第12話 今日も米買った

「えっ?30Kgが7つ欲しいの?」

(先に言ってくれよ…そもそも車に乗らないよ)

「一度にじゃないでしょ…さすがに」


 肝心な情報が抜けていた。

 しょうがないので、電話して確認する。

「おう…大丈夫だ」

 なんかOKらしい。

 とりあえず、もう30kg取りに行くことになった。


「ところで…昨日のDVD観たか?」

「あ~観た」

 昨日、DVDを2枚渡されたのだ。

 いらんと言ったのに、強制的に。

「お前に観て欲しいんだ、お前に必要なんだ」

「いや大丈夫…間に合ってる」

「先祖とは何か?神とは何か?考えて欲しいんだ…必ず、学ぶべきことがあるから」

「先祖は山賊で…神を名乗る者は詐欺師、だと思ってる」

「違うんだ!そういうことじゃないいだ」

「俺はソレでいい…」

「お前の周りで変なコトばっか起こるだろ?先祖霊がなにか訴えてんだ」

「大丈夫、気にしてないから」

「気にしてくれよ、なんか伝えたいんだ」

「トイレに鍵かけたり…ピンポンダッシュしたりするような先祖、礼儀を弁えて欲しい」

「なんでそうなんだ…お前には心の闇みたいなもんがあるんだ」

「いいよべつに…闇でもなんでも…」

「金とか名誉とか、そんなのばっか求めるからダメなんだ」

「なんで?金欲しいもん。他人から尊敬されたいもん。」

「なんで、皆と同じ方向に行けない?」

「知らないよ…別に外れてるつもりないよ」

「大事なことなんだ…みんなと一緒ってことは」

「お前が人と同じだと思うなよ!フリーターは一般的じゃないからな」

「俺の会社では普通だよ」

「お前の会社?アルバイトが会社語るな…恥ずかしいぞ…バカにされるぞ」

「俺のことをバカにするような人は会社にいないよ」

「違うぞ…お前が普段、会話してるのはシルバー人材の爺さんだけだからだ、彼らは現役を退いて余力で働いてるんだ…現役のお前と違うんだぞ」

「俺は、お前に俺みたいに協調性をもって社会に貢献してほしんだ」

「お前が何貢献してんだ?社会とやらに?草むらで立小便するような無秩序な輩が協調性とか言うな!」


 かくして強制的に2枚のDVDは車に放り込まれたのである。

 タイトルだろうか?

『ゼン』『大将』と汚い字が、また興味を削ぐ。

「観たか?」

「観た」

「そうか!どうだ?なんか感想は?いい映画だろ?なっ?変わっただろ?」

「ワシャワシャワシャワシャ~ってしてた」

「ワシャ?」

「うん」

「どういうこと?」

「最大倍速で観た。そしたらワシャワシャワシャワシャ~って動いて終わった。もう捨てたい…棚にすら入れたくない…」

「俺が何度も何度も観てる映画だ…」

「俺、貰えるならジュラシックパークがシリーズで欲しい。Tレックスって羽毛生えてたんだって知ってた?」

「知らない」

「最新の復元CG鳥感増してるよ」

「鳥?恐竜が?」

「進化系統図で鳥類って恐竜に含まれるよ…知らないの?」

「知らない」

「恐竜ってさ~そもそもね…」

「もういい…」

「DVD捨てていいの?」

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