第5話 先生は見慣れたあの人!

俺は慌てていた。何故なら、代表挨拶なんて生まれてこの方一度も無い。なのに、何で俺が挨拶なんてせにゃならんのた!?果てしなく面倒くさい!!でも、決まってしまった物はしょうがない。取り敢えず、挨拶をする時に言う事を考えよう。でも、早く考えないと!入院式は明日。本当ならば、もう出来ていいはずだが出来ない!何故ならば・・・。

「まだ出来てないの?もう、1週間も過ぎているのに。いくら緊張してるからって出来なすぎでしょ」

そう!俺は緊張しすぎて考えられないのだ!しかも、1週間も過ぎているのに。

「何でもいいんじゃないの?だって、ただの挨拶だし」

そう、ただの挨拶なんだが学園長にこの前呼び出され緊張を増す事を言ってきたのだ!!

「と、取り敢えず、ヘスティアは部屋を出て行ってくれ」

俺はヘスティアに言うと、「へいへい」と言って出て行った。

そして、5時間経ったらやっと出来た!気付けばもう夕方になっていた。

「出来た?」

聞いてきたのはケイルだった。

「ああ、さっき出来た」

ケイルは心配そうな感じで俺の顔を見てきた。無理もないだろう。俺の顔は少し窶れていて、目の下にクマが出来ていた。

「大丈夫だ。だから、心配そうな顔で見なくてもいい」

「うん。ノエルは夕飯食べるの?」

「いや、いい。俺はちょっと寝るよ」

「分かった」

その言葉を後にケイルは部屋を出た。そして、俺はベットにダイブして一瞬で寝た。気付くともう朝でケイルが起こしに来るまで熟睡だった。



「おはよう、ノエルちゃん。昨日はよく寝れた?」

レイルさんは俺の部屋の向かいだ。ドアにはガラスがあって、電気が付いているとすぐ分かる。いつもだったらレイルさんは声をかけるけど俺が代表挨拶をすると聞いたらしく、一度も部屋に入って来なかった。多分、気を遣ってくれたんだと思う。

「はい、グッスリと寝れました」

すると、レイルさんはホッとしていた。

「じゃあ、行って来ます」

「行ってらっしゃい。また後で会いましょうね」

そう言って、見送ってくれた。


「ノエル!待ってよー!」

声をかけて来たのはケイルだった。ケイルの口の周りには米粒が付いていた。

「おい、ケイル。口に米粒が付いているぞ」

俺はケイルに付いている米粒を取って食べた。すると、ケイルの顔がみるみるうちに赤くなっていった。

「あ、ありがと」

「おう」

俺は何でそうなっているのかは分からなかったので聞かなかった。

そして、入院式の開会の言葉が始まった。俺は緊張で心臓が飛び出るかと思う位だ。

「次に、新入生代表挨拶。新入生代表、ノエル・ファーレンガルト。前へ」

俺は呼ばれる通りに壇上に上がり、挨拶をした。

「暖かな春の訪れと共に、自分を含め206名は王立ビブリア学院に入学しました。俺は、新入生代表としてここに立っています。一部では、変な噂が流れています。魔族の子供だとか、魔人が現れたとか。ですが、俺は人間であって魔族、ましてや魔人じゃないです。ですから、俺を怖がらず接して下さい。学院長をはじめ、先生方、先輩方、そして来賓の皆様、緊張していた自分達に多くの励ましの言葉をありがとうございました。

自分達新入生はお互い良い影響を与えあい、良い刺激をし合える関係になります。


もし自分達の精一杯の答えが間違っているときは、先生方そして先輩方、保護者の皆様方どうか力を貸してください。

暖かいご指導よろしくお願いいたします。 新入生代表 ノエル・ファーレンガルト」

俺が挨拶を終えると拍手が送られた。その拍手で俺の緊張感は一瞬でなくなった。

「ふぅ、良かった。うまくいって」

俺は自分の席に戻り、小声で一言呟いた。

そして、先輩の挨拶が終わり入院式は無事に終了した。


「ノエル君!」

「あ、レイルさん」

前から走ってくるレイルさんに気付いた。気のせいだろうか?会場の皆、レイルさんの事を見ているような気がする。

「すごかったよ!とってもかっこ良かった!!それにしても、改めて思ったけどノエル君は大きくなったんだね」

「は、はあ」

俺は少しびっくりした。何故なら、レイルさんの目に涙が流れていたからだ。

「あ、レイルさん。俺達教室に行かなきゃいけないから、また孤児院でな」

我に返ったレイルさんは「ええ」と言って帰って行った。

「行こう、ケイル」

「うん!!」

ケイルは元気よく返事をした。



俺達が入るSクラスは超エリートらしい。剣術と魔術に長けた者は数えられる数しかいないと言う。

俺達がクラスに入ると、とても少なかった。他のクラスには大体30人近くはいるが、Sクラスは10人いるかいないかしかいないのだ。

「少ないな。まあ、当たり前か。そうぽんぽんと出てこられちゃ困るか」

俺は窓際の一番後ろが空いていたからそこに座った。机は3人掛けで俺が窓際、ケイルが真ん中、ヘスティアが廊下側という風に並んでいる。

「ヘスティア、なんでここに!?」

ケイルは今気づいたという風にヘスティアを見ていた。

「私はずっと前からここに座ってたわよ。入って来たのはあなたでしょ?」

おいおい、会って早々険悪なムードだぞ?大丈夫か?すると、先生が入って来た。先生は見慣れた感じのお姉さん。黒髪に赤色の瞳。眼鏡をかけた、20代前半の人。そう、城にいた頃お世話になったエルビアその人だったのだ。

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