第4話『ね』と『ぬ』

 日帰り温泉の帰り、通が野菜をたくさんくれた。

 わざわざクーラーボックスに入れて、自分の家で育てた野菜。


「悪いな」

「おう!気にするな」


 その夜、さっそくキュウリとトマトを美味しくいただいた。

 そして、通からメールが届く。


「もういい年だ

 今でも疲れやすいのに、

 親はもっと疲れているのかなぁぎらいの気持ち日々湧いてくる今日この頃

 我々はどうかまぁサラリーマンだって後20~30が関のやまかどんな仕事も世の中にとって尊いんだな。製品であれば、使った人が喜び幸せが広がれば嬉しいな、ながら仕事を通じて社会対しての貢献してますね。以上

 疲れたから寝る」

 原文まま。


 もし同じ内容を私が書くならこうだ。

「お互いいい歳になったな、最近疲れやすい。

 両親も年老いていくのだと季節ごとに実感する日々だ。

 最近、自分の仕事が少しでも人の役にたっているのかと考えてしまう。

 お前はどうだ?

 あと、30年仕事に誇りを持てるか?

 続けることで、それがどんなに僅かでも、社会に貢献してると思えるような仕事、そして生き方をしよう。」


 こんなように書くだろう。


 ローマ字入力ではないのだろうか、『ね』が『ぬ』?

 句読点、改行、『微量ながら』って『微力』じゃないのか…そしてなぜに私に問いかける『?』多くない。

 全体的にイライラする文章なのである。

 外国人の日本語というか、翻訳機の変換というか、解るんだけどイラッとする。


 なにが一番イラッとするって……。

「温泉入って、疲れをとるんだ桜雪、お前は考えすぎるんだよ」

 と頭に毛は無いくせに、背中に毛を生やした男に薦められて温泉に行ったのに、

 疲れがとれるからって言ってたのに……。

寝る」の一文である。

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