第9話 ~ビリニュスの過去~
自分の部屋に入ってきて時計を見たら六時半だった。
見知らぬ男の話に一時間以上も付き合わされて疲れてしまった。
自分の部屋のベランダから家に入り、すぐに二度寝しようと布団に入った。
……眠れない。
私の体は完全に起きてしまったみたいだ。
「朱火さん寝ないのですか?」
布団に入っても目を開けたままの私を見て不思議に思ったのかビリニュスが訊ねてきた。
「なんか眠れないからこのまま起きてる。そうだビリニュス、昨日言っていた事で聞きたい事がある」
「何ですか?」
「お前の仲間の事」
「!」
ビリニュスが私の言葉を聞いた途端、少し落ち込んだ様子になった。
「あまり話したくなさそうだな」
「はい……僕、仲間外れにされたんです。たった一言言っただけで」
「なんかあるよな、そんな理由でハブられる事。なんて言ったんだ?」
「『人間は下等な動物じゃありません!』と」
「……どういう事だ?」
人間は下等な『動物』?
『生き物』ならわかるが『動物』なんて初めて聞いたぞ。
「実は……ツバキ様は人間を見下しているのです」
いい人じゃなかったなかったんだな。ツバキって奴。
「何で見下しているんだよ?」
「ツバキ様は『人間は自分の事しか考えていない愚かな連中だ。自分だけ良ければ他はどうでもいい。人間は常にそのように考えている下等な動物だ』とよく言っていましたので」
腹が立つな!
「人間全員が自分勝手じゃないぞ」
「僕もそう思っています。だからこそツバキ様に勇気を出してその事を伝えたのですが……」
「それでハブられたの……」
結構苦労しているんだな。ビリニュスって。
「はい。でも後悔はしていません。自分の意見を言えて良かったと思っていますよ」
「それでいいんだ」
意外と度胸あるんだなコイツ。
気弱な性格だと思っていたから意外だ。
ん、ちょっと待て!
「なぁビリニュス。ツバキは今お前の事どう思っているんだ?」
「……あまり考えたくはないのですが裏切り者と思っているでしょう」
「そんな状態で私がメイドになる前からお前が見えた原因を聞く事なんてできるのかよ?」
「会ってみなくてはわかりません」
「なんで昨日行かなかったんだ?」
「朱火さんが疲れている様子だったので」
「何でお前の用事に私が出てくるんだ?」
意味がわからない。
「僕も今日思い出しましたが、新しく執事やメイドが加わると直接連れてきて紹介しなければいけない決まりがあるのです」
私もツバキに会わないといけないのか。
「……わかった。聞きたいこともあるし」
「わかりました。今夜ご家族に見つからないように行きましょう」
「よし!決まりだな」
今夜か。
人間を見下すような奴なんてどんな奴なんだろうな。
会ったら人間代表として文句の一つや二つ言ってやる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます