第14話 期間

数日後、早速ルーシーが東国の新形戦車調査の報告書を提出してきた。

資料をコピーしてイマーズ君に渡した。

「やはり銅製のようですね」

帝国では、多くの製品が銅でできている。鉄の原料である鉄鉱石も帝国内で産出されないことはないのだが非常に少ない。その代わり…ということではないが、銅が多く産出する。よって、銅製品が多い。さすがに、大砲や拳銃は強度の問題から鉄を使うのだが、戦車全体に鉄を使用するということはなかなかできず、筐体の大部分が銅できている。


「で、主砲の弾丸は帝国で使用している一般的な弾丸を使用すればいいようですね」

「そうですね、こりでしたら北国で保有している弾丸が入ります」

「…あ!」と執務室にイマーズ君の声が響いた。

「どしました」

「報告書の35ページを見てください」

 私は、言われるがままに35ページを開いた。そこには、戦車のそう装甲についての報告が書かれていた。

「あら・・・・装甲が薄い手すねぇ〜。我々が使っている車と同じ厚さじゃないですか。もはや装甲ではないですね」



「イマーズ君では、ルーシー隊長に、対戦車部隊との効果的な対戦の方法を検討するように指示をしてください」とイマーズ君に伝えた。

「しかし、現在ルーシー殿は『極北からの攻撃隊する作戦準備』と『魔道師部隊の組織化』の任務も言い渡されていますが…」とイマーズ君は進言してきた。

 私は、「そうでしたね〜。とりあえず「対戦車部隊効果的な対戦方法」についての研究を重視して仕事をしていただきましょう。そして、その戦略に沿った部隊編成を構築するように指示をお願い致します。で、もしも北極からの攻撃があったら今まで通りの方法でお願い致します」と指示をだした。

「しかし!!」

「イマーズ君もねばりますねぇ。しょうがないです。イマーズ君には特別諜報員からの情報をお見せしましょう」といって、東国連邦庁に派遣している諜報員からの私(北国連邦長)宛の極秘資料をイマーズ君に見せた。

「これは!!」とイマーズ君の顔はみるみるあおざめていった。

「では、隊長に指示を出していただけすね」

イマーズ君は冷静に「わかりました」とだけ言った。

その報告書にはこう書かれていた。

『北国連邦長殿 宛 極秘資料 東国諜報緊急報告書』

一、東国ナーシ連邦長は帝国国外の武装集団に北国を攻撃するよう指示している模様

一、攻撃の目的は新形戦車の性能を実証し、引いては他国へ輸出し利益を得ること

一、貿易の利益にて借入金を穴埋めした後は、東国の武力に予算を回すこと


 やはり、火の車状態の東国は、戦車の実証実験をできないため、どこぞの武装集団をつかい、我々(北国)に攻撃させ、新形戦車の性能実験をさせていた。そして、この闘いをデモンストレへションとして活用し、戦車を他国に輸出しようとしていたとは・・・。ちなみに、他国に武器を輸出することは、帝国法で厳しく禁じられている。従って、東国の使用としていたことは「密輸」となるわけだが。

 ただ、ナーシもバカだ。戦車を渡す前に、我々は魔道師部隊を編成していたからはっきり言って戦車は無用の長物、ついでにあんな武器を輸出しようとしても買ってくれる国がいるかどうか・・・。その穴埋めは、帝国国内の他の3ヵ国と皇帝庁で行うしかない。

・・・または、「大赤字」の責任をとらせてナーシを首にしても良いのだが・・・おもしろくない。



「ルーシー隊長、報告ありがとう」

「戦車の装甲ですが、銅製のようでしたね。これは勝てるかもしれませんよ」と笑った。

ルーシー隊長とイマーズ君は「極北との闘いですか?」と問うてきた。

「いいえ、違います」と答えた。

「というと、敵は例の国ですか」と顔を曇らせながら言った。

 私は「そうなりますね」とだけ伝えた。

「あとイマーズ君、ちょっとお願いがあるのですが…」といって、小さな声で「ある」行動をとるように伝えた。

ルーシー隊長は気になったらしく

「何を指示したんですか?教えてくださいよ!なんですかぁ〜?」としつこく聞いてきたが、私は「秘・密・で・す」と伝えた。

「講堂ではずいぶんおちこんでいましたけど…いつもはお茶目なんですね」

私とルーシー隊長は笑った。

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