第13話眞王様交渉する。その1
「俺か?俺は・・・魔王だっ!」
自分で言ってて物凄く恥ずかしい・・・何処かに穴があったら今すぐに入りたい気分だ。
「プッ!みゃあはははぁ~!」
ケット・シーは俺の魔王宣言に対して、でッぷりとした太鼓っ腹を抱えながら盛大に笑っている。
自分で可笑しい事を言っているのは分かっているが、ああも腹を抱えながら笑われるのは流石にちょっとムカつくな。
「ひいぃ~笑わせないでくれみゃあ。おみゃあさんが魔王様だって?嘘をつくならもうちょっと捻ったマシな嘘をつくみゃあ。」
「なっ!?」
俺はケット・シーの言葉に反論しようにもどう答えて良いのか分からなかった。確かに俺はここへと転移させられステータス画面上に魔王と記載されてはいるが、何ら証明しようとする物が俺には無いのだ。
「ここは妾に任せるのじゃ。」
言葉に詰まる俺にみかねてリリムがそっと耳元で囁いた。
「ケット・シーよっ!妾がここに居る事が何よりの証拠じゃっ!領主たる妾が単身で此処におる事自体本来なら有り得ぬ事じゃ。じゃが、妾は此処に居る。それは魔王である我が主が妾を此処に召喚したからじゃっ!違うかえ?」
「グッ・・・!確かに・・・。召喚魔法は魔王様のみが使用出来る魔法みゃあ。」
えっ!?何?召喚魔法って魔王しか使えないの?って事は前魔王も召喚魔法を使えたって事か?あぁ~やっぱり俺、魔王なのね。。。
俺が軽くショックを受けている間にも2人の話は進む。寧ろ俺の存在を置き去りにして。
「それよりもケット・シーよ。前魔王様が勇者なる者に倒されたのに随分とお主は余裕じゃのぅ?それにお主の街は魔王領の入り口の筈なのに何故お主の街は綺麗なままなのじゃ?妾は逆にその理由を知りたいのじゃが?」
リリムは眉間に深い皺を寄せてケット・シーを睨み付ける様に質問をした。
言われてみれば確かにそうだ。俺が最初に辿り着いた村は魔王領と人間領の丁度境界線上に在った為、村民は誰一人として村にはおず、村を捨て避難していた。それなのに此処はどうだ?此処は魔王領だ。しかも!リリムが言い様に魔王領の入り口にあたる。魔王軍であるケット・シーの軍勢と勇者達ご一戦を交えたならば、この街が無事である筈が無いんだ。それなのにこの街の住人は普段通りの生活を送っていた。戦争なんか何処吹く風の如く。。。後は考えられる事は1つだけ。
「なっ!?ななななっ!何の事みゃあ?ミーには何の事だかサッパリ分からないみゃあ?」
分かりやすっ!ケット・シーは明らかに動揺していた。さてはコイツ勇者と取引したな?街を無傷で通す代わりに街には一切危害を加えるなとか何とか。
リリムからの事前の話だとこの街は丁度境界線に近い事もあり人間領とも実は裏で交易をしていたんじゃないかという情報だった。何しろこの街は商業街。商いに善悪なんか無いのだから。在るのは損得勘定だけ。
ちょっと俺からも揺さぶりを掛けてやるかな。さっき俺を笑いやがった仕返しに。
「なぁ?おい!リリムの話が本当だとするとお前は全魔王軍を裏切った事になるよな?勇者達に、引いては人間族に協力した街として。勿論領主であるケット・シー本人も例外じゃないよな?」
「なっ!何が言いたいみゃあ?おみゃあさんは!」
「別に~?ただの確認だよ。幸い俺達以外この事実を知っている奴は他にはいないって事だ。所でケット・シー、さっき俺が魔王だってのは言ったよな?」
「それがどうしたみゃあ?」
「魔王が魔王たる所以は召喚魔法が使える事だ。それは分かるな?じゃあ召喚した奴を元の場所へと転移させる事が出来たらどうする?」
俺は悪い笑みをケット・シーへと向けた。
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