第13話 国家権力に怯える

「警察が張ってるね」

「…………俺かな?……」

『通』が真顔で言う。

「お前なんかしたの?」

「俺がってわけじゃないけど…今…県知事が大変じゃん?」

「はっ?」

「俺…あんな問題、15年前から知ってたからね……」

「はぁ~」

「やばいんだ…こんな情報持ってるなんて…」


 ヤバいのは『通』の頭だ。

 誰から何聞いたんだろう?


「で…警察が、お前を探してんの?」

「俺がスマホにしない理由知ってる?」

「金がないから」

「居場所が解るから…あと…個人情報、抜かれるから」

「お前の個人情報って、そんなに価値あるものなのか?」

「あぁ……」


 亡国のスパイ以上に過敏だよ。


「お前から抜かれて困るのは、髪の毛だけだと思ってたよ」

「お前もスマホなんか持つな!俺の情報が…」

「俺のスマホの、お前の情報…ハゲ画像と携帯の番号だけだが…」

「俺の顔写真か……消してくれないか」

「この画像か…もっとハゲを強調したショットを撮らせてくれるなら消してもいい」

「警察も必死さ…」


 警察が、その気になれば数十分でお前は捕まると思うが……。

 面白いから、もう少し付き合ってみよう。


「警察を必死にさせるほどの情報なのか?」

「ロシアとの…その…交流を妨げかねないような…アレだ…」

「交流…微笑ましいな……国交レベルじゃないならOKだ」

「こっこう?ってナニ」

「国家単位での交流だと理解しろ」

「それだ!こっこうだ」


 そろそろ飽きてきた…イライラしてきた。


「今の県知事誰だっけ?」

「県知事?」

「お前が心配してる県知事、名前なんだっけ」

「……………」

「I氏だ!県知事の名前くらい言えろよバカ!警察がフリーター追うのに検問張るか?」

「お前は俺が何物なのかシラネェんだ!俺は…」

「農家の息子で、フリーターだ」


「爺さんが死ぬ間際に言ってたよ…死んでも政治家にはなるなって」

「先祖代々バカなんだな…遺伝だろう…お前でバカのスパイラルを止めて欲しかったよ…俺は」


 若年性痴ほう症……遺伝的に小さい脳が、さらに委縮したのかもしれない。

 いよいよ医者に診せるレベルに踏み込んでいるような気がした。


2016年 夏。

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