第12話眞王様出番無く空気でいる。

「おみゃあさん達か?ミーに会いたいって言ってるは・・・ってリリムちゅわぁーん!!リリムちゅわぁんじゃみゃあか!!ミーに態々会いに来てくれたのかみゃあ?ミーに会いに来てくれたって事はミーの花嫁になるのを承諾してくれたって思って良いのかみゃあ?リリムちゅわぁんならどんな雌よりも大切にするみゃあー。8番目の花嫁さんとして。ハッ!?こうしてはいられないみゃあ!早いとこ祝言の準備みゃあ!」


「ちょっ!ちょっとっ!」


ケット・シーは1人で舞い上がりリリムの話も聞かずに自分の世界に入り込んでいるみたいだ。

これか。リリムが渋っていた理由は。それにしても側室がリリムの他に7人もいるのかよ。正室を含めたら8人かよ。何て羨ましい・・・っていやっ!実にけしからんっ!


「これから忙しくなるみゃあ!今日は日取り的に吉日とは言えないから・・・おぉ!明日は丁度大安吉日みゃあ!」


「だからちょっと待つのじゃっ!」


俺の隣でリリムが拳を握り締めワナワナしている。あっ!そろそろ不味い気がする。俺はそっとリリムから2歩3歩と後ろへと下がった。


ケット・シーは指をパチンッ!と鳴らし側近を呼び寄せる。


「大至急リリムちゅわぁん用のウェディングドレスと白無垢の着物を用意するのみゃあ!それとリリムちゅわぁんが困らない様に何種類かドレスと着物を用意するみゃあ!分かったみゃあ?」


「ハッ!!畏まりましたっ!!直ぐにリリム様のウェディングドレスと白無垢の着物をご準備致します!」


そう言うと側近は速やかに部屋を後にした。


その瞬間。


「プチッ!」


何かの糸が切れた音がした。


「いい加減・・・人の話を・・・聞くのじゃっ!!このデブ猫がっ!!!」


あっ!リリムが切れた。


リリムは無詠唱で大きな水球を造り出しケット・シーへと照準を合わせて撃ち放した。


ドッ!パーーーンッ!!!


水球はケット・シーの顔面にめり込む様にクリーンヒットした。


「ぶにゃっ!!!」


ふてぶてしい顔が水に濡れ、更に不細工度が増したな。


「このデブ猫がっ!本当毎度毎度いい加減にするのじゃっ!何度も言うておるが、お主となんか結婚する訳がないのじゃっ!それに側室とはなんじゃっ!それによりにもよって8番目じゃと?正室ならばいざ知らずこの妾を8番目にするとは妾も嘗められたもんなのじゃ!」


えっ!?そこっ!?怒る所っ!?


「聞いておるのかぇ?」


ケット・シーは白目を向いてグッタリして気絶している。こりゃあ目を醒ますまで暫く時間が掛かりそうだな。


っておいっ!リリムは気絶しているケット・シーのデップリとした腹の上に馬乗りになり今度は何度も平手打ちをかました。


「これ!起きるのじゃ!デブ猫!」


何往復か目の平手打ちでハッ!と目を醒ましたケット・シー。


「はいっ!ご褒美ありがとうございますっ!!!」


えっ!?ケット・シーは恍惚な表情をしている。うわぁ~このデブ猫ド・Mなのか・・・正直余り関わりたくない感じだな。


目を醒ましたケット・シーを確認したリリムは馬乗り状態から降り、俺の隣へと戻って来た。


「お、おい!どういう事だよ?」


俺は隣に戻って来たリリムに小声で話し掛ける。


「うん?あぁアレか?アレは何時もの事なのじゃ。まぁ強いて言うなら発作みたいなものじゃな。困った事に会うといつもああなのじゃ。それにあやつはド・Mじゃからのぅ。妾の攻撃全てをご褒美だと勘違いして困るわ。」


「いや、それもそうだけど大丈夫なのか?あんな事して。」


「大丈夫なのじゃ。発作の様なものだと言ったであろう?」


リリムは大丈夫だと言いケット・シーの方へと指を指す。


ケット・シーは姿勢を正し椅子を座り直してオホンッ!と咳払いを1つして此方へと意識を向けた。


「さっきはちょっと取り乱して申し訳なかったみゃあ。それで?おみゃあさん達はミーに何の用があって来たのかみゃあ?」


「それは・・・」

「お主の領内を通らせて欲しい。」


俺が説明するよりも早くリリムが口火を切った。


「ほぅ?それは何故みゃあ?そもそも何でリリムちゅわぁんがこんな所にいるのかみゃあ?」


「お主も知っていると思うが妾の領地迄戻る為にお主の領内を通る方が近道だと言うこと。それと妾がここにいるのは隣にいる我が主様に召喚されたからじゃ。」


「主?召喚?」


ケット・シーは髭を摘まみながら俺の方へと視線を向けた。


「おみゃあさんは一体誰みゃあ?」


「俺か?俺は・・・・・・魔王だっ!(らしい)」


自分で言ってて顔から火が出る位、物凄く恥ずかしい・・・もうお嫁に行けない!

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