第12話 落胆
「結局、ウチケバですか」
庁舎の講堂を歩きながらつぶやいた。
私は、いつも灌漑に庁舎を歩き回るという癖がある。そして、いつもたどり着くのがなぜか、庁舎の講堂であった。いつもは、職員への訓辞、年中行事、市民との対話集会などステージに立つことしかないのだが、物事を考えているときは、決まって二階席の奥の椅子だった。
荒野からの攻撃に関しては、そもそも、われわれの諜報活動だけではらちがあくわけがありません。諜報活動で得ることができるのは、「情報」だけで、実効性圧力という面では皆無です。だからこそ、いざというときに、東国と北国は協力して、このような緊急事態に対応しなければならない。
「それなのに…」
これでは、連邦というレベルではなく帝国の国防自体に問題が出てしまう。
「近いうちに、東国の連邦長の交代も考えなければならないかもしれませんね…」とつぶやく。
「交代ね〜」と若い女性の声がした。声のする方向に顔を向けると、連邦職員ではない女性が立っていた。服装を見ると魔道師だろうか。
「あなたは、北国で雇っている魔道師ですかね?」
「そうですが。私は、政治のことはよく分かりませんが、今後も『情報』だけで行くの?」と挑発してくる。
「連邦ごとにそれぞれ役割を担ってきたわけですから、今更…」とつぶやくように言う。
「なに悄々して!」と叱咤してきた。
「ん〜」
「既存の役割はそのままにして、新規に追加したらいいのでは?」
「というと」とたずねる。
「だから〜」と少しいらつきながら続ける。
「良いじゃないの、諜報活動にプラスして、ちょっとした武力もつけても」
「っていっても武力は・・・」
「戦車…とじゃなくて、せっかく魔道師を雇ったんだから、彼らを使って恒久的に魔道師部隊をつくったら」
「そうですか」と私は肯定も否定もしなかった。
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