第10話 負債
「ナーシ東国連邦長からプレゼントが届きましたよ!!」と大声を上げながら執務室にイマーズ君がやってきた。
「そうですか、で、何が届きましたか」と冷静にたずねる。本当は、私も少々興奮していたのだが、一緒になって大騒ぎをしたら、さらにイマーズ君は興奮して、大パニックになるだけだ。
「それで何が届きましたか?」
イマーズ君は興奮して「戦車です」と答えた。
「では見に行きましょうか」
戦車は、人の目に触れない今は使われていない食料庫に置れていた。台数は2台だけであったが、巨大な主砲そして、合金でできた分厚い装甲…一つの町を破壊したり、極北の武装集団と闘うには十分な戦車であった。
「これは、見たことがありませんね。新型ですね」
「何でこのようなものを送ってきたのでしょうか」とイマーズ君は訪ねる。
「よく見てください。戦車の型番をみると『x』の文字があります」
「あっ!本当ですね。」
「x」とは、「試作車」ということを表している。本来であれば、試作車が各国に配属されることはなく、耐久試験など様々な試験を重ねた上で、各連邦に導入される。
2つ原因が考えられます。
「東国の諜報員に連絡を取って調査を実施してください。次の項目です」
①軍事大綱について
②東国の財務状況について
「軍事関係の計画を示した『軍事大綱』についてはわかりますが、財政状況についても調べるのですか?」と質問してきた
私は「はい。ちょっときになることがありまして」と答えた。どうしても、ナーシの会議後の『お話』の内容、試作車の洗車…きな臭い感じがしたのだった。北国か今回の一件で、いいように使われているのではないかと感じていた。
数週間後、イマーズ君がいつものように、興奮して、執務室に入ってきた。
「東国の諜報員から軍事に関する極秘資料が届きました」
「そうですか、見せてください」
資料はすでにイマーズ君の付けた付箋がいっぱいであった。
「この赤い付箋のついたページを見てください」
50枚ぐらいの資料だろうか、その資料のちょうど真ん中に赤い付箋がついていた。そのページをみると次の文章があった。
「新型戦車『x』についての施策試験につては、東国では実施せず、他連邦国に譲渡する形で試験を実施する。」との一文であった。
「やはり、自分たちで試験をせず、我々を人柱にしようとしていたようですね」
「東国の財務状況については?」
「白書を見る限りでは連邦債は他の連邦と同じようですが」
「連邦債」というのは、各連邦が発行する債券…つまり借金である。ちなみに、帝国が発行するのが帝国債だ。連邦債は、各連邦が自由に発行することができるわけではなく、各連邦の人口、産業、税収、国土その他諸々で決まっている。そして、5年〜10年で返済していくというものである。
「しかし、これを見てください」と、イマーズ君は東国の「極秘」と書かれた資料を渡してきた。
「これは、一時借入金の表ですね」
「一時借入金」これは、一年度の間に借りて返す…結局「借金」だ。しかし、帝国の制度上一年度単位でお金の借り貸しをするこの「一時借入金」は「借金」の扱いになっていないのが実状である。そして、借り入れの限度も決まっていない。
「年々増えていっていますねぇ〜。ん〜、俗物ナーシは、借金で借金をしていますね」
つまり、サラ金でお金を返せなくなって、別のサラ金で金を借りていている…っていう感じであろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます