微笑がえし

 キャンディーズの微笑がえしをおそらく初めてちゃんときいた。

 なんとすばらしい歌詞なんだろう。そしてあのメロディーなのだろう。

 阿木曜子の天才性が炸裂している。

 キャンディーズの歌のタイトルやそのモチーフを入れ込んだというのもさることながら、春一番が~ほこりのうずを躍らせてます。というあたりなど常人には出てこない。

 おかしくって涙が出そうというのも、そのあとにお別れなんですよというところの伏線になっている。そもそもこのほこりの渦からして不穏な空気の前触れになっているのだ。

 おそらくは、時期は2月か3月かそれくらい。若い二人は同棲していたのだろう。やんごとなき理由で別れるのだろう。決して喧嘩して別れるわけではない、合意の上で別れるのだ。その雰囲気をうまく伝える歌詞、そしてその不安定な少しだけあたたかくなり始めた空気を掴むようなメロディ。

 完璧すぎる。あまりに完璧すぎる歌だ。

 年下の悪魔的な魅力を持つ青年、ふたりは1年とそこに住んだか住まないかそれくらいだろう。引越しのお祝い返しも済んでないのだから。

 若い二人には時間は有り余るほどあったはずなのに、たった一年前後の話が5年も10年もの話に思えてくる。

 なくしたはずのハートのエースは箪笥の陰にあったけれどもおそらくトランプよりももっと楽しいことを見つけてしまったのだろう。

 人の噂も七十五日というから、大体3ヶ月くらいしたら人間なんて前のことを忘れてしまうのかもしれない。

 宮崎駿が、子供にはその瞬間瞬間がほかのものに代え難い大事な時間なのだと言っていたがまさにそれだ。


 おニャン子クラブのじゃあねは、おそらくこの唄をもっとわかりやすくしたものがモチーフだ。

 解釈の仕方がうまいなと思った。

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