チビデブブスなニート民ワイが異世界に逝ったらイケメンな上流階級民になってたンゴwww

@theAugustSound

第1話ワイ将自殺を決意

「これを読んだ人はついに頭がいかれたのかと思うけどこれから言うことは本当の話なんだ。」ここまで書き込んで俺はパソコンを打つのをやめた。書き込んでいるのはインターネット掲示板サイトだ。やっぱりやめようかと一瞬思ったが、ちょっとしたネタなつもりで書き込んでいく。

 「俺はこの前、、、」

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 今俺は自分の住んでいる安いマンションの屋上にいる。足元にはポテチとPC。画面上は次々と自動で下に動いていく。そうスレッドを開いているのだ。俺はつい5分前、【実ッ況】ワイ将自殺を決意 なんていうスレッドをたてた。レスには「まーたキッズが湧いたのか」とか「はよやれ無能」とか「ニュース期待しとるで」などなどかなり荒れている。俺はポテチを食いながら「ワイ将、最後の晩餐にポテチを食べるファインプレー。なお夜ではないので晩餐にならず無事死亡」などと書き込む。それに対して「草」だの「くっさ」だの「画像ハラデイ」など返ってくる。こいつらはみんなどうせ死なないからそうやってレスをつける。だが―誠に残念ながら―俺は本気だ。今飛び降りて(実際これからやるのだが)俺が書き込みをできなくなっても「イッチ涙目敗走」だの「おーいイッチ生きとるか?www」とかやるのだろう。所詮そんな奴らだ。

 パソコンを閉じ、屋上の端に向かう。思えば退屈な人生だった。親は平凡。金持ちでもなきゃ貧乏でもない幼少期を過ごした。俺は昔から人見知りでドンくさくて運動神経なくて勉強も出来なくて、おまけに勉強の偏差値だけでなく、顔面偏差値まで最低レベル。3流大学の底辺学部を留年して卒業し、入社試験もことごとく失敗。しょうがないから付近のバイトを転々とし、気づけば家に閉じこもっていた。ずっと家にいてポテチを食らい、運動をしなかったら太っていった。そんな身体で外には出たくないから、さらにひきこもるようになった。でもそんな人生も今日で解放される。

 ついに柵の前まで来た。遺書はパソコンに残している。最後に見る景色。それは、付近の道路が大渋滞。人がいっぱい歩いている。

 「俺一人がいなくても誰も気にしないよな」ヘヘッと笑ってから柵を乗り越える。そして後は手を離すだけ。これで楽になれる。


さあ手を離せ


早くしろ


なにしてるんだ俺、早く手を放すんだ


できない。ここに来てまだ生に固執している。やれやれ、死ぬのは当分先になりそうだなと自分の意気地なさに苦笑しながら、屋上に戻ろうとした刹那


ツルッ


―足がすべった!急速に重心が後ろに向かう。両手が離れる。マンションから自分の身体が離れる。俺はじたばたと手足を動かすがもう無駄だ。

 「ドジ踏んで死ぬなんて俺らしいじゃないか」俺は両目を閉じて死を受け入れた。


 意識が途切れる。なにも感じない。もう死んだのだろうか。俺は考える力が急速に失われていくのを最後に感じた。









 トントン、「起きてください、フェルナンド様。こんなところでお眠りになっていらっしゃっては困ります。」遠くから声が聞こえる。肩も叩かれている。誰だフェルナンドって?そしてまた、今度は大きな声で

「起きてください、フェルナンド様!」

「んー。もうなんだよ!」俺は目を開ける。ん?目を開ける?俺は死んだはずだ。てことはここが死後の世界か。雲ひとつない青空。どこまでも続いてそうなほど澄んでいる。

「ようやく起きられた。もうフェルナンド様、こんなところで熟睡されては困ります。」と隣から声が聞こえる。どうやらフェルナンドとは俺のことらしい。なんでこんな外人っぽい名前を。そうか俺のかーちゃん、キリシタンだったな。てことはさっきから起こしてきてたのは天使か。

「ごめんごめん。それで君の名前、、、」俺は話しかけながら声の方向を向いて絶句した。

 なんだこのめちゃくちゃかわいい女の子は。短めの茶髪に大きな青い目。

「どうされましたか、フェルナンド様?」その子は聞いてくる。

「す、すいません。あなたのお名前は?」俺は恐る恐る小さな声で彼女に聞いてみる。ここにPCがあったら、【朗報】ワイ将、絶世の美少女に話しかける なんてスレをたててるところだ。

「えー!フェルナンド様、メイドの私の名前を忘れるなんてなにがあったんですか?」彼女はかなり驚き、あせっているようだ。

「いやちょっと、屋上から落ちて、、、」

「フェルナンド様が屋上から落ちた?!それでここまで這ってきたということですか?なるほど、だからなかなか起きなかったのか。」彼女の中で俺についてのストーリーが勝手に作られていく。実際迷惑なんだが、ものを考える彼女の横顔がかわいすぎて文句を挟めなかった。

「わかりました。少々お待ちを。」彼女はそう言うと

「親衛隊、ただちに馬車を用意なさい。すぐにお家で診察を行わないと。」と指示を飛ばした。すぐに馬が駆けていく音がした。俺は身体を起こそうとする。すると彼女が

「ダメです、フェルナンド様。動いてはお身体に障ります。」と言う。

「いや、ほんとだいじょぶですから。」

「それなら、こうやって私に寄りかかってください。」そう言って彼女は自分の膝に俺の背中を乗せ、俺の頭を彼女の上半身に預けさせた。彼女の胸と胸の間に俺の頭が入っている。かなり気持ちいい。そうじゃなかった。俺は周りの様子がよく見える。どうやら俺は木の下にいたらしい。足元からかなり遠くまで続いていく草原。瑞々しく若い芝生の香りがする。こんな匂いを嗅いだのは何年振りだろうか。ところどころ生えている木、緑青茶のコントラストが美しい。全身を藍色の西洋式の鎧に身を固め、腰に直剣をつるした男が立っている。これが俺の親衛隊の一人らしい。俺の身体を見ていくと、


あれ?


腹がない。驚いてもう一度見る。


やっぱりない。


痩せた?


俺は腹をさすったり、つまんだりして見る。つまめるほどの肉がない。

着ている服を見てみる。まるでコスプレイヤーであるかのような服を着ている。白いズボンに青いスーツ、腰にサーベルをつけている。


 ガラガラガラガラと馬車が近づいてきている音がする。彼女が

「馬車が来ました。お立ちになれますか?」と聞いてくる。

「さっきから立とうとしてたんだよ。」と俺は言いすくっと立ち上がる。心なしか視点が高くなった気がする。

「失礼いたしました。」彼女はそう言うと馬車のドアを開けてくれた。

が、俺は一瞬ドアの窓に映った自分の顔に違和感を覚えた。

「ねえ、君、鏡持ってたりしない?」俺は彼女に尋ねる。

「はい、持っております。」

「ちょい貸して。」

彼女から鏡を借りて自分の顔を見る。


「ちょーイケメンになってるー!」

俺は大声をあげた。チビデブブスな俺が高身長のほっそりイケメンになったのだ!


 俺が馬車に乗ると彼女はドアを閉め、御者台に乗り込んだ。親衛隊は2人で馬に乗って俺の馬車を挟み込む形で左右にいる。俺は一人になったところで考えを巡らせる。まずここがどこなのかだ。死んだなら死後の世界とか言うのにいるはずだ。だが、ここは美しい場所ではあるが、神々しい神の世界のようには感じられない。じゃあ実は夢を見ている?だけど夢のなかで飛び降り自殺をして、しかも夢の中で目を覚ますようなことは流石にないだろう。自殺にミスった昏睡状態で見てる夢?それならありえるかもしれない。でも昏睡状態でこんなに考えが働くものなのか?あとあり得るのは、、、

―異世界に転移した?-

いやまさかそれはないだろう。でもこれだと説明がつく。全く別人に生まれ変わっていても問題はないはづだ。

 そんなことを考えていると馬車は門をくぐり市街地に入ってきた。レンガや木できた家々、石畳の道路。

露天商が出ておいしそうな果物を売っている。老若男女を問わずたくさんの人が道に出ている。かなり活気のある街だ。そして馬車は堀を渡り城門をくぐった。少し坂道になっている。山の上に城があるようだ。ラッパの音が聞こえる。弓をもった兵士が城壁にいる。5分ほど馬車に揺られていると左にまがった。どうやら家に着いたようだ。彼女がドアを開ける。俺は馬車から下りると目に入ってきた家の大きさに驚いた。「これって全部俺の家?」俺は彼女に聞く。

「なにをおっしゃっているのですか?」彼女はきょとんとしている。

彼女が家のドアを開け、俺を中に入れる。と、

「おかえりなさいませ。フェルナンド様」の大合唱。

「うわっ、びっくりした。」俺は突然の大声に驚いた。メイドにボーイ、藍色の鎧を着た親衛隊、そしてきっちりした服装の老人の男(恐らくじいやとかいうのだろう)が4人。みんなが俺を見ている。

「た、ただいま。」俺は控えめな声で奥に進んでいく。後ろから彼女が追いつき僕を先導する。俺が奥に進んでいくと一番奥にいたじいやが俺の上着を脱がせつつ、

「全く、帽子屋の屋上から落ちるなんてなにをしていらっしゃるのですか。」と言ってきた。俺は

「ごめんごめん。」と適当に返事をしておく。

「医者がもう来ています。寝室で横になっていてください。」彼はそう言うと上着を持って俺のもとを離れていった。彼女について2階に上がり、一番奥までいくと俺の寝室があった。俺がベッドの前でボケッと立っていると彼女が

「失礼いたします。」と言って俺の服を脱がせ始めた。

「ちょ、ちょっとまって!」俺は慌ててやめさせる。

「どうかなされましたか?」

「いっつもこうしてるの?」

「はい。」彼女はきょとんとしてしまっている。が、すぐに

「あ、そうでしたね。記憶があいまいになっていらっしゃるんでしたよね。」と言った。

「そうだよ。何もかもわからない。」俺は答える。半分ウソだが半分は本当だ。

「とにかく、お医者様が来ているので早く着替えましょう。」そう言うと彼女は俺のシャツのボタンを全て外し、脱がせ、バスローブのようなものを着せた。そしてズボンも脱がせ、俺をベッドに寝かせた。

「それではお医者様をお呼びいたしますので少々お待ち下さいませ。」そういうと彼女は部屋から出ていった。やはり状況が理解できない。ただ一つ言えるのは、これで死後の世界という可能性が排除されたことだ。死んだ世界で医者は必要ないはずだ。

 医者の診察というのは案外すぐに終わった。脈を診て、全身の外傷を調べて、何個か質問。もちろん質問は全部わからなかった。

「今はショック状態で全てのことがぐちゃぐちゃになっているのだと思います。数日すれば元通りになるかと。」医者はそう言って帰った。同時に彼女が入ってきて

「何か思い出されましたか?」と聞いてくる。

「いやなにも。」

「ならば私がお教えしないといけませんね。まず、私の名前はミーナ・カッジョ・エルズベランです。そしてあなたはミファエル・ハルト・フェルナンド様です。アスクリタン王国の第3位皇族家フェルナンド家の家長にして公爵、藍色騎士団の騎士団長、カスぺーニャ地方総督でいらっしゃる我らが主人です。運動神経抜群で今まで騎士の訓練戦闘で一度も負けたことがなく、国中にその人ありと言われるほどの容姿、わずか17歳で王国の歴史についての書類を作り上げるなどの頭脳で国王アスクリタン87世からの信任も厚くいらっしゃいます。」

「この国について教えてくれるかな?」俺は尋ねる。

「このアスクリタン王国は今年で1158年目を迎える大国です。北と西に海があり、南は友好国であるユタリスク帝国、東に山脈を挟んで忌まわしき国アルバトロンがあります。軍は精強、交易盛んで富もありこの世界有数の大国です。」

今の答えではっきりした。ここは異世界だ。俺が自殺を図った世界にはアスクリタンとかアルバトロンなんていう国はない。


俺は自殺をしたつもりが、異世界にさまよいこんでしまったのだ。


だが、


俺には強みがある。顔、運動神経、地位、学力がこの世界の俺にはある。そして俺も元いた世界でただ時間を無駄にしてきたわけではない。そう、異世界転生もののラノベやアニメならたくさん見てきた。つまり攻略法はわかっている。これは神が与えてくれたチャンスだ。元の世界でずいぶん苦しんできた分の補てんだろう。ここでこのチート状態を用いて過ごす。これが俺の異世界ライフだ。


「サンキュー、カッミ。ワイはこの世界で無敵のチートゲームをやるンゴ。」俺は笑いながらつぶやいた。



                         続く


 




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