第21話 ~海外逃亡執事~
ビリニュスについて行くとパーキングエリア内の道の駅の中に入っていった。
移動中に桃音ちゃんが気がついたのでビリニュスが降ろして近くの椅子に座って話を聞く事にした。
「朱火ちゃん……引いたよね」
「い、いや引いた訳じゃないけど」
「優しいね。朱火ちゃんは」
「そ、そう?」
「うん」
慣れていない褒め言葉は照れる。
「そういえば紹介がまだだったな。コイツは私の執事のビリニュス」
「はじめまして」
ビリニュスが桃音ちゃんに挨拶した。
「よろしくね。さっきは運んでくれてありがとう」
「いいんですよ」
「えっと、重くなかった?」
「いいえ。 軽かったですよ」
「そ、そう? 良かった……」
ビリニュスって意外と力持ちだからな。
「この子はアタシのパートナーのティラナ」
「改めて、初めまして」
「初めまして」
「初めまして」
ティラナが頭を下げると私とビリニュスも頭を下げて挨拶した。
……ザグレブの時と違い平和的だな。
ティラナの見た目はビリニュスよりも年下っぽく、人間で言えば中学二、三年といったところだ。赤い髪にピンクの瞳は今まで見た執事の中でも目立つ方だ。
黒い執事服はスーツというよりもネクタイ付きの西洋の軍服って感じだ。
「日本式の挨拶ってこれでいいんだよね」
「そうだよ」
ティラナが桃音ちゃんに確認している。そういえば海外から来たんだっけ。
「二人はどこの国から来たのですか?」
「台湾だよ。まぁアタシの場合、幼稚園まで日本にいたから『やって来た』って言うより『戻ってきた』って感じ」
なるほど。日本語が喋れるのはハーフだからってだけじゃなくて元々住んでいたのか。
「台湾って何処にあるのですか?」
ビリニュスがとんでもない事を聞いてきた。
「知らないのかよ!」
「日本以外の国はあまり知らないのです。人間達の世界で暮らしてまだ半年しか経っていませんから」
そういえばそうだったな。
「沖縄は知っている?」
「はい。日本の一番西にある県ですよね」
日本の事は知っていたか。
「うん。そこからさらに西行った大きな島が台湾だよ」
「なるほど。ありがとうございます」
理解してくれたみたいで良かった。
「あのさ、さっきの自己紹介できになったんだけど」
ティラナが質問してきた。
「『執事』ってどういう事? パートナーじゃないのか?」
私とビリニュスは椿姫と戦った事についてすべて話した。
「そ、そんな事が……」
「朱火ちゃんスゴイ……」
二人は驚いている。まぁそうだろうな。
「オレも最初は蟲をバラ撒く手伝いみたいな事をしていたんだけど嫌になって抜け出したんだ」
「それでも見つかるんじゃないか?」
今度はビリニュスが質問してきた。
「オレもそう思ったから外国行きの飛行機の荷物の中に隠れたんだ。日本以外だったら見つからないと思って」
こいつは海外逃亡と不法入国をしたのか。
「そして着いたのが台湾だったんだ。そこでいろんな所を歩き回っていたら蟲にとり憑かれたねーちゃんを見つけたんだ」
「そこでティラナに浄化してもらったお礼として、アタシはメイドになって働く事にしたんだ」
「そうだったんだ」
桃音ちゃんもとり憑かれた事があるんだ。
私もビリニュスと出会う前にとり憑かれた事があるみたいだが自分で克服した為、何時の出来事なのかもわからない。
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