気味で言った。正直、早く教室に行きたいのに行けずイライラがMaxになっていた。

「そういきり立つなよ。私は君にこの生徒会直属の風紀委員になって貰いたくてね」

は?なんで俺がそんな面倒な事をせにゃいかんのだ!そう考えた俺の答えは一つだ。

「断る」

俺は真顔で言った。

「なんで?生徒会直属の風紀委員になれば思い通りなんだよ?」

「面倒だから」

すると、会長はポカンとしてしばらくすると爆笑し始めた。

「あっはっはっは!やっぱり君は面白い。見ていて飽きない。なら、私の物にならないか?なんでもしてやるぞ?」

「尚断る!要件がそれだけなら俺は教室に戻る」

俺が足を動かそうとした時、足が全く動かなかった。

しまった。いつの間にか囚われてしまった。

「君はもう私の陣地に入っているんだよ。この檻からは逃げられない」

「そういえばこの学園に2人の闇を使える人がいると聞いてたな。お前だったのか。”闇使ダーク・エルポリー”」

すると、会長は「へぇ」と関心していた。

俺はこの解除法を知っていた。これは術者に傷を負わせればいい。と、いうことで俺は無詠唱で”氷矢アイスアロー”を小さくして出力を出した。そして、会長の腕に当てた。

「っ!!」

予想通り体は動くようになった。

「俺を取り込もうなんて100万年早いですよ。あと、傷の手当てきちんとしておいた方がいい。じゃあな」

俺は生徒会室を後にした。そのあと、俺はダッシュで教室に向かったのは皆さんも分かるだろう。


「すいません!遅れました!」

俺は大きな声でドアを開けて入った。

「珍しいですね。ファーレンガルト君が遅れるなんて。何かあったんですか?」

エルビア先生は心配そうに俺を見て来た。

「いいえ。何も有りませんよ。強いて言うなら変な奴に絡まれた位です」

先生や他の皆はビックリしていた。ケイルは相変わらず爆睡だ。ヘスティアはざまあみろと言わんばかりの顔で俺を見ていた。多分、さっきの脅しを相当根に持っているのだろう。

取り敢えず俺は静かに自分の席に座った。

するとイケメン君ことオルトルが後ろを向いた。

「なあ、ノエルって妹がいるのか?」

オルトルは赤面になりながら質問をして来た。

「ああ、いるけど?」

俺がそういうと、オルトルは「俺の事何か言っていたか?」と質問して来た。

あ、こいつアヘルに惚れたな。俺は取り敢えずこいつが喜びそうな事を言った。

「ああ、言ってたな。オルトルさんはいいお方ですねって」

「そ、そうか?」

オルトルは真っ赤な顔で言った。そして、ぶつぶつと言いながら前を向いた。

「ノエルって妹がいるの?」

横から聞いていたヘスティアはケイルに乗って聞いてきた。

「ああ、双子だ」

「名前はなんて言うの?」

ヘスティアは興味心身で聞いてきた。双子で反応したらしい。

「アヘルだ。全体的に全てが似てるな」

「へー!そうなんだ!!」

ヘスティアは可愛い物が好きらしいな。

「えー、これからビブリア・フェスティバルの実行委員男女1名ずつ決めます。候補者が2人いる場合、決闘で決めてもらうのでそのつもりで」

エルビア先生は真顔で言った。

すると、ケイルが早速手をあげた。そういえば、ケイルがやれって言ってたな。面倒だけどやるか。

俺は手を上げた。するとウルザインも手を上げた。他にやる奴がいるんだったら止めようかな。俺が手を下ろそうとした時、ウルザインが手を下げるなよという目で睨んできたのでそのまま上げていた。

「では、アンジュ・ウルザインさんとノエル・ファーレンガルト君の2人いますので今日この後決闘して頂きます。よろしいですね?」

「はい」

あー、俺極力目立ちたくないんだけどな。皆にばれないように手を抜くか。

「ファーレンガルト君、もし私に手を抜いたら死にますよ?」

ウルザインの目は本気だった。仕方がない。本気でやりますか。


「それでは、ノエル・ファーレンガルト君とアンジュ・ウルザインさんの決闘を始めます。ルールは決して殺さず、正々堂々と戦う事です。両者前へ」

俺とウルザインは前に出た。

この決闘は他の生徒も観れるためいつの間にかギャラリーが増えていた。その中にはあの胸くそ悪い会長がいた。

「それでは、始め!」

ウルザインは合図と同時に詠唱を始めた。

「炎の精霊よ、一つに集まりたまえ!”炎段ファイアーボール”!」

ウルザインは下級魔法を出した。確かに手を抜いたら確実に死ぬな。でも、俺は浮遊魔法で飛んでいた。もちろん無詠唱で。

「す、すごい!」

浮遊魔法とは、そんなにすごい事なのだろうか?案外簡単だけだな。

「仕掛けて来ないんですか?でしたら、私から行かせていただきます!」

ウルザインは”炎離刃ファイアーカッター”を俺に向かって放った。俺はもちろん全て避けた。

「これで終わりか?だったら、これで終わりにさせて貰おう」

俺はフェンリルに呼びかけた。

「おい、フェンリル。起きてるか?」

「なんだ?主、また決闘をやってんの?」

「それがそうなんだ。だから、力貸してくれるか?」

「僕は主の精霊なんだから力を貸すのは当たり前でしょ。ていうか、呼ばなかったら主の事殺してたかもだし」

フェンリルの声は楽しそうで怖かった。

「さてと、ウルザイン。もう終わりにしようか」

「なんですか?もう降参するんですか?」

ウルザインは面白くなさそうな顔をして言った。

「いや、俺のとっておきの魔法の一つを見せてやろうかと思ってなあ、そうそう。反動が大きいから怪我するかも。まあ、大丈夫だよな」

俺はフェンリルに”氷弾華アイス・スピラー”をするからと伝えた。この魔法は俺にしか出来ない魔法だ。まあ、頑張って魔法を特訓すれば出来るが。でも、この魔法の原理が理解できるやつ限定だけどな。フェンリルに言うと「まじかよ」という顔をしていた。

「さてと、行くぞ?俺のとっておきの魔法だ」

俺は思いっきり放り出した。ウルザインはただ呆然と立ち尽くしていた。そして、直撃。もちろんウルザインは気絶していた。

「この勝負、ノエル・ファーレンガルトの勝利!」

会場は盛り上がった。俺が気づいた時には観客がいっぱいになっていた。俺が入場口に戻るとSクラスの生徒が駆け寄ってきた。 「ノエル君、今の魔法ってなに!?」

「今のって?」

「最後に出した魔法だよ!」

「ああ、あれは氷弾華アイス・スピラーって言って、氷の矢を放ち何本かは消失してまて違う方向から、打つ事が出来る。そういう魔法だ」

皆の頭の上には?が浮かんでいた。まあ、無理もないだろう。逆に初めて見て?が浮かばない方がおかしい。

「あのさ、それって自分で作ったものなのか?」

唐突にオルトルが聞いてきた。

「ああ、そうだけど。何かあるのか?」

皆はただ呆然と立ち尽くしていた。

「お前!なんでそんな事が出来るんだよ!?」

後ろから声が聞こえた。それは模擬戦で戦ったウェンちゃんだった。

「魔法を作るには数百個の公式を作らなきゃいけないんだぞ!?」

「なんとなく?」

俺は皆は関心などは通り越して呆れていた。

「な、なんだよ?」

皆の顔を見て質問をした。すると、もっと呆れた顔をして「何でもない」と声を揃えて言った。

「全く、主は鈍感だね。ま、それはそれで面白いけどね」

話したのはフェンリルだった。一応狼の姿をしている。Sクラスの生徒は驚いていた。初めて見たんだったらしょうがないか。

「なんで固まってるの?」

「いや、お前がいきなり話したからだろ」

俺は呆れながら言った。そして、俺達は教室に戻って荷物を持って帰った。


「ノエル、さっきは凄かったね!アンジュさんに勝つなんて!」

「あま、アンジュの上はノエルなんだから当たり前じゃない?」

2人は珍しく意気投合した。

「ねぇ、さっきから気になってたんだけどその狼はなに?」

ケイルはフェンリルを見た事がないらしい。

「こいつはフェンリル。氷の精霊王の化身だ。それと、俺の契約精霊」

「へー、かっこいいね!」

ケイルがフェンリルに触ろうとしようとした時、フェンリルはケイルを威嚇した。何しろ、俺以外の人間には警戒するだろう。だが、俺の予想とは違った。

「僕に触るな!僕はお前が嫌いだ!」

「おい、どうしたんだよ?」

フェンリルは俺をこっちを見ながら言った。

「僕はこいつみたいな半端者が嫌いなんだ。エルフのくせに森で修行をしない奴と一緒の空気なんか吸いたくないね」

その言葉を聞いてケイルは泣きそうな顔をしていた。俺はその状況が耐えられなかったし、俺の友達がこんなに言われているのが許せなかった。俺は大きな声で怒った。

「フェンリル!!」

フェンリルとケイルは体をビクッと震えた。ヘスティアはずっと静かに聞いていた。

「お前、それは言い過ぎだ!ケイルだって何か理由があってここにいるんだろ?最初からそんな事を言うな!」

「でも、主・・・」

「問答無用だ。ほら、ケイルに謝れ」

「・・・ごめんなさい」

「あ、いえ。私も馴れ馴れしかったので。すいませんでした」

2人は謝ったけど、わだかまりはなくなったわけじゃない。取り敢えずフェンリルには戻ってもらった。


次の日の朝、いつも通りケイルと登校していた。

「ノエル、おはよう」

俺にしか声をかけて来たのはオルトルだった。今日も相変わらず女子にはモテモテだ。でも、俺を見つけたオルトルは俺に助けを求めるように寄ってきた。女子達はこっちを見ながら目を輝かせていた。

「おい、女子がこっち見てるぞ。あっちに行ってやれよ。というか、あっちに行け」

「そんな冷たいこと言うなよ!俺があの中に戻ったらもみくちゃにされる。それに、女子達がこっちを見てるのはお前でもあるんだぞ?」

オルトルはニヤニヤしていた。オルトルが言うには俺が昨日ウルザインを倒したという事で噂になっていたらしい。そして、2つ名まで付いてしまった。その名前は銀騎士シルバーナイトと。これまた面倒な騒ぎになってしまった。

「いやー、大変だね。銀騎士シルバーナイト様」

俺は頭にきた。何か脅す要素は無いかと考えていたら直ぐに思い出した。

「ほう、そんな事言ってると俺の妹に会わせないぞ?今度合わせてやろうと思ってたけど止めちゃおっかなー?」

すると、オルトルは泣き始めて「お願いだ!それだけは勘弁してくれ!!」と言いながら俺の足にしがみ付いて来た。

「わ、分かったから離せ!」

その時のオルトルはとても情けなかった。


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