第14話 馬鹿が豆持ってやってきた

 会社から帰宅して、夕飯を食べて、風呂からあがると。

 メールが5件。


『オヤジが枝豆採ってきたから、これからお前の家に届けるわ』

 17:34分………現在18:40分…着いてるじゃねぇか!


 慌てて電話をしてみる

「おう、枝豆持って、今着いたわ」

「今って、俺は今、風呂からあがったとこだよ」

「待ってるわ、ドンキで」


 髪乾かす暇もねェ……。

 ハゲている『通』と違うのだ、自分のものさしで考えないでいただきたい。

 私は金がないから美容室代をケチっているため、良く伸びてるのだ。


 ビシャビシャの髪のまま、パタパタ雨降る夜にハゲに会いに行く。

(なんか…めんどくさい)

 なんだろう…有難迷惑。


「着いたぞ」

 ビシャビシャの髪だ、外にでたくない、車を裏手の駐車場に停めた。

「どこだ?」

「いや…裏手に停めた」

「裏?どっち?」

「倉庫の入口側」

「ケンタの方?」

「それ正面」

「あ~パチンコ屋の方?」

「いやだからそれ正面でしょ」

「ラーメン屋があるけど…」

「目に映るモノ全部言うな、お前が居る場所が正面玄関だろバカ!」

「あ~そういうことね…俺、正面に居るけど」

「だから裏に回れって言ってんだろバカ!」


「おう…コレ持ってきた」

「ありがとね…でも急に来ないでくれる」

「おう?」

「俺が仕事中だったらどうするつもりだったんだよ」

「オヤジがさ~急に枝豆採ってきたからさ…」

「せめて連絡着いてから来いよ、俺、最悪9時頃まで残業あるんだよ」

「いやいや…まぁ怒るな」

「怒ってねェよ…悪いだろ?お前にも」

「そうか…まぁでも…待つけどね…」

「待つなよ…俺も困るし」


「まぁ、ありがとう…でも連絡はよこせ、いいな」

「解った、解った…明日仕事だから帰るわ」

「そうしてくれ…風邪ひきそうだわ俺」


『通』は帰って行った…俺に枝豆を届けるために隣の市までやってきた。


 私は思い出す…いつぞや枝豆を貰ったときは…一晩、車に置きっぱなしにしたら、

 車内に青虫が這いずりまくっていたという悪夢を……。


 取り急ぎ、家に帰ろう。

 枝豆…美味いのだ。

 ありがとう。

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