第7話 熊田
俺が次にコンタクトを取るべき相手は
何故なら、秘匿回線なんて一学生に過ぎた代物を用意している点と学園の長である星影雫がそれを認めていたからだ。
「……繋がっている」
あの一見してただのオタクな熊男だが、秘匿回線自体は星影雫が用意したものであったとしても、その存在を知らされている時点で無関係者ではないのだろう。
もっとも、俺の考えすぎで熊田がただのオタクであることも否定できないが。
『現代視聴覚研究部』
萌えキャラの描かれた看板には「おかえりなさいませ。ご主人様(はぁと)」と書かれている。
部長(熊田)の趣味だろう。
そんな初見様がドン引きするような光景で気づかなかったが、自身の頬から汗が流れ落ちている事に気づいた。
たしかに俺は汗かきではあるが、原因はそうではないらしい。
現代視聴覚研究部の部室から、禍々しいほどの熱気が放出されている。
「あのー、すいません。プログラム研究部の神代です。熊田さんはいらっしゃいますか?」
ノックをして問いかけてみるが、中からは何の反応もない。
しかし、ピーピーというビープ音のようなものが部屋中からなり響いている。
異常事態。
非日常の中で敏感になっている感覚が告げる。
──危険だ。今すぐ引き返せ。
と。
「──
“おまじない”を実行する。
「──っ……」
いつもより頭痛が酷いが成功したようだ。
止まらない動機は落ち着き、クールダウンしていく。
考えすぎであればいいが、最悪の事態に備えて壁に背中をくっつけ、勢いよく扉を開ける。
その様子は銃撃戦に挑む兵士のそれであったであろう。
「……」
幸いにして銃弾が飛んでくるような事はなかった。
いつのまにかそんなことを考えている自分がおかしくなってくる。
銃弾が飛んでくる?いつから俺はそんなハードな世界の住人になってしまったんだろうか。
そして、慎重に部室に入り、中を見渡すとパソコンというパソコンが無残な姿になってエラーを示すビープ音が鳴り響いている。
──襲撃されている。
例えば1台のパソコンが破壊された状態であればまだ日常の範囲内だろう。
しかし、目の前の光景はそんなものではなかった。
例えるなら、秘密を知ってしまった者が口封じのために処分された──そんな光景だった。
「熊田!居るか?居るなら返事をしろ!!」
熊田の身の危険を感じ、声を張って呼びかけるが人の気は一切感じない。
そして、半分画面の割れているパソコンのディスプレイを除くとメッセージが表示されていた。
──ERROR:SERORI
ドクンと、大きく心臓が鼓動する。
画面に表示されたエラーコード。
これはどこでみたものだろうか。
「……革命党」
この一連の非日常のきっかけとなった革命党の秘密ページのログインID。
SERORI。
分からない人には全く意味の分からないエラーコードだが、それを知る俺の脳は最大限の危険を感じ、今すぐ逃げろと言っている。
とにかく星影雫に連絡を取ろうとスマホを取り出すが、圏外表示となっていた。
人為的な何かを感じる。
踏み入れてはいけない領域に踏み込んだ感覚がする。
そんな研ぎ澄まされた感覚のお蔭か、背後から降り迫ってくる何かを咄嗟に横に転げて避ける事ができた。
「──チィ。外したか」
俺が先ほどまでいた場所に刀のようなものが振りかざされた。
その刀のようなものへと視線をあげていくと研ぎ澄まされた刃に苦い表情を浮かべる俺が映っている。
そして、更に視線を上げると黒縁眼鏡にショートカット(という表現が正しいか分からないが)の男が攻撃を外したというのに満足気な表情を浮かべて俺をみていた。
「どうやら、運動音痴っていうのはガセ情報だったみたいだな」
見えざる攻撃を、背後から迫る一撃を咄嗟に避けた人間が運動音痴なんて言ったところでもはや何の説得力もないだろう。
”おまじない”のお蔭で回避ができたが、通常であればあの刃の餌食になっていたところだ。
「俺の名前は
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