第20話 ~桃音の叫び~
「やっぱり桃音さんでしたね……見てはいけないところを見てしまいましたが」
「ああ……何だか申し訳ないな」
私とビリニュスの周りに虚しいような空気が漂い始めた。
桃音ちゃんのメイド服は私とはまた少し違ったメイド服だった。
形はメイド服だが見た目は赤いセーラー服に近い。その上に白いエプロンを着ているのは私と変わらないが。
「何を訳のわからない事を言っているんだ!」
「桃ねーちゃん。やっちゃって!」
「わかった!」
桃音ちゃんがステッキを両手で掴み、自分の前に持ってきた。
「いっくよー!」
桃音ちゃんは一回転した。
「ジョーカ!」
ステッキのハート部分からピンク色の小さなハートが大量に出てきた。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
運転手は大量のハートに包まれた。
桃音ちゃんと執事は周りを見渡し始めた。
見渡し終わると……こっちへ向かって来た!
「朱火さん! どこか隠れないと!」
「そ、そう言われても」
他に隠れる場所が無くてここに隠れてたのだ。他の隠れ場所なんか見つけられるハズがない!
「……え?」
とうとうこっちへ来てしまった。
「やぁ……こんな所で会うなんて意外だね」
「あのさ……見てた?」
桃音ちゃんが震えながら聞いてきた。
答えづらいが正直に答えた。
「……うん」
「……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
答えると顔を真っ赤にして蟲にとり憑かれた人並みの悲鳴を響かせた。
「あ、あのさあ! 誰にも言ったりしないから気にしないでよ!」
「朱火さん! 逆効果です!」
「そ、そうは言っても……」
桃音ちゃんは動かない。相当ショックだった事が言われなくてもわかる。
「ね、ねーちゃん! しっかりして!」
執事が桃音ちゃんの体を揺さぶっているが全く動じない。
「何て事するんだよ! ねーちゃんが動かないじゃないか!」
「し、しばらくすると動くと思うぞ」
「そういう問題じゃ……」
「桃音ちゃーん♥ そこにいるのかーい?」
「!?」
運転手が目をハートマークにしてこっちに向かって来た!
気持ち悪っ!
「ほら! 見つかったじゃないか!」
「あ、あの運転手どうしたの?」
ビリニュスが執事に聞いてきた。
「ねーちゃんに浄化された相手が男だと五分間、ねーちゃんにメロメロになるんだよ!」
何だそれ!?
「えぇ! どうしよう見つかっちゃうよ!」
「こうなったら逃げるぞ!」
執事が桃音ちゃんを引っ張って連れていこうとした。
「待って! 僕が運ぶよ」
「へ?」
ビリニュスが桃音ちゃんをお姫様抱っこした。
「え! ちょ!」
「さ! 早く逃げるよ!」
ビリニュスにつられ、私と執事は一緒に逃げ出した。
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