第3話
「ありがとうございましたー」
十六時頃、ようやく帰りのホームルームを終える。 やっと、やっと家に帰れるんだ。
とはいえ、のんびりしている暇はない。
この学校の規則として、提出物は帰りのホームルームから一時間以内に提出することになっている。 ので。
「佐藤さん! 体力強化、頑張ってね!」
「あ、ありがとー」
うるっさいなぁあ! もう! もう‼︎
走ってやりますとも‼︎
廊下を飛び出し、階段を数段飛ばしで駆け降りる。
下駄箱で靴と上履きを交換するのもなんと手馴れたものか。
校門を飛び出し、田んぼに囲まれた道から土手に出る。
「入学してすぐの頃は、もうここらでバテてしまっていたっけ……」
体力強化、という言葉が思い出され、頭をぶんぶんと振る。 しつこいようだが、本当に体力強化なんてしているつもりは無い。
昔から忘れっぽいというか、詰めが甘いというか。 そういった性質なだけだ。
小学生の頃はランドセルを忘れて登校する、なんてこともしょっちゅうだった。
腕時計に目をやる。
「四時二十四分……」
ふっ、好タイムだぜ。
なんと約二十五分で土手にまで辿り着けた。
いや、辿り着けたといってもまだいくらか距離はあるが。
「おっ、仁美ちゃん! まーた走り込みかい?」
「ち、ちがいますって」
いつも土手でジョギングをしているおじさまと
お決まりのやりとりをしつつ、へろへろになりながらも土手を走る。
そろそろとつらくなってきた。
「最終……カーブ……‼︎」
と、後ろにはね飛ばされる。
「いったぁ……っ」
何かに、いや、誰かにぶつかってしまった?
見回してみるも、辺りに人影は無い。
と、目の前に手帳が落ちていた。
「うちの学校の……? 一年、倉岡……」
クラスと名前が書かれていない。
きちんと書きなさい、横着ものめ。
しかし、ぶつかった人がこの子なのだろうか。
なんと逃げ足の速い子だ、私以上かも。
いや、いや、今は家に戻るのが先だ。
手帳は先生にでも渡そう。
「さあ、もうひと走りだ」
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