第2話
(サシェってなんだ?)
矢太郎は後悔した。
モテない高校生活を卒業としようと必死の思いで作った可愛い彼女。
見た目も性格も地味な矢太郎は、唯一の売りで有る成績トップクラスであることを利用して彼女を口説き落としたのだ。
そうして、やっと漕ぎ着けた初デート。
今日は人生最良の日になる予定だったのに。
どうして自らの手で不幸を呼び込んでしまったのか。
歩いていたらチラシを差し出されたから受け取った。
女性向けのチラシだったので隣を歩いていた彼女に手渡した。
たった、それだけのことなのに。
「オープン記念にサシェ無料プレゼントだって!」
チラシを手にした彼女はハイテンションに喜んでいる。
今はデートの最中だ。
当然、矢太郎は愛想良く話を合わせねばならない。
「そうなんだ、良い情報を手に入れたね」
「オープンは今度の日曜日だって、朝から並ばなきゃ!!」
矢太郎は彼女の発言に驚いた。
サシェとは、日曜日を棒に振ってまで欲しがるものなのか!
だが驚いたことを感づかれてはならない。
「う、うん。せっかくだし貰いたいよね」
「矢太郎君も一緒に並んでくれる?」
可愛らしい彼女に御願をされて断れるわけもなく。
「いいよ。一緒に行こうね」
(サシェってなんだ?)
女性向けのチラシであれば矢太郎が知らなくても不自然なことではない。
何気ない調子で彼女に問えばいいのだ。
だが、矢太郎には聞くことが出来ない。
賢い事が唯一の取り柄である矢太郎に知らないことがあるなんて悟られてはいけないのだ。
彼女から見た矢太郎は全知全能の神の如く賢くなければならない。
(サシェってなんだ?)
矢太郎は曖昧に話を合わせながら思う。
日曜日に同行すればサシェとやらが何モンだか判明するだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます