第6話 視られてる気がするんだが

「なんかさ~最近、視られてる気がするんだ」

「そうか…じゃあそうなんだろ」

「やっぱ、そう思う?」

「うん、うん、間違いない」

 通が他人からの視線を異常に気にするのは昔からである。

 神経症とかではない。

 ただの自意識過剰だ。


「時折、こう…噂されてるような声が聞こえるんだわ」

「あ~幻聴的なアレ?心霊的なアレ?」

「いや、そういう類じゃねえんだ、俺は、お前と違って、先祖大事にしてっから」

「そう…なに街でとか、そういうこと?」

「まぁそうだな…あの人ヒソヒソみたいな」

 まぁ…行動おかしいからな~、服装も変だし、思い当たる節が多すぎるな。

「へぇ~、じゃあそうなんじゃない…なんか目立ってるんじゃない」

「帽子は被ってるんだ…あっ!新しい帽子買ったの俺!」

「どうでもいいよ…お前、ハゲ隠しに帽子被ってんだよな?」

「最近は変装、俺だってバレたくないの」

「お前…誰かにバレると問題あるの?」

 何を怯えてるんだろう…下手な芸能人より身バレに気を付けているようだ。


「ネットとか怖いじゃん」

「あ~、変な人NOWみたいな…」

「なに?それ?」

「いや、ほらネットで拡散みたいな」

「あ~うん…そんな感じ…あの人だよみたいなこと言われてる気がするんだ」

「挙動不審だから…」

「違うよ!お前のせいだよ!」

「はっ?なぜ俺?」

「お前、ネットで俺のこと小説にしたじゃん、アレからだよ、絶対ソレだよ」

「お前の身バレしないように書いてるよ、住んでる地域も年齢も」

「わかんねぇよ!だってネットからお前のスマホ辿って、俺の携帯に…みたいな…GPSで」

「お前、ガラケーじゃん……」


「なんか怖いんだよ……皆が俺のこと噂してるようで」

「それは、お前の服装とか…言動とか…容姿とか…特殊思考じゃん、だからじゃない」

「変なの俺?」

「いや~今さら気にするなよ、お前は変だよ…おかしい人だよ」

「そうなの…安心したわ~、いや~身バレしてんのかと思ってさ~家族とかもいるじゃん…そっか、俺の行動がね…良かった、ホントに良かった」


「あ~良かったな…安心しろよ、俺、お前と特定されないように、これからも書き続けるよ」

「おう!書け、面白く書け」


大丈夫である。

天然素材で充分、美味しくいただけますよ、お前の言動は。

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