第76話 わたのはら こきいててみれは

わたの原 漕ぎ出でてみれば 久方の

雲居にまがふ 沖つ白波


わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの

くもいにまがふ おきつしらなみ


法性寺入道前関白太政大臣


訳)

大海原に漕ぎ出してみれば、水平線には雲と見紛う程の白波がたっている。


超訳)

青い空!白い雲!海!!

沖に漕ぎ出してみれば、見えるのは青空も真っ青な海と白波だけ!

・・・海賊王に俺はなる!

(そんな事は言ってない).


ちょっと一言)

法性寺入道とは一つ前の歌で紹介した上司の藤原忠通の事。

忠通は出家する前は何度も摂政関白を務めている。

ただ、忠通が摂関政治を行っていたのは平安時代の末期、宮廷内はドロドロのグチャグチャだったのだ。

この歌は若き日の忠通が崇徳院の前で詠んだ歌。

崇徳院から「海上遠望」というお題を貰い詠んだ歌なのだ。

広々とした大海原に漕ぎ出して一人大海を眺める歌、雄大で男らしいじゃないですか。

その数年後、保元の乱で忠通と崇徳院は敵同士となる。


壮大な海を相手に一人立ち向かう忠通。

雄大な歌に一抹の孤独を感じるのは深読みし過ぎでしょうか。

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