怖い?話

仁志隆生

怖い?話

「う~ら~め~し~や~」


「……」


「う~ら~め~し~や~……あの~、怖くないんですか?」


「いや、一瞬は怖かったけどさあ、こんなふうにオーソドックスに出てくる幽霊もいるんだなと思ったら冷静になっちゃったよ」


「まあ、私はオーソドックスかもしれませんね。えっと、その言い方だと今までも何度か幽霊見たことあるようですが?」


「うん、俺仕事で夜中にとあるスーパーの機器点検してたことあるんだけどさ、店の中歩いてたら横から黒い影が歩いて来て通り過ぎてったんだ。あれはビビった」


「ああ、そういう奴もいますねえ。で、他には?」


「これは子供の頃の話だけどね。夜中にふと目が覚めたら部屋の中を白い着物着た女の人が通りすぎてったんだよ。でもその時は隣の家のお姉ちゃんがうちに勝手に入ってきたのかなあ、なんて今考えるとアホな事を思ったよ」


「まあ、小さい頃はそんな事よくわかりませんもんね」


「そうだよねえ、後になってビビったもん」


「後でだとちょっと。すぐ怖がらせることができればいいんですが」


「あ、それなら直接姿見せないとか声や音だけでやってみるってのは? 俺さ、何度が何もない所でいきなりはっきりと笑い声が聞こえてきて怖くなった事あるし」


「ほうほう」


「あと出張でホテルに泊まった時に部屋中でパチパチってラップ音が鳴った事もあった。あ、テレビに白い影写ってた事もあったなあ」


「へえ~」


「あと金縛りも……あ、これはただ動けなくするより首でも絞めてやった方がいいよ、昔ね、早起きしなけりゃいけなかった朝に『あともうちょっと』と二度寝したらいきなり金縛りにあって首絞められる感じになってさあ。『うわああ! 起きる起きます!』って思ったらスッと金縛りが解けた。いやあれマジで怖かったよ」


「それはまた凄い起こし方をする守護霊様ですねえ」


「そうだな。まあやり方はともかく起こしてくれたのはありがたかったけどね」


「そうですか。あの、他には?」


「う~ん? これはちょっと違うかなあ?」


「どんなのですか?」


「あのね、人形の髪が伸びるっての」


「それは科学的に証明されていますが」


「そうだけどさ、それって何度切っても元に戻るもん? 昔うちにあったリ◯ちゃん人形って何度も散髪してたけど」


「さあ? 私にはわかりません」


「う~ん、駄目かこれは。じゃあ黒の使者Gの大軍に食われるって夢見せてやれ、これなら怖いだろ?」


「私が失神しますよ、それ。でもやってみようかなあ。命懸けで」


「命懸けって、あんたもう死んでるじゃんか」


「あ、そうでした。ハハハハハ」


「ハハハ。あ、もうこんな時間か」


「あ、すみませんね引き止めて。それでは失礼しました」

 

 そう言って幽霊は消えた。



「しかし幽霊とこんな話するなんてなあ。人生何があるかわかんねえや」






※ この物語は幽霊との会話と黒の使者Gの事以外はほぼ実話。

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