第4話 ~衝撃の再開~ 

ビリニュスは私をあのままお姫様抱っこしながら校内には入らずに校門の端の方に降ろしてくれた。私が礼を言うと、ビリニュスは、こちらこそ、と言い残して元来た道を今度は歩いて帰って行った。

 玄関で上履きに履き替えて自分の教室の扉を開けると案の定、注目の的となった。

 私以外の生徒が教室で担任の話を静かに聞いている時に突然後ろの扉が勢いよく開いたのだ。誰もが驚くであろう。

 道に迷っていなければ遅くても8時30分頃に着いていたはずだが、時計を見ると8時50分だった。

 しかし担任は、私が予定より十五分以上も遅れた理由については聞いてこなかった。電車が台風で止まった事は知っていたが、何分遅れたかまでは知らなかったのだろう。

 それからは下校途中まで何事も無く授業初日を過ごし、下校時間になったため、駅に向かって帰る事にした。

 授業初日からクラスで目立ったけど、それからは何事も無くて良かった!

 さて、もう道に迷わないぞ!

 同じく駅に向かっている生徒に付いていけばいいからな。

 ドガッ

 調子に乗るな、とばかりに私の左上半身に固い物が飛んでぶつかってきた。

 あまりにも唐突だったので受け止める事はできなかったがコンクリートに両手を付けてなんとか痛みを抑えることができた。

「何なんだよ今日は!」

 起き上がって下を見てみると見覚えがある人物が倒れていた。

「痛た……」

 ビリニュスだった。だが。

「そんなボロボロになってどうしたんだよ!?」

「はっ、朱火さん! 早く逃げてください!」

 ビリニュスは私の顔を見るとものすごく焦った表情で私に言ってきた。

「一体どうしたんだよ!? 何が…」


「ううぅ……」


 突然ビリニュスがぶつかってきた方角から唸り声が聞こえた。

 その方角を見ると二十代くらいの女性がビリニュスをものすごく睨みつけていた。

「あ、あの、もう少し待ってください。すぐに元に戻りますので、もうしばらく…」

「うがあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 まずい! こっちに襲い襲い掛かってきた!

 私はビリニュスを抱きかかえて女の襲撃を避けた。

「おい! あの女に一体何したんだ!」

「いや、あのようになったのは僕のせいではなくて」

「じゃあ何でお前を襲ってきたんだよ!」

「わぁああ! 朱火さん! 前前!」

 ビリニュスとの会話に夢中だった為、女の方を見ていなかった。

 今度はターゲットを私に絞ったのだろう。私をさっきのビリニュスと同じように睨みつけながら襲いかかってきた。

 私は何とか女の両腕を掴んで少しだけ動けなくした。

「すごいです朱火さん!」

「まあな。力には自信がある!」

 喧嘩で鍛え上げて、ついには『喧嘩女王』と呼ばれたくらいだからな!

 だがおかしい。

 女は捕まえられた両腕を放そうと私の両手を振り回しているが、この感じ……まるで普通の人の倍以上の力だ。

「うがああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぐっ……」

「朱火さん!」

 ウソだろ!

 握力両手平均四十五の私ですら抑えきれない。

 女は私が全力で抑えている両腕を振り払った。

「大丈夫だ! だが力ずくは無理だ。どうすれば……」

 悩んでいる暇なんて無い。

 女は休む暇さえ与えず、私に襲い掛かって来た!

 ドンッ ドサッ

 何事かと思ったら、いきなりビリニュスが女に突進すると、そのまま一緒に倒れて全身を使って女を押さえつけた。

「朱火さん。これを指にはめてください!」

 ビリニュスが右手で小さい何かを私に向かって投げてきたので、すかさず私は受け止めた。

「ゆ、指輪!?」

 それは銀色の輪の上に赤いダイヤが付いている指輪だった。

「はめてどうするんだよ!」

「どの指でもいいのではめてください! そうしたらこの女性は助かるかもしれません!」

 訳がわからない。

 だが他に方法が思い浮かばない以上ビリニュスの言われた通りにするしかなかった。

 ……とりあえず右の薬指にはめようとした。

 き、気のせいか!?

 指輪が勝手に私の薬指の大きさに合わせて大きくなったような気がしたが、とにかく急いでいるので最後まではめた。

 最後まではまると、同時に指輪が赤く光り始めた。

 ピカッ

「うわっ!」

 眩しい!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る