1-5 宝座亮平と法螺田悠介
-リョウヘイの場合-
YES/NO
「なんだ、これ?ってかここ、どこだ?」
「天界です。」
僕の疑問に横に控えた金髪ロングのスレンダーなモデルみたいな美人さんが答える。
さて、問題です。
右を見ると湖、
左を見ると純白の石材で建てられた宮殿、
後ろを見ると果てなき雲海、
前方を見ると翼の生えたエンジェル、
一体どーこだ?
「天界ですよ!」
さっきと逆側にいる黒髪ロングの少し背の低いアイドルみたいな子が答える。
空を見上げると太陽と水星と金星と火星と木星と土星と天王星と海王星と冥王星と月が見える(でも僕は星に詳しくないから本当にあれがそうなのかは分からない。)ここはどーこだ?
「天界でございます。」
金星ロングさんの隣にいる赤髪を肩で揃え褐色肌のグラマーな美人さんが答える。
さっきからすれ違う人みんなの・・・背中に、純白の、羽が、生えている、この魔境は、どーこだ?
「天界だってば!」
黒髪ロングの子の隣の青髪ショートの陸上部のアイドルみたいな活発そうな子が答える。
「・・・今僕の目の前に続々と翼の生えた人?が集まってきて跪いているのは・・・なーんでだ?」
「「「「それはジーブリール様の予言で、あなた様が数千年にも及ぶ天界内の内乱に終止符を打つと、そう出たからでございます
(わ。)(だよ。)」」」」
僕の言葉に四人の美女、美少女が答える。
YES/NO
さっきから訳がわからん。NOだ!
もし、叶うのならばこの時NOを選んだ過去の僕を思い切り殴り飛ばしたい・・
-ユウスケの場合-
>>>衝撃で気絶中<<<
-リョウヘイの場合-
さて、僕に今まさに降りかかろうとしている物事にそろそろ目を向けようか。
まず僕の左右にはさっきまで答えてくれていた四人の美女、美少女が控えている。
四人はニコニコと僕の次の言葉を待っているようだ。
そして目の前には僕がここに来てから、(まだ五分くらい)続々と宮殿から人?が出てきては、規則正しく整列し平伏している。
人?と言ったのもここに集まっている全ての人の背中に一対の純白の羽が存在しているからだ。
僕には無いのかって?
あるよ。
それも他の人たちとは違い三対の翼がね。
さて、そろそろいいかな?
「なんじゃこりゃぁぁあああ!!!」
-ユウスケの場合-
何も見えない。
動けない。
処理落ち?
通信障害?
バグ?
それとも、事故?
そういえば接続の最後にピチュンって変な音が鳴ってなかったっけ?
僕の背中をチリチリと何か冷たいものが駆け回る。
それから10分
体を動かそうとしたり声を出そうとしたり耳を済ませてみたりと思い付く限り今とれる行動をとってみた。
結果的にいうとこの状況では聴覚以外は使用出来ないようだ。
そしてもう一つわかったことがある。
やっぱりここはT.M.Vの中だということ。
理由はメニューが開けるからだ。
メインメニュー
・ステータス
・装備
・スキル
・フレンド
・クラン
・オプション
メニューの中身はこんな感じだ。
僕はしめたとばかりにオプションからログアウト使用とするが何とオプションボタンはグレーアウトしており、まず押せなかった。
ならばとフレンド欄からタクヤにメッセージを送っても返事は来ない。
念のために他の三人にも送ってみたが結果は同じ。
ならどうするか。
普通の人なら焦るだろう。
だが僕は何だかんだでゲームが好きだ。
なのでこれはロード時間なのだろうと考えスキル、装備、ステータスと順番に見ていくことにした。
装備
なし
ステータス
ユウスケ
法螺貝Lv.1
HP15/15 MP15/15 ST11/11
腕力1
体力1
知力1
魔力1
器力1
速力1
スキル
殻にこもる
「そうか。僕はゲームの中でも自分の殻に籠ることしか出来ないのか。取り合えず使ってみよ。殻にこもる。」
スキルを使用すると徐々に視界が開けてくる。
どうやら今まではずっと殻の中に籠りっぱなしだった為に何も見えなかったし動くことができなかったようだ。
「おぉ、何だ。動けるし見えるじゃんか。んー、取り合えず今僕は貝になってるらしいし水場に向かわないとダメなのかな?」
そう思い首を伸ばして辺りを見回す。
すると後方の少し離れた場所に小さな池を発見する。
「よし、どのみち何も指示がないし移動しよっと。チュートリアルがないって不便だな。」
愚痴を漏らしつつユウスケはゆっくりゆっくりと池に向かって這っていく。
「いやいや、予想してたけど僕の移動速度遅すぎるでしょ!!」
貝特有の移動の遅さに嫌気が差しながらもユウスケは進む。
次の瞬間ユウスケの向かっている池に天から無数の光が降り注いでくることを知らずに・・・
-リョウヘイの場合-
僕の絶叫が収まり、ある程度落ち着いた頃合いを見計らい金髪ロングの美人天使が今の天界の状況を教えてくれた。
どうやら天界では創世記から絶えず上級天使たちが下級天使を率いて次期天王(天界の一番偉い人)の座を奪い合っているらしい。
だがこれはただ単に他の候補者たちを皆殺しにすれば良いわけではなく、他の指揮官クラスの天使から力、いわゆるスキルを奪わなければいけないそうだ。
スキルは熾天使、智天使、座天使、主天使、力天使、能天使、権天使、大天使、天使の9つあり、熾天使、智天使、座天使は翼が6枚以上ある天使がどれかをランダムで持ち、主天使、力天使、能天使は翼が4枚以上ある天使がどれかをランダムで持ち、権天使以下は誰でも持っている可能性があるらしい。
ちなみに僕のスキルはこれだ。
熾天使(条件制限)Lv.1
座天使Lv.1
力天使Lv.1
能天使Lv.1
天使Lv.1
なかなか揃っているんではないだろうか。
9つの内、上位2つ、中位2つ、下位1つの合計5つ。
このそれぞれがどんな効果を持っているのかは分からないがすでに半分を越えている。
ジーブリール様って言うのが誰か分からないがこれだけ揃っているなら確かに僕が天界の争いを納めると予言されたことも納得だ。
「・・・あぁ、そういえばTMVの中だったんだ。それなら主人公が強大な力を秘めていると言っても納得か。」
「はい?何かおっしゃいました?」
僕の小さな呟きが僅かに聞こえたのであろう。
金髪ロングさんが聞き返す。
「いや、ジーブリール様って誰なんだろうな?って。」
「ジーブリール様は先代の天王様で、星読みを得意とした素晴らしいお方でしたわ。」
赤髪ショートの褐色お姉さんが答える。
「でした。ってことは亡くなったのか?」
「殺されたんだよ。」
青髪少女の言葉からは強い負の感情が読み取れた。
他の3人も同じように少し悲しそうな顔をしていた。
「誰に?天王っていうのはすべての力を持っているんだろ?」
「それは、」
金髪ロングさんが俯き気味に言葉を紡ぐ。
ヒュオッ、ザシュッ
「ぐあっ!何をする!」
金髪ロングさんに意識を向けた瞬間に
「それは、私たちによ。おバカさん。」
僕が背中の痛みに膝を着くと先程までの雰囲気とは変わり、どこか醜悪な雰囲気が
「つっ、どういうことだ!」
「まつたく、ジーブリールといい貴方といい
金髪ロングの言葉に僕はこの世界に来てすぐにNoを選択したことを後悔する。
だが反省は後回しにして、まずはここから逃げなければならない。
これはゲームだと思っていたが背中の痛みがこれは現実だと切に告げてくる。
「さて、お人好しの貴方にせめてもの情けだよ。貴方に貰った
青髪少女はそういうと魔力?を集める。
「あら、残念ね。上位の力は今回はソロネの物になったのね。まぁパワーファイターだし、当然かしら?私は能天使を貰えたしこれであと3つね。ヴァーチュスはどう?」
「私もちゃっかり力天使を貰いましたわ。キュリオテテスは如何かしら?」
「むぅ、また私だけ下位の天使なのね。今回のこれは力を
その様子に疑問を覚えた僕は3人に目を向け、自分のスキルを確認する。
熾天使(条件制限)Lv.1
「あら?どうしたのかしら。もしかしてまだ現実を受け入れられないのかしら?ふふふっ。」
金髪ロングは僕の表情を4人が熾天使のスキルに気づかない事に対するものでなく、豹変した4人に対するものだと勘違いしていた。
だが僕の耳にその言葉は届かなかった。
くそっ、熾天使スキルってどうやって使うんだ?
発動!出ろ!消し飛ばせっ!
僕はどうにか熾天使のスキルを逃走の突破口にできないかと心の中で(条件制限)と格闘を始める。
「よぉっし!準備おっけー!じゃあバイバイ。誕生数時間で裏切られた愚かな上級天使さん。"
言葉と共にソロネの背後に巨大な光の輪が現れ、光の輪から無数の光の玉が出てくる。
「ほっろぼせぇー!!」
ノリノリなソロネの言葉で光の玉は槍のようになり高速で撃ち出される。
「くっ!」
僕は避けようがない光の雨を睨み付けながらも諦めずスキルに意識する。
ピコンッ
熾天使(条件制限)Lv.1が熾堕天使Lv.1になりました。
称号、諦めない者を手に入れました。
「うぉぉぉ!」
ガガガガガカッ
スキルが変化するのと光が僕に殺到するのはほぼ同時であり、僕は光の奔流に巻き込まれ地上では無慈悲な光の雨が広範囲に渡って降り注ぎ神の翻意としてその中心に現れた黒い繭と共に後世に語り継がれた。
チローン
薄れゆく意識の中で僕の頭のなかに声と音が鳴り響いた。
-ユウスケの場合-
「はぁ、はぁ、貝ってこんなに頑張ってたのか。子供の頃見付け次第踏み潰しててごめんよ。タニシ。」
僕は移動開始から10分、距離にして1m程で貝の厳しさを思い知る。
水場を目指しての移動は遅々として進まず僕の気力、体力ともにゴリゴリと削る。
「くっ、こんなことなら日陰から出るんじゃなかった。乾く。くっ、撤退だ。」
燦々と輝く太陽に容赦なく体の水分を奪われ僕は元いた石の陰への撤退を決意する。
チカッ
「ん?今空が光った?」
一瞬だったが空から太陽以外の光を感じ見上げる。
そこには一点の雲もない満点青空。
だが遥か彼方に一つだけ巨大な雲が見える。
そう、それはまるで
「ら、
彼方からスタジオジブリな雲が近づいてくることに気がついた僕は体が乾くのも忘れて目を奪われる。
チカッ
すると雲はもう一度光を放つ。
「やっぱり!さっきの光はあれの仕業か。でも何のために?」
僕は雲が何かとモールス信号的なやり取りをしているのかと後ろを探すが空にはあの雲以外に何も無い。
「反射?雲の上に金属でも乗ってるのか?じゃあほんとに天空の城?」
と、僕がもう一度雲を振り返るとそこには視界を埋め尽くすほどの光。
「えっ!?」
ドガガガガッ
「なんじゃそりゃーー!!」
地上一杯にランダムで降り注ぐ光の雨の着弾と同時に産み出される衝撃に僕は吹き飛ばされ、貝であるにも関わらず飛行体験をする。
「おいおいおいおい、これ、着地と同時にグチャっといかないよね?そんな終わり嫌なんだけどっ!TMVユーザー減るぞ?こんな何もできないイベントなんか作ったら苦情殺到するぞ?だから助けてー!!!」
僕の嘆きも届かず遥か上空に持ち上げられた体は徐々に速度を失い世界共通の力に捕らわれる。
それ、すなわち、重力に。
「あぁぁぁぁぁぁー!殻にこもる、殻にこもる、殻にこもるぅぅぅー!」
ぐんぐん近づく地面に意味がないと知りながらも殻にこもり衝撃に備える。
パクっ
すると突然体を捕らえて離さなかった重力による自由落下から解放される。
「・・・あれ?何も見えない?」
体を覆っていた浮遊感から突然解放され辺りを見回す。
そこでようやく自分が殻にこもっていたことを思いだす。
「殻にこもる。って殻から出るときも殻にこもるってどうなんだ、ろ・・・」
殻から頭を出した僕の目の前にあったのは上下から生える三角錐の鋭い檻。
その檻を辿ると半円形になっており後ろは奥に繋がる通路。
記憶を辿ってみてもこのような光景は見たことがない。
僕は始めは岩場的なところにいたし、そのあと空を飛んで、落下したときに丁度ここに収まった?
そう思い上を見ると天井はいくつもの筋が入っているが穴が開いているようなところはない。
「えっ、どこ?何が起きたの?」
グョエェェェェ
「ふぉっ!」
悩んでいると洞窟の奥からこの世のものとは思えない何かの鳴き声が。
そんな声を聞いた僕の取ることが出来る行動は一つ。
「よしっ、ここで檻が開かないか調べようか。足場は湿ってるしね。こ、怖い訳じゃないんだからね!」
グョエェェェェ
「と、取り合えず探索は明日にして今日はあの隙間で寝ようかな。」
そういって僕は上下の檻の隙間にある穴に入り息を潜めた。
チローン
リョウヘイ
堕天使Lv.1
HP170/170MP435/435ST62/62
腕力28
体力30
知力64
魔力83
速力57
器力27
熾堕天使Lv.1
裏切られた者
諦めない者
ユウスケ
法螺貝Lv.1
HP15/15 MP15/15 ST11/11
腕力1
体力1
知力1
魔力1
速力1
器力1
殻にこもる
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