奇人の磁力は馬鹿を引き寄せるようで……。

第11話 米買った

　妹に頼まれて『通』から米を買う。

　昨日、妹にLineを送ると

「ありがとう」

　と一言返ってきた。

「ありがとう」って…ただじゃないんだよ…、お金貰えるんだよね？

　聞き返せない自分の安いプライドが恨めしい。

「おう！米持ってきたぞ」

「あぁ悪いな、1万渡しとくわ」

「おう…いやいや…後でもいいんだけどな…」

「いや…積んだら帰るから」

「えっ？まぁ、俺の車乗れよ」

「えっ？なんで？どこ行くの？」

「いいから乗れよ」

　車に乗せられた。

「で？ドコ行く？」

「はっ？帰りたい」

「まぁ…少し話そうぜ」

「別に大丈夫…帰りたい」

「なんか話せ！」

「冷めたピザ…2週間連続で食った」

「なんだそりゃ？変わってるなお前…」

「いや…俺も不本意なんだが」

「俺なら、そんな女、ガツンと言ってるやるね」

「うん…さすがにあの食事には、付き合えそうにないんだよ」

「そうだろ～、お前も相当変わってるけどな…その女、頭おかしいよ」

「お前と似たとこあると思うよ…お前らが付き合えば上手くいくんじゃないかな」

「いやいや…そんな女、顔も見たくねぇ」

　その後、そんな話をしながら3時間ほど、通の車でドライブしたのだ。

「へぇ～、じゃあお前、嫁さんのこと好きなの」

「好きだよ、恋してる」

「はっ？結婚して20年だろ？恋してんの？あの奥さんに？」

「してる…俺はな！でもカミさんは、相手してくれない…」

「最近？」

「いや…結婚して2年くらいしてからかな」

「それでも好きなの？」

「好き！でも全然、相手してくれない」

(あの奥さんをね～俺は無理だな～)

「ちょっとスーパー寄る」

「あぁ…いいけど」

「弁当半額だぞ！まじか！」

(テンション高いな～)

「おお…パンも半額だ」

(今、俺にパンを見せるなよ…思い出して機嫌悪くなる)

「食パン買おうかな～」

(食パンだぁ～あ…ピンポイントで逆鱗刺してくるなコイツは)

　まぁ…安いな～この弁当120円ってこと？

　彼女の1食5000円とは大違いだ…。

　餃子10個で80円になるの？

　アイスより安いよ。

　なんだろう…泣きそうだ俺…。

　買い物かごを持って、お惣菜コーナーを、うろうろする通の後姿。

　なんだろう…冷めたピザ1000円って…俺…生きてるのが嫌になってきた。