第21話
鳥助の
硬く、速く、デカイやつの突進だ。だが、飛べるという事は……
思考の間に鳥助が間の前に迫っていた。踏みつけようと前脚を大きく上げ、奇声をあげながら俺を圧倒する。
ドンっと地を揺らす衝撃と、大きく凹む地面。鉤爪と鉤爪の間に身を逃がすことによって何とか回避した。
奴が脚を上げる前に、丸太の様なぶっとい脚をがっぷり四つで抱きかかえる。
「はあどっこいしょ!!」
掛け声とともに全身に力を込めた。手の甲の紋様が光り、力が満ち満ちてきた。
「キャラララルル」
一瞬鳥助の体を持ち上げられた。やはり、硬く、速く、デカイが軽い。この力があるとはいえ、飛べる体が重いはずあるまいと睨んでいたが、全く予想通りよ。
更に力を込める。そして、このまま、叩きつける。
爆弾の破裂した様な音をたて、爆弾が落ちたかの様な陥没が生じた。叩き付けられた鳥助は白目を剥いていやがる。ざまあみろ。
このままもう一度、そう思ったが駄目だ。手が痺れる。いくら軽いとは言ってもあくまで体の大きさに比べてだ。この体といえど無理をし過ぎたか。
その隙を突かれた。一瞬早く意識を取り戻した鳥助は俺の掴んでいた脚を力任せに振り回した。体の痺れのせいで掴んでいられず吹き飛ばされた。いかん、上手く体を制御できない。受け身が……
「がっ……」
……糞、痛い。辛うじて頭は守れたが、背中から地面に落ちた。動かそうとするたびに肋の辺りが燃える様な痛みを発する。折れたかもしれない。呼吸も辛い。
何とか上半身だけ起こすと、意識を完全に取り戻した鳥助はフラフラしながら俺に向かってきていた。血を吐きながら、翼もひしゃげて、明らかに俺よりも傷は深い。なのに糞、動けるのは奴の方か。
アグノーの爪を杖代わりにするも上手く立ち上がれない。足にきてる。いくら身体能力が神がかったとはいえ、頑丈さは人間並みか。
糞、死にたくない。ここで死ねば俺は何のために生きたのか。御国のためにも死ねず、子供一人故郷に送り届けることも叶わぬのなら、俺は一体……。
その時だった。俺と鳥助の間に割り込んできた人影が一つ。あの特徴的な兎耳は間違いない。
「ポノラ!何やってる!逃げろ!」
だがポノラは逃げない。糞、逃げろとは何と言うのだ。言葉が欲しい。逃げろポノラ!
しかしポノラに臆した様子などなかった。
聞き取れない何かを呟きながら、手のひらを鳥助に向ける。
「グェ……」
突然、鳥助が転んだ。何か見えないものに躓いた様な、不自然な転び方だった。
奴も負傷が大きいのか、中々立ち上がれないでいる。その隙にポノラは奴の周りを何かを置きながら走りだした。あれは滝壺で見た楔か。
粗方設置し終えた所で再び何かを呟きだした。
わからんが、俺もせめて呼吸を整えて、すぐに動ける様にしなくては。
ようやく少し動ける様になった頃、ポノラの方も何かを呟き終えていた。と同時に楔が発光した。鳥助は暴れようとしているが全く動けたいない。小刻みに震えているだけだった。
目を凝らせば楔と楔の間を糸の様な透明な揺らめきが見える。結界の魔法の様なものか?これのせいで鳥助は動かないのか。
「ノリユキ、モア-キッタイエ!ダ、ウッカ、ノン-キーパイエ!」
ポノラが鳥助の首を指して叫んだ。この隙にトドメを刺せという事か。
近づいて見ると良く分かるが鳥助の……いや、ホロウブロスの首は体に比べてかなり細い。それでも丸太の様に太いのだが、今の俺で果たして切れるのか。
「ノリユキ、モア、キッタイエ!モア!」
かなり切羽詰まったポノラの叫び。この魔法長くは続かないのか?
紋様に意識を集中させる。少し光り方が鈍い気もするが構うものか。
「さらばだ異世界の飛行馬鹿よ」
首は何の抵抗もなく落とせた。それと同時に楔の光も消える。本当に際どかったのか。
駄目だ、負傷が大きい。力も使い過ぎた。体が上手く動かないな……。
「アイイイイイイイイ!」
ポノラの叫び声。それと共に腹から何か生えてきやがった。
糞……俺は死ぬのか。糞……意識が……糞……糞……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます