第4話 転機

 ブログを付け始めてから、俺は変わった。

 街行く少女を愛で、妄想し、そして自慰を繰り返した。

 愛くるしくて仕方がなかった。

 女子高生の短いスカートから覗く膝小僧、女子中学生のセーラー服姿に華奢な身体。私服姿の彼女らもいい。この時期なら、涼やかなワンピース姿もいいし、Tシャツに短パンというのも健康的で良い。

 そして、そんな可憐な少女らに欲情する中年の俺は、変態なのだろう。

 男性にも純愛はある。そうでなければ恋愛など出来ない。セックスだって、妻が居た時は、純粋に子供が欲しかった。愛の結晶が得たかった。欲望を満たすのではなく、そういう気持ちが強かった。

 だが、それも叶わなかった。

 子供がいれば、夫婦関係もまた違ったものになったのではと考える事がある。お互い父性、母性を持ち、家族の絆も深まったのではと思う。

 結局、男も女も単体では中途半端なのだろう。

 たった2ピースしかないパズルだが、それを完成させるのは難しい。俺には、難しかった。

 俺は今、再び燃え上がるような欲情を持った。

 神は何故、半端者の俺を回春させたのかは分からない。

 一つだけ言える事は、俺の性欲が少女らに向いている限り、このパズルを完成させる気は無い。

 俺は紳士だ。

 変態だが、紳士でありたい。


 俺のブログ“オナ日記”は、それほどアクセスは無い。下ネタとはいえテキストのみだからだろうか、それとも俺の文才の無さか。

 まあ、このブログは俺の心情の発露を文章化して記録するのが目的で、特段人気はなくとも気にしていないのだが。

 それでも、日々記事を書き込んでいると、少しずつアクセス数は増加し、ポツポツとコメントも入るようになった。

 意外と中傷のコメントはなかった。『分かる』、『萌えた』、『俺はこういうシチュが好きだ』というような、同好の士からのコメントが多かった。

 ただ、一人だけ不思議なコメントをする者がいた。

 ハンドルは“トモ”といった。

 トモは『オナニーは気持ちいいですか?』、『何故したいのですか?』というような、行為に対する本質的な質問をしてきた。

 そんな事を言われても、本能としか答えようがないのだが、トモはさらに、『何でしたくなるんでしょうね?』と問いかけてきた。

 そりゃあ、性欲は子孫繁栄のためだろう。だが、俺はブログで離婚して独り者だという事は公表しているし、今の俺は少女に発情している変態だ。そんな俺が、『子孫繁栄』などと口にできない。

 ロリコンやフェチという答え方もあるかもしれないが、俺はそういう型に嵌めたようなものとはまた違うと考えていた。

『人間が命を繋ぐために他の生物の命を奪い、喰らうような“業”に近いかもしれない』

 そう答えた。

 トモは、コメント欄ではなく、プロフィールに書き込んであったメールアドレスの方へ返信してきた。

『会いませんか』

 トモのメールには、たった一言そう書いてあった。


 俺は迷った。

 トモは変わった質問をしてくるが、真面目な性格だという事は伝わってくる。人間的には問題ない。

 問題は、トモは恐らく女性――それもかなり若い。

 文章で性別は大体分かる。年齢にしても、文章に天然とも取れる無邪気さがあり、下手すれば十代じゃないかと考えている。

 トモとオフ会するのはいい。

 問題は、俺だ。トモのメールを読んで、俺の中に黒い感情が沸き上がって来ている。

 ぶっちゃければ、ヤりたい。少女とセックスしたい。

 妄想で満足?

 俺は紳士?

 馬鹿な! セックス抜きで完遂する愛欲などあるものか。俺は女を知らない童貞のガキじゃないんだ。

 俺は震える指でキーボードを叩いた。

『そうですね。俺も会ってみたいです。

 いつ頃予定がよろしいですか?』

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