第2話 他の国王は太っ腹

「お前が呼ばれたのは分かっているな?」

「はい。先程のオルデラ伯爵の事ですよね?ですが、お父様。私は先程の事を謝るつもりはございません」

そう俺が言うと、父ちゃんは微笑んだ。

「皆、私とボルデットだけにしなさい」

そう父ちゃんが言うとすぐに召使いたちが出て行った。

「ボルデット、結婚するのが嫌なのは分かるがお前はもう14だ。結婚相手を決めて、家庭を築かなければならないのだ」

そんな事は分かっている。だが、俺は結婚なんて無理だ。王族の義務とかあるのは分かる。でも、結婚をしたくないと言っている相手に無理やりやらせるのはダメだと思う。

「お父様、私が変わったとお思いですか?」

「なぜその質問をする?」

「私に必要だからです」

「・・・まあ、正直に言えば変わっていない。だが、城の者達は変わったと言っている」

「そうですか」

「兎に角、お前は結婚をするんだ。次は成功しなさい」

俺は声に出さずこくりと頷いた。その後俺は退出した。

廊下を歩いていると、さっきの俺を掴んだメイドが現れた。そして、心配そうな目で俺を見つめて来た。俺はなぜそのような顔をしているのかは、察しがついた。

「私は大丈夫です」

そういうとメイドはホッとした顔だった。そして、俺は取り敢えず部屋に戻った。

今日は寝よう。この後のことは明日考えよう。

俺はパジャマらしき物を見つけ、それを着た。もちろん体は見ていない。俺は紳士だからな。

ベットに横になったその時、殺気を感じた。なぜ、俺が殺気を感じることが出来たのは後に説明するとして。殺気は3人だ。俺はベットから静かに降りて身代わりの人形(部屋の大きい熊さん人形にカツラみたいな物を付けた)を横にさせた。しばらくすると、扉は静かに開き部屋に入ってきた。そして、ベットに横たわる身代わり人形にナイフを刺した時。俺は、ナイフを刺した野郎に一発くらわせた。他の2人も同様だ。全員その場でバタンキューだった。だが、俺は油断をしていて後ろからナイフが飛んできたのだ。間一髪で急所は外れたが腕には傷を負った。俺はナイフを投げた野郎を気絶するまで殴り続けた。多分、これは今日のツルピカ(笑)の仕業だろう。俺を狙っていると分かれば、俺はここを出て行くしかない。俺は身支度をしてすぐに出て行った。

森の中を歩いているといきなり光り、俺はいつの間にか知らない森にいた。そして、俺は思った。これは転移したんだなと。

今の季節は冬らしく、かなり着込んでいるがやはり寒い。雪も降っていて、俺が歩いて行く道には赤い斑点があった。紛れもなくこれは血だった。俺は少し休む事にした。城から出て2日が過ぎた。疲れたし、お腹も空いた。誰か、助けてくれ。

「助けて欲しいか?」

「・・・誰だ?お前は」

俺は意識が朦朧として、そいつの顔が見えなかった。

「我は水の精霊王、ニザード。人の子よ、お前を助けよう。だが、対価を貰う」

「対価をとはなんだ。命以外で頼む」

「対価はお前の愛だ」

俺は一瞬意味が分からなかった。

「は?意味が分からないんだが」

「お前からの愛情をこいつに分けてやってくれ」

精霊王は俺の前に狼を差し出した。

「こやつは、最近生まれたフェンリルだ。だが、こいつは人間の世界に出なけりゃ行けなくてな。だが、我は忙しいのじゃ。だから、お前の契約精霊にしてこいつを楽しませてやってくれ」

「・・・分かった。だが、それだけか?俺を助けるのは」

「いいや、お前がピンチになったら駆けつけよう」

「サンキュー。じゃあ、取引成立だ」

**********

とても暖かい。これは何だろう?毛布みたいだ。

目を開けるとなぜかベットの上で、服は違う服に変えられていて腕にも包帯が巻かれてあった。

「知らない天井」

俺が一度でいいから言ってみたかったセリフだ。ベットから降りると立ちくらみがして、俺はその場で倒れた。すると、タイミングよくドアが開いてそこから女性が駆け寄ってきた。

「大丈夫?だめよ、無理をしちゃ」

綺麗な金髪でショートのお姉さんだった。

「ほら、横になって。あ、怪我してるじゃない!」

俺の膝には小さな擦り傷があった。

「だ、大丈夫です」

「だめよ、女の子なんだから。今治すから。”治癒ヒール”」

お姉さんは、魔法で俺の擦り傷を治してくれた。でも、魔法って間近で見ると凄いもんだな。

「はい、大丈夫」

「あ、ありがとうございます。えっと・・・」

「あ、自己紹介がまだだったね。私はレイル・グレンディア。一応、魔術師なんだ」

「そうですか。私は・・・」

本名言ったらマズイよな。仮にも命狙われてるし。

「私は、ノエル・ファーレンガルトです」

取り敢えず偽名を使った。

「ノエルちゃんか。よろしくね」

「はい」

とても、いい感じの人だけど油断は出来ない。

「ねぇ、ノエルちゃん。いくつか質問に答えて貰えるかな?」

「はい」

色々と質問された。どこから来たのか、何者なのか。

「・・・」

だんまりしているとノックが聞こえた。ノックをしたのは院長さんだった。

優しい顔をしている女性だった。

「ねぇ、私達はあなたがどんな人でも何もしないわ。何でもいいの、答えて貰えるかな?」

俺はこの言い方で確信した。この人たちは、無害だと。だから、俺は自分ことを話した。

「私の本当の名前は、ボルデット・フィリアンヌ。フィリアンヌ王の娘です」

2人はとても驚いた顔をしていた。俺はその顔をみて、続けた。

「私は家で暗殺されそうになり、城を追われました」

「それは本当なんですか?」

「はい」

院長さんは暗い顔になった。

「それは困難でしたね」

すると、レイルさんはひらめいた顔でこっちを見た

「院長、この子をここで預かりませんか?」

「え、駄目ですよ!ここにいたらまた、追手が来てしまいます!!」

「でも、行く当てがあるんですか?」

俺はその質問でうろたえた。

「そ、それは」

「分かりました。でしたら、私達がボルデットさんの保護者になります」

「でも・・・」

すると、レイルさんがニカッと笑って言った。

「大丈夫よ。いざとなったら、私達が守るから」

「そこまで言うなら、よろしくお願いします。でも、私の事はノエルと呼んでください。あと、他の人には男に思わせておいてください」

俺は深々とお礼をした。レイルさんは、「分かってるわ!」と言った。

「そういえば、ノエルさんはいくつなんですか?」

「私は14です」

「14となると、中等部2年生ですね」

「え?」

俺は意味が分からず、院長さんに聞いた。すると、院長さんは答えてくれた。

「あなたは、王立ビブリア学院に通うんですよ」

「でも、学院ってお金かかるんじゃないんですか?」

「いいえ、この国の孤児院の子供なら無料で通えるんですよ」

俺はちょつとビックリした。この国の国王は太っ腹だなと思うくらいだ。話によれば、学費免除、食費免除だそうだ。さすがに通学費は免除にならないらしい。あ、そういえば俺が転移した国の事を話してなかったな。俺が転移したのはロウデン王国。俺が元々いた国はフィリアンヌ王国だ。

「さてと、ノエル君。こっちにおいで」

「はい」

俺はレイルさんに呼ばれてみんなの前に立った。人数は20人位かな?いや、もう少し少ないか。

「今日からみんなの仲間になりました。ノエル・ファーレンガルト君です」

レイルさんが紹介してくれたので、取り敢えず自己紹介をした。

「初めまして。俺はノエル・ファーレンガルトだ。色々と分からないことがあるとは思うがよろしく」

俺はペコリとお辞儀をした。孤児院の子供は色々な年代がいた。高校生位の人から幼児まで。俺はあの世界では、高校生だったけど今は中学生。しかも、女になってるし。

最初に挨拶して来たのは、中学生位の女の子だった。

「私から紹介するね!私はレクト・キリアナだよ!13なんだ。よろしくね、ノエル」

「ああ、よろしく」

この子はとても活発そうな女の子だった。恐らく、社交的な性格なんだろうな。

「僕はレン・バルキュリア。よろしく、ノエル」

「あ、ああ。よろしく」

こいつは表情が硬いな。少しだが、苦手なタイプだな。

「それだけなの?レン、もっと表情を豊かにしないと駄目じゃん!ノエルが呆れてるよ?あ、私はリン・バルキュリアよ。私とレンは姉弟きょうだいなの」

なるほど、だから顔が似てるんだな。

そして、最後に挨拶をして来たのは耳が長いエルフだった。俺はエルフを見るのが初めてだった。(まあ、多分ほとんどの人が初めてだと思うけど)少し興奮したけど、驚かせないようにした。

「えっと、私はケイル・アスタリア。一応、エルフなんだ。よろしくね、ノエル君。あと、私はケイルで良いからね」

少しオドオドした姿が可愛らしく見えた。

「ああ、よろしく。俺もノエルでいい」

俺はやんわり答えて笑った。笑ったと言っても、少し口角を上げたくらいだ。すると、レイルさんを含めて目の前の孤児院の人達は顔を赤らめていた。

もちろん、院長さんも。俺、何か変なこと言ったかな?

「か、可愛い」

孤児院の1人が呟くように言った。すると、みんなで俺の事をまじまじと見てきていた。俺はそれが耐えられなかった為、勇気を振り絞って言った。

「な、何か俺の顔に付いているのか?」

すると、孤児院の皆は我に返った感じで目を覚ました。

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