第1話

目覚ましに起こされ、今日もまた一日が始まる。

外から差し込む日差しから、今日も良い天気のようだ。


「支度しなきゃ」


軽くシャワーを浴び、制服を手早く着たら朝食を作り始める。

最近はもっぱらスクランブルエッグとごはん、そして残り物の味噌汁。


「ああもう、ちょっと焦げちゃったよ」


そういえば油をひき忘れてたな、と続ける。

思えば出汁も入れ忘れた気がする。

今日はなんだか上手くいかない日だ。

味わうのもそこそこに完食すると、食器を水につけて出発する。


「いってきます。」


家から返事は帰ってこなかった。





私には友達がいない。

話せる人がいないわけではない。

友人と呼ぶに足りるほどに信頼しあえる間柄の者がいないということだ。


毎朝早く、人の少ない時間帯に登校するのは、そんな現状から逃避をしようとしているのかもしれない。


早朝の茜から青の混じる空は、霞みのかかる平野と重なり一枚の絵のように映る。

この時期の乾いた風も、寝起きのまだ少し火照る頬には心地よい。


未だ長草のなびく川原を土手から見下ろせば、澄んだ水の流れる川が朝日を浴びてきらきらとしている。


この川はなんとかという名前で、宝石と天女の伝承があったと思う。

内容はいまいち覚えていない。

こういった昔話はどうにも結末がうまく思い出せない。

まあおおかた、天女と幸せに暮らしました、といったところだろう。


はた、と足を止める。

足元に光る何かを認めた私は、それを拾い上げてみる。

どうやら緑がかった、いくらか光を通す石のようだ。

先ほどの昔話を思い出し、少し微笑んでみた。


「これで何か良いことでもあると良いんだけどね。 友達ができるとか、購買が並ばず買えるとかさ。」


ひとつ深呼吸をすると、私はまた学校へと歩を進めた。

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