やはり今更ガンバの冒険。そして、GAMBA

 ガンバの冒険を見た。

 何十年ぶりに見るだろうか。

 ところどころ覚えている場面が出てきて嬉しい。


 何十年ぶりに見るとというか大人になって見返すとこの作品の凄みというのがひしひしと伝わってくる。

 アニメーションという形を借りた何か別のものを見させられている気分だ。

 アニメーションというものの可能性をひとつここに感じざるを得ない。

 この作品がなければポールのミラクル大作戦はおそらく存在し得ないし、もちろんまどかマギカもない。

 おそらくは、カリキュラマシーンなどの影響を受けつつこういった表現に行き着いたのではないかと思えるが、実に不思議。

 しかし、リアル。

 背景に描かせたという海とガンバのファーストコンタクトシーンは本当に圧巻。何か異次元へでも行ってしまったような感覚に陥る。

 そして、一定ではない世界描写。そのどれもが絵画や浮世絵や絵本のような雰囲気を持っている。

 一見すると統一感のない世界になりそうだが、ポイントポイントをおさえてこういった場面にはこういった質感の絵を入れ込むことで、臨場感を出す。


 徹底したデフォルメ、省略もこの作品の特徴と言える。手前の景色と奥の世界の区切りすら曖昧化させているのが恐ろしい。

 きっちりとした描き込みをし、距離感、重さなどを正確に描く宮崎演出とは大違いである。

 宮崎駿はその分、どこかで手を抜くスペースを用意するが、これは逆に毎週30分、手を抜かざるをえないから生まれた独自のスタイルという具合だろう。


 その曖昧模糊とした世界の中でネズミたちはどこまでもリアルである。いろんな嘘を混ぜながらもこのネズミたち、他の動物たちの生態は本当に動物の世界にいるような気持ちにさせられる。

 人間も描かれてはいるが色もつけない。これは、おそらくバッタ君を意識し、その制作時点でできる最大限の表現方法だと思う。これは功を奏している。

 キャラクターもいい。

 すべてのキャラクターが、それぞれの関係と組み合わせでうまくやっている。


 ひとつだけいえることはCG版ガンバではこの作品は作れない。申し訳ないが遠く及ばない。

 予告編しか見ていないので、なんともいえないところではあるが、予告編第一主義者の私はそういい切ってしまおう。

 予告編に出てくるノロイが崖の上に立ち、多くのイタチを従えているところだけがこの映画の見所で、それ以外は問題外である。

 この作品のリメイクに必要なことは愛と勇気と友情ではない。それだけならなんとか王になりたいアニメを見ればいい。むしろそっちのほうが前衛的だし、愉快だろう。

 マインクラフトのネザーをプレイするのもいい。

 CGにはそういう使い道があるんだということを証明している。


 今回のCGガンバは、ただのCGアニメの粋を越えられない。

 いくら動こうと、いくら美しい世界を作ろうとアニメのガンバの描いた混沌とした整然は作りえない。

 それはもうただの美しいアニメだからだ。

 CGを使うのならば、CGでしか作り得ない現実には存在しない空や雲や海を描くべきだ。

 街の姿を作るべきだ。

 実写の手先に落ちたCGに最早アニメを作る資格はない。

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