第28話 たまには、いいものを…

 新年ということで、彼女が何年も前から行きたいと言っていたレストランへ行くことになった。


 相変わらずの偏食&小食…。

 ステーキ頼んでおいて、牛肉のシチューを頼もうとする。

「えっ?牛肉ばっかだよ…いいの?」

「…ん?…そうだね…トマトスープにしようかな?」

「えっ?トマトだよ、大丈夫?」

「トマトか~…じゃあチキンのクリーム煮で」


 考えてるようで…深くは考えてない…。

「美味しい…美味しい…」

 と一生懸命食べる彼女を見ていると子供のようだ…。

 口の周り…髪の毛にソースを付けながら…一生懸命食べている。

 いいんだ…慣れた。

 とりあえず…口の周りを拭かせて、食事を続ける。

「そろそろアイス…呼ぼうかな」

 僕が無言で手を挙げると、ウェイターがテーブルに付く。

 それが不思議だったようで、手を挙げると来るの?と僕に聞く。

 うん…まぁ…大声で周りのお客さんの会話を邪魔しないようにね、と答えると

「アタシ、すいませ~んって言うトコだったよ」

 うん…さっきそうしてたから…僕が呼んだんだ…。

「定食屋じゃないしね…」

「ピンッての無いしね」

 ピンッてファミレスにあるブザーだ…ジェスチャーで解る。

「無い場合は、ウェイターさん呼んでいいんだよ」

「ふぅん…」


 場馴れしてそうでしてないのだ。

 顔は可愛い…美人だ…中身が『通』に近しいのが残念でならない…。

 だが…そんな彼女が好きなのだ…ある意味、自然体。


 食事を終えて、彼女のタバコに付き合う。

 僕は吸わないが…ホテルのパンフを読みながらタバコを吸う彼女。

「カワブタフェア?ってナニ?…フグか…」

 僕が答える前に気づいたようだ。

 一応、読めるんだな…。

「写真があるから…フグだと解った…」

 読めなかったのかな…やっぱり…。


 貧乏だけど、たまには、こういうところで食事しようね。

 今年も…。

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