第10話 ~深夜の空中移動~
午前三時。
誰も起きないような時間を狙って行こう、とビリニュスが提案してきたのでこの時間にツバキに会いに行く事にした。
私も起きやすいように、いつもより早く寝てビリニュスに起こしてもらった。目覚ましをかけると私以外の家の人が起きてくる可能性があるからだ。
起きてすぐにメイドに変身し、朝と同じくベランダからビリニュスにつかまって住宅地の屋根を転々と駆け巡った。
そう、つかまって。
「あのさ……」
「何ですか?」
「なんでこうしないといけないんだ?」
私は今、ビリニュスを後ろから抱きついて移動している。
人から見えない点ではいいのだが、抱きついている身としては恥ずかしい。
「朱火さんはまだ飛べません。我慢してください」
「まだって事はいつか飛べるのか?」
「訓練すれば飛べるようになりますよ。僕もそうでしたし」
「じゃあ帰って寝て起きたら特訓だ!」
「張り切っていますね」
当たり前だ!
いつまでもこんな恥ずかしい格好で移動なんて御免だ。それに便利そうだし。
「着きました」
ビリニュスが止まったので私はつかまっていた両腕を放した。
移動している時はビリニュスの背中しか見ることができなかったので何処に向かっているのかもわからなかった。
ここは何処だ?
場所を確認しようと辺りを見回した。
どうやら私とビリニュスは今、大きな建物の玄関の前にいるみたいだ。
どんな建物か見上げてみると形からして学校みたいだ。
「ビリニュス。ここは何ていう学校だ?」
「ここは紅雲高校という学校です」
「紅雲高校か……」
「知っているのですか?」
「地元の高校だし。中学の同級生の半分くらいは行ったかな」
「どうして朱火さんは行かなかったのですか? 今通っている高校よりも近いじゃないですか」
「行きたいと思わなかったから」
「どうしてですか?」
「そんな事いいだろ。それよりここで止まったって事はツバキがここにいるのか?」
「はい。最近はこの街に拠点を置いていて紅雲高校の理事長室で深夜、僕達執事に使命を与えてくれるのです」
深夜の学校に『見える人にしか見えない奴』がいるなんて、もはや完全に幽霊だな。
「中にはどうやって入るんだ?」
「今この建物全体にツバキ様のお力が働いているのでメイドと執事は扉を開けなくても中に入れますよ」
私もとうとう幽霊みたいになってしまった。
「さあ行きましょう! 我が神、キサラギツバキ様がお待ちです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます